マルニ、フランチェスコ・リッソとモトーラ世理奈が初対面!

Fashion 2020.12.19

マルニの2021年春夏コレクションvol.2に参加したモデルたちは、全部で48名。ニューヨーク、上海、ダカール、東京などを舞台に、マルニの最新作に身を包んだ多彩な人々が映像に華を添えた。そして、そのムービーに東京から登場したのがモデルのモトーラ世理奈だ。マルニのクリエイティブ・ディレクターであるフランチェスコ・リッソの大のお気に入りである彼女と、ミラノでロックダウン中のフランチェスコの、画面越しに実現したスモールトークをご紹介!

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モトーラ世理奈:ミラノはいま、どのような感じですか?

フランチェスコ:またロックダウンになってしまって、街はグレーって感じ。でも仕事やオフィスに出かけることはできるから、何事もプラスに考えているよ。僕の場合、犬を飼っているので、犬を連れての散歩はOKなんだ。家にこもっている友達たちに、我が家の犬を飼い出したらいいんじゃないかと思うよ(笑)。そう言えば何日か前、「この時期は東京を訪れていることが多かったよね」とうちのスタッフと話していたんだ。僕は、春と秋は仕事で東京に行くことが多かったからね。正直、続くコロナ禍で旅にも行けないわけだけど、旅に行きたいというより、東京に行きたい。本当に東京が恋しいよ。東京はいま、どんな感じですか? 

モトーラ世理奈:東京はどこでもみんな、マスクをしていますよ。

フランチェスコ:それはいいことだ。素晴らしいと思う。

モトーラ世理奈:ウイルス対策にはいいけど、ファッション的にはどうでしょうか(笑)

フランチェスコ:そうだね。ただ、いまはマスクが必需品だね。

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モトーラ世理奈:旅のお話が出ましたが、いままで行った中で、フランチェスコさんがいちばん好きだった場所はどこですか?

フランチェスコ:東京かな。メキシコも大好きで、よく旅行しているけど。メキシコは、行く場所によって風景が全然違って、どこも美しい。そして人も素晴らしいし、街の色合いも素敵。でもやっぱり東京だね。東京は人も物も多くて、さまざまなものがレイヤードされているとても緊張感のある場所なのに、静けさがあるんだ。東京と同じような大都市のニューヨークなどとは、聞こえてくる音がまったく違う。すべてが溶け合った中心にいるのに、心地いい静寂を感じる。その感覚に僕はとても刺激を受けるんだ。世理奈は行きたいところはありますか?

モトーラ世理奈:私は祖父の出身地であるイタリアのシチリア島に行ってみたいんです。フランチェスコさんは、サルディーニャ島の近くがご出身だそうですね。

フランチェスコ:お祖父様はシチリア島の出身だなんて、とても興味深いね。シチリア島は、世界で最も素晴らしい場所のひとつだよ。美しい海や島、火山があって、何と言っても食べ物がおいしい。コロナ禍が収束したら、すぐにでも行ってほしい場所。僕が案内するよ。

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フランチェスコ・リッソが語る、クリエイティブの変革。

marni-00-201219.jpgフランチェスコ・リッソ
Francesco Risso

1982年、イタリア生まれ。フィレンツェ、ニューヨーク、そしてロンドンの大学でファッションを学ぶ。アンナ・モリナーリやアレッサンドロ・デラクアでキャリアを積み、2008年からプラダのウィメンズデザイン及びスペシャルプロジェクトの担当に。16年にマルニのクリエイティブ・ディレクターに就任。

ロックダウン継続中のミラノで、もの作りの新しい可能性を模索する日々。困難な状況にこそ学びがあると力強く語ってくれたフランチェスコ・リッソが見据える、マルニのこれから。

2021年から春夏のコレクションをvol.1とvol.2のふたつに分けて発表することに決めたマルニ。その製作過程で、ミラノを襲った新型コロナウイルスの猛威によるロックダウンを経験したクリエイティブ・ディレクターのフランチェスコ・リッソが、まったく予測のできない未体験の日々を経て辿り着いたいまの想い、そして、もの作りについて語ってくれた。

「現在、ミラノは2回目のロックダウン中でステイホームの日々が続いているよ。街は沈んでいるけれど、僕は大丈夫。マインドをポジティブに切り替えて、立ち止まって時間がある時だからこそできることに取り組めばいい」

そんな前向きなフランチェスコは、今春夏の新作を以前のランウェイ形式とは違った見せ方で世界に発信した。

「ルックの撮影を依頼したフォトグラファーのジャック・デイヴィットソンとのやり取りのなかで、このアイデアが閃いたんだ。僕はミラノ、ジャックはロンドンにいて、ともに新型コロナウイルスのおかげで、身動きが取れない状態だった。ジャックとiPhoneのフェイスタイムを通して会話している時に、この方法で撮影したら、おもしろいんじゃない?って話になってね。それで、協力してくれる人を探し、自宅にマルニの新作を送って撮影をすることにしたんだ」

