ブシュロンの新作ハイジュエリー、現代に蘇るアールデコ。
Jewelry 2021.02.16
1月のオートクチュール週間に発表されたブシュロンの新しいハイジュエリーコレクションは「ヒストリー オブ スタイル、アールデコ」。これはメゾンの豊かなアーカイブからクリエイションディレクターのクレール・ショワンヌがインスピレーションを得た20点で構成されたコレクションだ。
Galerie Marcilhacのアート作品とともに撮影された、ハイジュエリーコレクション「ヒストリー オブ スタイル、アールデコ」。
1920〜30年代、ブシュロンはアールデコ・スタイルの秀逸なジュエリーを豊富にクリエイトしていた。1925年にパリで開催されたアールデコ展では232点のジュエリーを展示し、ルイ・ブシュロンとアトリエの職人たちはグランプリを含む、いくつもの賞を受賞している。植物をメインに自然をテーマにした宝飾品で有名なブシュロンはアールヌーヴォーのイメージが強いせいか、この事実は少し脇に追いやられてしまっていた。
クリエイションディレクターのクレール・ショワンヌ(左)とCEO のエレーヌ・プリ=デュケンヌ。ブシュロンは女性による女性のためのジュエラーだ。
今回、メゾンのアーカイブに輝くアールデコ・ジュエリーの中からCEOのエレーヌ・プリ=デュケンヌとともにインスピレーション源として数点を選び出したクレール・ショワンヌはこう語る。
「それらは当時にしては過激と思えるピュアなラインのジュエリーです。これらから、このコレクションを発展させてゆきました」
フェミニンとマスキュリン、ピュアなラインと贅沢なデザイン、ブラック&ホワイトとエメラルドの色遊び。この3つのコントラストに彼女はフォーカスして、現代人が身につけるジュエリーとしてユニセックスな「ヒストリー オブ スタイル、アールデコ」のコレクションをクリエイトした。 ジュエリーにはそれぞれオートクチュールに関連した名前が付けられている。
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驚きのマルチウェア・ジュエリー。
パーツが分かれて複数の着け方で楽しめるジュエリーは、メゾンの長い歴史の中で早い時期から登場している伝統的なアイテム。この新しいハイジュエリー・コレクションでは半数以上がマルチウェアのジュエリーであるだけでなく、クレールのクリエイティビティとアトリエのサヴォワールフェールが見事に融合、それらジュエリーの美しい変身は驚きに満ちている。マルチウェアのジュエリーは、どの使い方をしてもジュエリーとして独立した格と強さを放つ素晴らしさだ。
Cravate Émeraude (クラバット エメロード)
1920年代、自由を求める女性たちの装いは軽くなり、ときにはメンズのワードローブにインスパイアされた装いをして外出をした。そんな時代の柔らかなシルクのネクタイを思わせるのが、ネックレスのクラバット エメロードだ。これは中央のエメラルド、オニキス、ブラックラッカー、ダイヤモンドによる縦長のモチーフが取り外せる。それによって、男女で楽しめる5通りのジュエリーとなるのだ。3つのコントラストが見事に反映された逸品である。
クラバット エメロード。8.02カラットのエメラルドを中心に据えたアールデコ・モチーフのロングネックレス。
新コレクションのお披露目にて。アールデコ・モチーフは簡単にネックレスから取り外すことができ、ブローチとなる(左)。ブローチを外したブラック&ホワイトのロングネックスも美しい。photo:Mariko Omura
左:下部のタッセルを外してショートペンダントとして。 右:下部のタッセル、ブローチを外してショートネックレスとして。
Lavallière Diamants(ラヴァリエール ディアマン)
ダイヤモンドのスカーフタイのような華やぎのあるピュアなネックレス。センターピースはクレールがアーカイブのブローチにインスパイアされたモチーフである。オニキスとダイヤモンドを組み合わせたブラック&ホワイトは、アールデコスタイルを代表するスタイルだ。揃いのリング、イヤリングもある。センターピースが外れるネックレスは3通りに使え、男性も女性も楽しめるデザイン。
ネックレス。巧みな技術で首にしなやかに沿う。ダイヤモンド、オニキス、ブラックラッカー、ホワイトゴールド。photo:Mariko Omura
左:センターピースを外したネックレス。 右:センターピースをブローチとして。このネックレスもまた、2つに分けてもジュエリーとしての魅力は半減せず、それぞれ魅力100%のパーフェクトなマルチウェアである。
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スタイリッシュでピュアなモノクローム。
Noeud Diamants (ヌー ディアマン)
ブラックラッカーとダイヤモンドのシンプルな組み合わせがモダンで端正なボウタイはバレッタとして、ブローチとして。甘さがないボウタイのブローチはメンズスーツにもよく似合う。アーカイブの1928年のブローチにインスパイアされたもので、クレールはその美しさはそのままマルチウエアなジュエリーをクリエイトした。ブラックラッカーが縁取るエメラルドカットのダイヤモンドのソリテールリングはそのままで、あるいはボウタイリングにも姿を変える。
ダイヤモンド、ホワイトゴールド、ブラックラッカー。リングのダイヤモンドは、1.50カラット。着け方の遊びがあるヌー ディアマンは婚約指輪として、最高では!?
