Kawakyun 篠原ともえが、技を受け継ぐ革職人に出会う。

Fashion 2021.02.25

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革という素材が生まれる場を訪れた篠原ともえさんは、自身も革を使ったものづくりに取り組むことに。今回は、革を加工する職人技に触れます。

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先日、栃木レザーを訪れて、職人たちのプロフェッショナルな仕事、革に丁寧に向き合う姿勢にインスパイアされた篠原ともえさんは、自分でも革を使ってものづくりをしたい、という思いを抱いた。
「たくさんの人が関わり、いろんな工程を経て、革という美しい素材を仕上げていることを知って、革に深い物語を感じたんです」

その革の物語の続きを紡ぐのは、革という素材を使ってプロダクトを生み出す加工技術を担う人々だ。篠原さんはものづくりの街である東京・本所吾妻橋を訪れた。

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スカイツリーを近くに望む、隅田公園近くの言問橋にて。

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革という素材の多彩な可能性に触れて。

入り口を入ると、色とりどりの革が所狭しと棚に収められた光景に目を奪われる。ここは、大阪を拠点に革の製造販売を行うハシモト産業の東京営業所。生地街を巡るのが好きだという篠原さんは、さっそく魅了された様子だ。

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ハシモト産業はビビッドな色から繊細なニュアンスカラーまで、豊富な革のラインナップを誇る。

「きれい! こんなに明るい色の革もあるんですね」
「これは姫路のタンナーの革です。一般的にクロム鞣しといわれる製造方法で、表面は塗料で仕上げるのでいろんな色が出せるんです」

こう説明してくれたのはハシモト産業の松本正記部長。栃木レザーの植物タンニン鞣しの革から、姫路のタンナーのクロム鞣しの革まで、それぞれの特性や魅力を熟知している。篠原さんは多彩な色と風合いの革にクリエイターとして大いに刺激を受けたようで、松本さんにさまざまな質問を投げかけていた。

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「革は、季節ごとの水の温度や湿度などによって、同じ色でも仕上がりが変わってくるんです。そこが非常におもしろいですね」と松本さん(右)。篠原さんは革に触れ、その風合いや感触を丁寧に確かめる。「裏側もすごく気持ちがいいですね。毛の流れに沿って撫でると安心する感じがします」

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「桜色! 私、淡い色に惹かれるみたいです。春に気持ちが向いているのかもしれない」。“ナンバーワン”と名付けられたこの革には、70種類ものカラーバリエーションがあるのだとか。

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篠原さんには、これから自身が手がける革のアイテムについて、栃木レザーを訪れた時からあるアイデアが浮かんでいた。それは“肌に優しい革のアクセサリー”。篠原さんからアイデアを聞き、松本さんがその素材として提案してくれたのは、栃木レザーの「エコソフト」だった。「革の原皮は北米産が多いですが、『エコソフト』は国産の原皮を使っているんです」と松本さん。国産の原皮は北米産に比べてサイズは小さいけれど、その品質の高さに定評があるという。

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柔らかく発色が鮮やかなクロム鞣しの革(左)に比べて、栃木レザーの植物タンニン鞣しの革は硬く張りがあることが特徴だが、「エコソフト」はドラムと呼ばれる機械に入れて空打ちし、柔らかくしているそう。

ハシモト産業の2階にはショールームが設けられ、色鮮やかな革紐が壁一面に並んでいた。なかには1ミリほどの細いものもあり、何と芯を革で包んで作られているのだとか。

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「手が込んでいるのが一瞬で見てわかりますよ」。革という素材が持つ可能性にインスパイアされた様子の篠原さん。

繊細な革紐に見入る篠原さんを、ぜひある場所に案内したいと松本さんが提案した。それは日本でただひとり、祖父から技術を受け継いでいまも昔ながらの方法でヌメ革の革紐を作る、職人の仕事場だった。

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祖父から技術を受け継ぐ、革紐職人との対話。

ハシモト産業から車で約20分。「矢嶋ベルト製作所」の看板が掲げられた仕事場に着くと、若き20代の職人、青田京介さんが出迎えてくれた。

松本さんによれば、かつては青田さんの祖父である矢嶋正男さんのつくる革紐をハシモト産業で扱っていた。矢嶋さんが引退する時、その技術を受け継ぐ人がいなかったため、大切な職人技が失われてしまうことを危惧した松本さんたちが、社員に技を伝授してほしいと頼み込んだ。そんな時、その大役を自ら買って出たのが、当時まだ学生で矢嶋さんの実の孫である青田さんだった。

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歴史が刻まれていることを物語る、祖父から受け継いだ道具を使って革紐を切り出す青田さん。

「この道具は昔、祖父がリンゴの木箱から自分で作ったものです。職人は道具から自分でアイデアを出して作る、それがいちばん大事だと祖父から教わりました」

それ自体がまるで美しいオブジェのような道具を前に、青田さんがそう教えてくれた。「ものづくりの原点ですよね」と、篠原さんが感動した様子で伝える。

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幅を均一に保ったまま、1枚の革から1本の革紐が出来上がる。「この作業がいちばんやりがいがありますね」と青田さん。

