“黒の女王”ルイーズ・ネヴェルソンのスピリットが宿るジュエリー。 セリーヌのアーティストジュエリープログラムに注目。
Jewelry 2021.12.07
エディ・スリマンが現代彫刻のパイオニア、ルイーズ・ネヴェルソンのジュエリーを再解釈。
コンテンポラリーアートに造詣が深いエディ・スリマン。2020年に発表された現代美術家、セザール・バルダッチーニとのアーティストジュエリープログラムは、そんなエディ・スリマンならではの試みだ。
今回発表になったのは、このアーティストジュエリープログラムの第2弾。現代彫刻の創始者のひとりといわれ、20世紀アメリカを代表する美術家のひとりとして知られるルイーズ・ネヴェルソンの作品を再解釈したジュエリーが誕生した。
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ルイーズ・ネヴェルソンは、木や金属、プラスティックなど廃物を漆黒に塗り上げた作品で知られている。彼女を一躍有名にしたのは、複数の箱を積み上げて暗い部屋の中に観客を取り囲むようにして設置した1958年の展覧会『Moon Garden + One』。以降、20年以上に渡り、一貫して黒い箱と黒い廃物の世界を制作してきた。
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現在アートの仕事に携わるルイーズの孫娘、マリア・ネヴェルソンはこう語る。
「祖母は彫刻をすべて黒く塗ることに夢中になっていました。一方、ほかの芸術家の作品にはたくさんの色が使われています。子どもの頃は、なぜ彼女は黒にこだわるのか疑問でした。でも、最終的には彼女の『黒にはすべての色が含まれていて、神秘的で、貴族的で、組み立てられた作品の光と影を際立たせる』という言葉を理解することができました。以来、彼女が創り出すベルベットのように贅沢な黒を見ているだけで、とても豊かな気分になります」
ルイーズは自らジュエリーを作って身に着けていたことで知られる。彼女の魅力的な性格、自由な発想とスタイルは、多くの人に高く評価されていたのだ。彼女は自分の作品についてこう語っている。「私の作品は繊細です。頑丈に見えますが、繊細なのです。真の強さとは繊細なものです」
今回のアーティストジュエリープログラムにあたって、セリーヌはルイーズのユニークな作品のひとつを復活させたペンダントを制作。ゴールドとシルバーの2色で、各色50個。それぞれにはシリアルナンバーが入り、黒い木製の特製ボックスが付属する。
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エディ・スリマンが選んだ作品には、シュルレアリスムに見られる慣習の拒否、キュビズムの研究、プリミティブアートの自由な表現など、ルイーズが影響を受けたさまざまな芸術的要素な要素が融合している。
ルイーズの孫娘、マリアはこの作品と今回のプロジェクトについてこう語る。
「エディ・スリマンは本当にたくさんのなかから今回の作品を選びました。彼が選んだ作品と、それが彼のウエアのコレクションにどのようにフィットするかを見る経緯はとてもエキサイティングでした。彼が選んだ作品は抽象的な表現なので、その日の気分で見え方が変わります。ある時は美しい羽を広げて飛ぶ蝶々だったり、ある時は、華やかで有機的な模様を持つ着物や天使の羽だったり。このプロジェクトには1年かかりましたが、誰もが決断に時間をかけることなく、とても早いペースで進んでいきました。メンバー全員が誠意と敬意をもって真摯にプロジェクトを進めてくれました。このような最高のクリエイションの場に身を置くことができ、チームの一員になれたことをとても幸運に思います。このコラボレーションは素晴らしい経験でした」
こうして結実したプロジェクトの産物は、ジュエリーであると同時にアートでもある。身に着けることはもちろん、眺めるだけでもその意義が感じられる貴重なプロジェクトといえるだろう。
photography: © Courtesy of Celine, text: Naoko Monzen