Ruban Diamants(リュバン ディアマン)
アールデコを象徴するシェヴロン(ヘリンボーン)。パーフェクトな美に手を加えるのは不必要と、クレールは1928年のブレスレットのパターンをそのままこのリボンジュエリーに活用した。グラフィックな黒いラインは、これはブラックラッカーによるものではなく、ダイヤモンドのエレメントのそれぞれの間の空間が作り出す一種の目の錯覚。長いリボン状のジュエリーは4つの着け方ができる。ヘッドバンド、チョーカー、あるいは2本のブレスレットとして。さらに男性がタキシードのベルトとしての着用も。
左:革のベルトをセットして、ヘリンボーンのタキシードベルトに。 右:クレール自らモデルとなってヘアバンドとしての使い方を説明。photos:Mariko Omura
Liseré Diamants(リズレ ディアマン)
細長くカットされたダイヤモンドに囲まれたペアシェイプのダイヤモンド。イヤリングもリングも黒いエッジが力強さを際立たせる。黒いラインはラッカーによるものだ。硬いオニキスは細いカットに不向きなので、この新作コレクションではオニキスが使えないデザインでは黒いラッカーを使用。オニキスでもラッカーでも、美しさに遜色はない。
左:イヤリング。ペアシェイプカットのダイヤモンドはそれぞれ3カラット強。 右:リング。こちらのダイヤモンドは5.27カラット。
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アールデコスタイルの鍵、エメラルド。
Plastron Émeraudes(プラストロン エメロード)
パティアラのマハラジャのために1928年にブシュロンが制作したジュエリーの中には、エメラルドのビーズを用いたジュエリーが少なくなかった。クレールはそれに着想を得て、このプラストロンを女性のためにクリエイト。ふんだんに用いられているエメラルドはザンビア産。透明ながら深い緑色が素晴らしく、クオリティも高い。マルチウェアなネックレスで、パーツを外してチョーカー、ブレスレットとしても着用できる。
エメラルドビーズの合計は約1.072カラット。クレールがデザインしたアールデコ・スタイルのクラスプを外すと、ショートネックレスとしても着けられる。ザンビア産エメラルド、ダイヤモンド、オニキス、ブラックラッカー、ホワイトゴールド、プラチナ。
Chevron Émeraudes(シェヴロン エメロード)
先に紹介したリュバン ディアマンと同じく、このネックレスのモチーフもシェヴロン(ヘリンボーン)にインスパイアされている。パヴェダイヤモンドをセットしたホワイトゴールドのチェーンは、装飾的なクラスプを移動することで長さが調節できる優れたデザインだ。61.35カラットのエメラルドドロップはザンビア産。
しなやかに女性の身体に沿うネックレス。ドロップシェイプエメラルド、ダイヤモンド、ホワイトゴールド。
Chevalière Emeraudes(シュヴァリエール エメロード)
Col Emeraudees(コル エメロード)
ロッククリスタルとダイヤモンドをひとつのジュエリーの中で一緒に用いるという大胆な組み合わせは、ブシュロンが始めたことだ。このアイデアに魅了されているクレール。ロッククリスタルはハードでもろい石なので作業が簡単ではないが、毎年、クレールは新しいテクニックを探求し、アトリエの技術を豊かにしているそうだ。ロッククリスタルを用いることでボリュームに軽やかさが得られ、これ見よがしではないジュエリーを創ることができる。
左:ユニセックスリングのシュヴァリエール エメロード。4.3カラットの八角形のエメラルドはヴァンドーム広場を象徴し、ロッククリスタルが石畳を表現。ロッククリスタルの下には、パヴェダイヤモンドがセットされている。コロンビア産エメラルド、ダイヤモンド、オニキス、ブラックラッカー、ホワイトゴールド、プラチナ。 右:ネックレスのコル エメロード。Vネックに沿うように、28個のエメラルドを大胆にも水平に配置したコンテンポラリーなデザインだ。グリーン、白、黒の色合わせにエレガンスが漂う。コロンビア産エメラルド28石 計24.59カラット、ダイヤモンド、オニキス、ロッククリスタル、ホワイトゴールド、プラチナ。
réalisation : MARIKO OMURA