5つのテーマで"物語"に迫る、指輪の展覧会が開催。

Jewelry 2022.01.18

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From Pen Online

写真/ベンジャミン・チェリー  文/杉本勝彦

イヴ・ガストゥの希少なコレクションがまもなく日本に到着する。東京で開催される展覧会から、5つのテーマに沿って展示される指輪にまつわる文化的な背景や物語を、いち早く紹介しよう。

THEME Ⅰ
History 歴史

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男性の指輪の歴史は古代から続く。メソポタミアやエジプト、そしてギリシャやローマの古代世界の装飾は、18世紀の人々を魅了し、新古典主義やロマン主義という芸術運動の礎となった。この様式美は20世紀まで発展するが、本展のコレクションの主、イヴ・ガストゥが特に関心を寄せたのは、18世紀のフランス国王、ルイ14世からルイ16世の時代の様式を再解釈し、昇華させた1930年代~50年代の装飾家や建築家の作品。「これが私の初恋」というイヴの、最初のコレクションだった。四つ葉をかたどったラピスラズリとアームに施されたふたりの天使が印象的な、この金の印章リングは19世紀の作品だが、中世への志向が顕著だ。歴史への憧憬が、時代を超えて美しい造形を生み出している。

THEME Ⅱ
Gothic ゴシック

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19世紀にヨーロッパで流行したネオゴシック様式。騎士道やゴシック建築といった中世の精神を再発見する潮流で、かつて戦場に掲げられ、鎧兜を彩った紋章を彫り込んだシグネットリングも数多くリバイバルされた。中世では印章の役割を果たし、社会的地位の象徴でもあったこれらの指輪は、20世紀にはファッショナブルなアクセサリーとして広まる。しかし、イヴにとってシグネットリングはあくまでも「力の印」「騎士の指輪」であり、その存在を形骸化させることはなかったようだ。剣や王冠、百合の花が彫られた写真の指輪は、2009年に彼のために特別に制作されたもので、ジャンヌ・ダルクの紋章を再現している。ここにはイヴが敬愛するフランスの国民的ヒロインへの思いが込められている。

THEME Ⅲ
Christian Mystique キリスト教神秘主義

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イヴの少年期のエピソードに、教会でのミサの際に司教の見事な指輪に魅了され、何度もその指輪に接吻をしたという話がある。時を経て、イヴはキリスト教にまつわる指輪の蒐集にのめり込む。司教や司祭が神との結びつきの象徴として身につけた指輪の装飾と形状の変化には、教会の発展と変容が刻まれている。その初期においては指輪のデザインも簡素だったが、教会が豊かになるにつれ、美しい宝石で飾られるようになった。十字架にかけられたキリスト像を表した写真の指輪は、1960年代頃の司祭のもので、簡素であるが信仰への純粋さをうかがわせる。こうした本質的な信仰への回帰は、現代の教皇が、初代ローマ教皇・聖ペテロを描いた漁夫の指輪をつけている姿にも見て取れるという。

THEME Ⅳ
Vanitas ヴァニタス(空虚)

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「洗練された紳士たちも悪党たちも、同じように髑髏(どくろ)の指輪をつけている」。これはイヴの弁だが、髑髏をモチーフとしたファッションはいまでは広く普及している。ヴァニタスというのは、ラテン語で「空虚」を意味する言葉。人生の虚しさや死と結びついた観念で、中世の美術の主題にもなり、そこでは頭蓋骨が象徴的に描かれた。イヴも死を想起させる指輪を数多くコレクションしている。このふたつの髑髏の指輪は、18世紀末から19世紀初頭に哀悼を込めてつくられたものだ。カメオがはめられたゴールド製と、唐草模様が施された黒×金の象嵌で、後者には人毛が入っているのが特徴だ。愛する者の死を乗り越えるために、このような指輪やジュエリーがつくられてきたのである。

THEME Ⅴ
Eclecticism 幅広いコレクション

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イヴの探求は、あらゆる領域へと向かっていた。ときには、アーティストによるオブジェのような指輪に関心を寄せ、フランスを代表する彫刻家セザール・バルダッチーニや、ポストモダニズムを牽引したエットレ・ソットサスらがつくった作品にも興味を抱いた。また、こうしたアートピースだけでなく、大量生産や大衆文化にも目を向け、映画やアニメでお馴染みのキャラクターものも蒐集している。さらに、物珍しくユニークな指輪にも食指を動かした。男女の人像柱がアームの両端を飾る写真の指輪は、19世紀末につくられたものだが、実はオルゴールを内蔵している。身につける指輪で個性を表現し、価値観に縛られず自由であること。そんなイヴのメッセージが聞こえてくるような作品だ。

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展覧会や講義を通じて、ジュエリーの文化を継承していく「レコール」
イヴ・ガストゥの希少なコレクションを集めたこの展覧会を主催しているのは、「レコール ジュエリーと宝飾芸術の学校」である。

フランスのジュエリーメゾン、ヴァン クリーフ&アーペルの支援のもと、宝飾文化を広く紹介することを目的に2012年にパリで創設。入学のための特別な条件や知識の有無は問わず、ジュエリーに興味をもつ人すべてにその門戸は開かれている。教室を見渡せば、初心者からコレクターまでが席を並べており、その国籍や年齢もさまざま。創立以来、約40カ国、10代から80代まで、のべ4万人以上がここで学んでいる。

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キャンパスでの各講義は2~4時間で行われ、1グループ6~12名までの学生をふたりの講師が担当する少人数制。最適な環境で学びを深めると同時に、学生と講師の距離を近くし、知識の共有を促進している。現在はパリと香港にキャンパスがあるため、講義はフランス語、英語、中国語で行われている。 

現在、キャンパスはパリと香港の2カ所(22年に上海にも開設予定)だが、その活動はキャンパスだけにとどまらない。頻繁に世界各地で講義や演習が行われており、13年と19年には東京でも特別講座が実施された。

講義はおもに3つの分野「ジュエリー史」「原石の世界」「ジュエリー制作 サヴォアフェール」からなり、講師は美術史家、宝石学者、宝飾職人らが務める。内容は実践的で、実技では職人と同じ道具を用い、美術史ではレコール所蔵の貴重なアンティークジュエリーを鑑賞できる。まさに本物を身近に体感できる環境である。ジュエリーと聞くと特権的なイメージも浮かぶが、誰にでも開かれた場で、学びを通じてその文化が継承されている。

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左:実際に職人が使う机で作業する。 右:デザインを描くなど実践的な講義が多いのもレコールの特徴。 

 

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『メンズ リング イヴ・ガストゥ コレクション』

会期:1/14(金)~3/13(日)
会場:21_21 DESIGN SIGHTギャラリー3
東京都港区赤坂 9-7-6
東京ミッドタウン ミッドタウン・ガーデン内
tel:0120-50-2895(フリーダイヤル、レコール事務局)
開)10時~19時 
無休 入場無料 予約不要
※開催の詳細は下記サイトで確認を
www.lecolevancleefarpels.com/jp/ja/mens-rings-exhibition
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会場となる「21_21 DESIGN SIGHT」は、デザイナーの三宅一生が2007年に創立。安藤忠雄が設計した空間で指輪とのコントラストを楽しみたい。上の写真はパリでの展示風景。

 

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photography: Benjamin Chelly text: Katsuhiko Sugimoto

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