追悼:アルベール・エルバス 女性を美しくするすべを知る、唯一無二のデザイナー。

Fashion 2021.04.28

パリ・シックを象徴するデザイナー、アルベール・エルバスが、4月24日に亡くなった。59歳だった。ファッション界が別れを惜しむ。

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2008年、パリ・ファッションウィークで、ランバンのランウェイを歩くアルベール・エルバス。 photo : Getty Images

1961年6月12日にカサブランカの太陽の下で生まれた彼が、4月24日、パリで亡くなった。その温かさ、その陽気な人柄、そしてその才能で私たちを魅了した彼が、私たちをおいて唐突に旅立ってしまった。

2015年にランバンを退いたアルベール・エルバスは、今年1月のオートクチュール週間で、リシュモン・グループのバックアップを得て立ち上げたAZ Factoryを発表。ファッションの表舞台に復活を遂げたばかりだった。

蝶ネクタイがシンボルの伝説的デザイナー、エルバスが、5年間の不在の後で発表したのは、最先端技術とクチュールのボリューム感が融合した、時代に完璧にマッチしたグラムールで革新的なコレクション。再び私たちに夢を与えるべくカムバックした、喜ばしいニュースだった。

ファッション界の魔術師、アルベール・エルバス。ランバン時代にその仕事に魅せられた女性たちは、彼の退任を心から惜しんでいた。その彼が陽気な笑顔と繊細さとポエジーとともに戻ってきてくれたのだ。彼の訃報はその復帰を寿いだすべての人たち(その数は多い)の心に、再び大きな喪失感を残すことになった。

【写真】アルベール・エルバスが、ランバンで最後に発表したコレクション。

“ブランドが蘇った”

最初に彼の計り知れない才能を見出したのは、現在フランス・オートクチュール、およびファッション連盟会長を務めるラルフ・トレダノだった。アルベールは母親の励ましを受けて思春期の頃にはもうドレスをデザインしていた。2014年のマダム・フィガロのインタビューでトレダノはこう語っていた。

「自分のキャリアの中で最も誇りに思っていることは、1996年にアルベール・エルバスをギ・ラロッシュのアーティスティック・ディレクターに抜てきしたことです。まさに一目惚れでした。彼の履歴書を受け取ったとき、レターヘッドがぱっと目を引いた。アルベールのつづりの最後の“t”が欠けていたのです。名前と名字のそれぞれ5文字が上下2行に分けて配置された、見事なグラフィックデザイン。この人は独創的であることの重要性を知っているだけでなく、何もかも考え抜いていると思いました。

赤いジャケットと素足に赤い靴という装いで入ってきた彼を見て、この人だと確信しました。そのしばらく後に、彼はブランドのデザイナーとして最初のコレクションを発表しました。その衝撃のあまりの大きさに、スタッフは泣き出したほどです。ブランドが蘇りました」

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アルベールとランバン

アルベール・エルバスが復活させたのはそれだけではない。ギ・ラロッシュの後、イヴ・サンローラン(サンローラン・リヴゴーシュのアーティスティックディレクターを務めた)を経て、彼は2001年10月にランバンのオーナーとなった台湾の女性実業家シャオラン・ワンに起用された。

適度なリュクス感とフランス風のセンスに、アメリカ流のカジュアルシック(テルアビブにあるシェンカー大学ファッション学科を卒業した後、ニューヨークのデザイナー、ジェフリー・ビーンの下でアシスタントとして働いた年月の賜物だ)が加わったスタイルは、マスコミや世界中の女性たちからたちまち喝采を浴びた。

彼の指揮の下でランバンは文字どおり復活を果たした。高度なカッティング技術、微妙なニュアンスにまでこだわった生地や色彩選び、シックで現代的なデザインのカクテルドレスは、デザイナー仲間からも高い評価を得た。才気に溢れ、創意に富み、服を完璧なスタイルに仕上げるすべを知っていた。

2015年10月、彼は、経営側との意見の相違からランバンを離れることに。衝撃的なニュースにファッション界からは嘆きの声が上がった。

そして再び夢を見はじめた

ランバンを離れた後、アルベールは多くのコラボレーションプロジェクトを手がけた。特に、2019年にはイタリアのブランド、トッズとのコラボレーションを発表している。

新ブランドのAZ Factory立ち上げの時に「フィガロ」紙に語ったインタビューでは、退任後の5年間には抑うつや空虚、倦怠といった感情に襲われたこともあると語っていた。そして、ある日再び夢を見はじめた、と。私たちも、一緒に夢を見はじめたところだった。

シックな佇まいの魔術師、エルバスは、またも私たちを残して突然去ってしまった。クリエーターであり、女性たちの友人であった彼の死を、世界中が悼んでいる。アルベール・エルバスは、誰よりも、女性を美しくするすべを知っていた、唯一無二の存在だった。

texte : Marion Dupuis (madame.lefigaro.fr)

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