「1枚の革から、まず使える部分と使えない部分を見極めるんです。紐が弱くならないように、使える部分だけにして、あとはリンゴの皮むきのようにずっと裁断していきます。だから、1本がずっと繋がっている状態です」

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大きな革を頭から被るようにして、包丁の角度を固定した道具を使い、青田さんがみるみるうちに革紐を切り出していく。「身体全体でカットしていくんですね」と、篠原さんはその様子を熱心に見守る。革の厚みが均一でない箇所があると手を止め、革切り包丁でその部分を削って同じ幅に整える。「彫刻のよう!」と篠原さん。

「この仕事を始めた当初は、包丁を使うのが怖かったです。途中で切れたり薄くなってしまったりして、祖父にすごく怒られました。大学を卒業して7年目ですが、ひとりでできるようになるまでには10年かかると言われていました。でも祖父が亡くなってしまって。教えてほしかったことがいまでもたくさんあります」

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これは革紐の面を取るための道具。板や革、革切り包丁を使って手作りされている。

大きな革がリンゴの芯ほどのサイズになるまで革紐を切り出した後は、また別の手作りの道具を使って面を取っていく。一面ずつ丁寧に、すべて手作業で行っていることに篠原さんは感銘を受けたようだ。

「私も革紐を素材として手にしたことがありましたが、ひとつひとつに時間と労力、そして受け継いだ技術が詰まっていることに、あらためて気付かされました。ものづくりに向き合う力のようなものを職人さんからいただきました」

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左側が裁断したばかりの革紐で、右側が一面だけ面取りしたところ。かなりのスピードでこの正確な作業が行われることに篠原さんも感激。

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青田さんがこの仕事を始めて最初に祖父から贈られたのが革切り包丁だったそう。この道具自体が、いまではなかなか手に入らないという。

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ずっと愛せる、育てていける、革のアクセサリー。

アトリエに戻った篠原さんは、学生時代から愛用しているというペンに画用紙、そして革の素材を使い、自身の中にあったイメージを描きはじめた。

「革と肌の色は相性がいいと感じました。革を腕に巻くと、一体化するようで綺麗ですよね。だから革を肌に合わせた時に、心地いい感触のアクセサリーにしたいと思いました。金属アレルギーの人も安心して身に着けられる、たくさんの人に愛してもらえる革の作品を作りたいな、って」

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10代の頃からずっと絵を描き続けてきたという篠原さん。「いま、自分がデザインしたものが形になるということが、うれしくて仕方がない。だから、いいものを作りたいなと思います」

篠原さんが思い描いていた革のアクセサリーは、さまざまな革素材に触れた体験や職人さんとの対話によって、さらにインスパイアされた。“安心”“温もり”は、篠原さんのクリエイションに通底するテーマなのかもしれない。革はそのテーマを表現するのに最適な素材のひとつといえそうだ。

「栃木レザーを訪れた時、“革を育てている”という印象がありました。命のかけらから生まれた革がみんなに届くように、プロセスを踏んで育んでいる感じがとても美しい。この行程を無駄にしたくない、生かしてあげたい、という気持ちが湧き上がりました。

子どもの頃、母がベッドカバーや寝間着を作ってくれました。自分にとって、それがあれば安心して眠れる、お守り代わりになっていったんです。革は、使っていくうちに温もりが出る、温度感が伝わる素材だと感じたので、革を使ってずっと愛せる、育めるようなアクセサリーを作りたい」

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革のアクセサリーのイメージをアウトプットしていく篠原さん。

篠原さんには、すでにその革のアクセサリーが完成した美しいイメージが見えているようだ。果たしてどんな作品が生まれるのか? また本コンテンツの集大成として、完成したアクセサリーの撮影ディレクションも篠原さんが手がける。次回最終章ではその様子をお届けしたい。

篠原ともえ Tomoe Shinohara
1995年歌手デビュー。文化女子大学(現・文化学園)短期大学部服装学科デザイン専攻卒。歌手・ナレーター・女優活動を通じ、映画やドラマ、舞台、CMなどさまざまな分野で活躍。現在はイラストレーター、テキスタイルデザイナーなどさまざまな企業ブランドとコラボレーションするほか、衣装デザイナーとしても松任谷由実コンサートツアー、嵐ドームコンサートやアーティストのステージ・ジャケット衣装を多数手がける。2020年、アートディレクター・池澤樹と共にクリエイティブスタジオ「STUDEO」を設立。
www.tomoeshinohara.net
Instagram : @tomoe_shinohara

* 日本タンナーズ協会公式ウェブサイト「革きゅん」より転載

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篠原ともえが訪ねた、 革の生まれる場所。
篠原ともえさん連載「TOMOE SHINOHARA MAKING」

video : MITSUO ABE, photos : SAYUKI INOUE, coiffure et maqullage : YOKO YOSHIKAWA, collaboration : HASHIMOTO INDUSTRY, YAJIMA BELT MANUFACTORY

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