ビデオ電話を通して行ったフィッティング、そしてモデルたちとのやり取りは、いいエネルギーに満ちあふれていたと、フランチェスコは振り返る。

「各自が好きにマルニの服を取り入れたスタイルを提案してくれたんだ。それは、本当に刺激的だった。この体験は僕の着想源になって、後に続く、21年春夏vol.2 のコレクションへのアイデアへと繋がった」

vol.2では、ニューヨーク、上海、東京などを舞台に48人が登場するムービーを製作し、デジタル方式で発表。“マルニフェスト”と銘打ったvol.2のコレクションでは、大胆にあしらった言葉が服たちにさらなる力を与えた。

「短時間で終わるランウェイショーはもう僕の琴線には触れない。舞台になった街や時間の流れ、そしてマルニの服を着ている人々のムードのすべてが違っていて、そこには即興的な何かが、さらには人と人との繋がりが生まれる。それがいまのリアリティだと思うんだ。映像のライブ配信がスタートした時、誰もアクセスしてくれなかったら……とすごく不安だったけど、多くの人に観てもらえて、素晴らしい結果に。本当にうれしくて、涙が出てしまったよ」

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過酷な状況も言い訳にしない。

vol.1では、マルニのDNAを追求。アーカイブを振り返り、メゾンが誇るカラーやシェイプなど、美しいエッセンスにフォーカスした。

「過去を一掃し、新しいものを作ることもできる。でも僕は、マルニが元来持つ強みを生かしたかったんだ。難しい局面でこそ、メゾンの強みを積極的に表現することが大切だと考えた。vol.2では、それを発展させ、メゾンのエッセンスを違った視点で捉えてみようと思った。このコレクションは自己表現そのもの。先が見えない日々のなかで、大切なものを見失った服作りはしたくなかったんだ。過酷な状況を言い訳に、そこそこの服を作るなんて、僕には到底できない」

とはいえ、チームとも離れ、顔が見えないなかでのコレクション作りは、いつもと勝手が違い、試行錯誤が続いた。

「素材に触れ、会話を交わしながら、もの作りを進めていく僕たちにとってはとても難しい状況が続いていたよ。とにかく、チームの誰一人として、寂しさや孤独に陥らないように細心の注意を払った。いまでは、パソコン画面にみんなの顔が映った状態で一緒に仕事を進めることにすっかり慣れたね。一緒の空間にいなくても、楽しくチームワークが発揮できるようになったよ」

誤解を恐れずに言うと、いま世界を襲っている新型コロナウイルスによる、劇的な変化を体験できたことは多くの学びに繋がり、悪いことばかりではないと思っている、とフランチェスコ。

「祖父や祖母の時代には戦争を体験している。それと同じとは言わないが、似たような難局にいまの僕たちは面していると思う。特にファッション業界は、かつてのままでビジネスを続けていくことは困難だろう。そんな時だからこそ、見えてくるものもあるはず」

過去の伝統を学びながら未来へと進化する。
学びこそ、僕のもの作りに欠かせないプロセス


2021 SPRING & SUMMER vol.1

フェイスタイムを通じて撮影されたルックのスタイリングはすべてモデルたち自身が担当。ポジティブなムードあふれる仕上がりになった。

過去の伝統を超えて進む。

メゾンの宝物を継承しつつ、新しい物語を紡いでいこうと決めた彼が大切にしているのが“レトロボリューション”というコンセプト。過去の伝統を学び、それを取り入れながら未来へと進化していこうとする姿勢のことだ。

「歴史を知ることで、視野が広がる。想像のなかで、僕は過去と未来を行き来することができるんだ。人間が持っているこの能力にとても感謝しているよ。進化したテクノロジーだけが常に未来を示唆する訳ではない。過去にだって、大きな発見があることも。学ぶことは、デザイナーとして服を作るうえで最も重要なことだと思う。コレクションのヒントは、人物だったり、歴史上の出来事だったり、昨日なにげなく交わした会話だったりと多岐にわたる。でも、それはきっかけにすぎないんだ。そこから掘り下げ、新しいことを学んでいく。日々学習することで理解が深まり、アイデアが生まれ、それが服のデザインに繋がっているんだ」

学んで、理解し、アイデアを膨らませる。そして自分の愛するものたちや美しい記憶、そこにマルニらしさといった多彩な要素をミックスし、コレクションを作り上げていくのだ。

「マルニのクリエイティブ・ディレクターに就任した時から、素晴らしいアトリエやクラフトマンシップなどを守っていくという使命を感じていた。いま、世界的にファッション業界の先行きが厳しくなっているからこそ、その役割への責任がより重くなっている」

厳しい時だからこそ、夢があって、リアリティがある、そして地に足の着いたもの作りに取り組みたいとも。

「ロックダウンのおかげで、チームの結束はより強固になったし、うちの愛犬は僕と一緒に過ごせるから満足そう。最近はチェロも習い始めたよ。まだ全然うまく弾けないけど、チェロの練習はデザイナーの仕事とまったく違うから、気分転換になるんだ。音楽家の友達から、どうしてチェロなんて難しい楽器を選んだんだって言われたよ。まあ、80歳になる頃には、一曲くらいはみなさんに披露できるくらいちゃんと弾けるようになってたらいいよね(笑)」

2021 SPRING & SUMMER vol.2

ミュージシャンやラッパーなど、多才な人材が登場する映像を製作。東京からはフランチェスコお気に入りのモトーラ世理奈が参加。

●問い合わせ先:
マルニ表参道
tel:03-3403-8660

マルニ公式サイト

 

texte:TOMOKO KAWAKAMI

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