ショーメのジョゼフィーヌとナポレオン展。非凡で普遍的な物語を。

Jewelry 2021.06.22

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展覧会のポスター。

今年はナポレオンの没後200周年。フランス中で、ナポレオンにまつわるさまざまな展覧会やイベントが、ルーヴル美術館をはじめ複数の公的機関で開催されている。その中でユニークなのは、この記念イベントへの参加を許された唯一の企業であるハイジュエラーのショーメによる『ジョゼフィーヌとナポレオン展 – 非凡で普遍的な物語』だろう。ジュエリー、絵画、オブジェ、手紙など非公開の品も含め約150点を展示している。パリのヴァンドーム本店内、1年前にリニューアルされたアーカイブルームの美しいル・グラン・サロンにて7月18日まで開催中だ。この展覧会はナポレオン、そして彼と愛で結ばれたジョゼフィーヌのふたりの物語を振り返るというもの。その証人的役割を果たしたのが、皇室御用達ジュエラーで、マリ=エティエンヌ・ニトが創業したショーメである。これはショーメしか実現できない展覧会といっていいだろう。

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左:ティアラと戴冠式の盛装を纏ったジョゼフィーヌの肖像画。フランソワ・ジェラール男爵作。フォンテーヌブロー宮殿の所蔵で、この展覧会終了後、ショーメの支援によって修復が予定されている。 右: メゾン創始者の息子フランソワ=ルニョー・ニトの肖像(個人蔵)。ナポレオンが教皇に贈るティアラを届けるためにイタリアに出向いた彼が、そこで滞在中だったナポレオンとジョゼフィーヌにジュエリーを披露。ジョゼフィーヌはすっかり心を奪われ、ナポレオンも賞賛を惜しまず。かくして皇后御用ジュエラーとなった、というエピソードが残されている。

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ジャック=ルイ・ダヴィッド作『ナポレオンの戴冠式のための下絵』(ナポレオン財団所蔵)

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エントランスではナポレオンの王座、その左右に1804年の戴冠式の装いをしたふたりのそれぞれの肖像画が飾られて来場者を迎える。その導入部からヴァンドーム広場に面した有名なサロン・ショパンへ。ここから、比類なき女性、運命、帝国、ジョゼフィーヌ、家系、エタニティへとテーマ別に展示が続いてゆく。その流れの中で、ニトがジョゼフィーヌのために制作したジュエリーの数々が紹介される。ジョゼフィーヌの私生活にまつわる品々の展示も興味深い。皇妃としての華やぎのある世界の後、世継ぎを必要とするナポレオンは子どもができないジョゼフィーヌと愛しながらも別れざるをえず、というふたりの離婚。彼女から彼へ宛てた結婚解消を承諾する手紙(1809年)や離婚のセレモニーで彼女が手にしていた扇なども展示している。また、離婚後暮らしたパリ郊外のマルメゾンで植物に傾けた尽きぬ愛情に触れる展示も。

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左:19世紀初頭のニト作とされるジョゼフィーヌのイヤリングはルーヴル美術館が所蔵。彼女は天然パールとペアシェイプを好み、これを着けた彼女の肖像画が複数存在する。 右:19世紀初頭のニト作とされる「ロイヒテンベルク ネックレス」の呼び名で知られるジョゼフィーヌの二連ネックレス(個人蔵)。photos:Chaumet

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左:ジョゼフィーヌの身の回りの品の展示も。 右:離婚式の扇。 photos:Mariko Omura

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フランソワ=ルニョー・ニト作の麦の穂のディアデムパリ、ショーメコレクション)。1811年頃。ショーメではこのディアデムにインスピレーションを得て、麦の穂のモチーフのジュエリーをいまも制作し続けているphoto:Chaumet

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左:フランソワ=ルニョー・ニトがジョゼフィーヌに制作したメノウのアンタイユのパリュール。1809年頃。 右:1810年頃のニト作といわれるジョゼフィーヌの日常のためのカメオのパリュール(ナポレオン財団所蔵)。彼女はマラカイトの深い色合いを好み、日中用のジュエリーにこの石がよく使われることに。photo:(左)Mariko Omura、(右)Chaumet

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ジュエリーの中でも注目を集めているのは、最後の部屋に展示されているニトによる皇后ジョゼフィーヌのアクロスティック ブレスレット。並ぶ石の名の頭文字を繋げると彼女の子どもの名前をなすというショーメにおけるセンチメンタルジュエリーの代表的存在のひとつだ。この展覧会を記念して、パリ本店だけの限定販売で「リアン」コレクション ジュ ドゥ リアン アクロスティック ブレスレットを販売中だ。これはアクアマリン(A)、モルガナイト(M)、オパール(O)、ウヴァイト(U)、ルビー(R)の5つの石が“AMOUR”と紡ぎ、ショーメの象徴的なクロスのモチーフが連なっている。メゾンの新しいクリエイションに新鮮な息吹を与え続けているジョゼフィーヌのジュエリー。このブレスレットもその美しい例のひとつである。

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左:最後の部屋の展示より。ナポレオンの妹が兄の再婚相手である皇后マリー・ルイーズに贈ったニト父子によるゴシックベルト。 右:ジョゼフィーヌと最初の結婚相手との間に生まれた娘は、紫陽花を意味するオルタンスと名付けられた。このブローチは1807年にニト父子によって制作された。現在スイスのアインジーデルン修道院がこのブローチを所蔵しているのは、オルタンスが恋愛の痛手を癒やしてくれたベネディクト修道会に感謝して寄贈したからだ。

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左:上の2本が、ジョゼフィーヌのふたりの子どもHortenseとEugèneの名前となるアクロスティックブレスレット。 右:2021年、AMOURのアクロスティックブレスレット。

“ジョゼフィーヌとナポレオン展” -非凡で普遍的な物語-
開催中〜7月18日
ショーメ パリ・ヴァンドーム本店
12, place Vendôme 75001 Paris
入場無料、要予約
www.chaumet.com/fr/exposition-josephine-napoleon

coordination : MARIKO OMURA

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