ヴァン クリーフ&アーペル、キーワードで紐解くファンタジー。
Jewelry 2022.08.09
ロマンティックで夢あふれる世界が魅力のヴァン クリーフ&アーペルは、繊細な手仕事ゆえの優美な輝きにあふれている。職人の至高の技が凝縮されたハイジュエリーは、まさに美の真骨頂。その崇高なサヴォワールフェールの魅力を、キーワード別に紐解く。
[ フェアリー & バレリーナ ]
甘い恋物語やロマンティックなバレエの世界を生き生きと描いた優美なハイジュエリーとウォッチ。ダイヤモンドの顔をもつ妖精やバレリーナたちは、1940年代から作り続けられる歴史的コレクション。精緻な職人技を駆使して仕立てられる逸品だから、世界中にコレクターがいるのも納得。
Romantic Fairy
「フェデパピヨン」クリップ(WG×RG×ピンクサファイア×モーヴサファイア×ダイヤモンド)/ヴァン クリーフ&アーペル(ヴァン クリーフ&アーペル ル デスク)
大富豪バーバラ・ハットンが愛用した「スピリット オブ ビ ューティー」クリップ(1941年、プラチナ×ルビー×エメラルド×ダイヤモンド)/ ヴァン クリー フ&アーペル コレクション(ヴァン クリーフ&アーペル ル デスク)
フェアリー クリップの作品カード(1945年)/ヴァン クリーフ&アーペル アーカイブス(ヴァン クリーフ&アーペル ル デスク)
左:ワックスを彫刻して原型を製作。右:宝石を傷つけずに留めるには、細心の注意が必要。
Ballerina
「シルヴィ」バレリーナ クリップ(WG×YG×サファイア×スペサタイトガーネット×ダイヤモンド)/ヴァン クリーフ&アーペル(ヴァン クリーフ&アーペル ル デスク)
「アルベールチーヌ」バレリーナ クリップ(WG×RG×ルビー×ダイヤモンド)/ヴァン クリーフ&アーペル(ヴァン クリーフ&アーペル ル デスク)
左:裏まで徹底的にポリッシュ。右:爪が引っかからないようビーズのように丸める作業。
「レディアーペルバレリーヌアンシャンテ」ウォッチ(WGケース、サファイア×ダイヤモンド×エナメル、φ40mm、自動巻き)/ヴァン クリ ーフ&アーペル(ヴァン クリーフ&アーペル ル デスク)
左:極小サイズのバレリーナ。右上:ステンドグラスのように透けるチュチュを半透明のエナメルで製作するシャンルヴェエナメルのテクニック。右下:青いエナメルで描いた文字盤にダイヤモンドをセット。
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[ こだわりの花 ]
花々はこのメゾンが永遠に追い求めるテーマ。摘み取ったばかりのような花、グラフィカルな花、空想の花、そして可憐なブーケ......。どれも上質なルビーやサファイア、ダイヤモンドが惜しげなくあしらわれ、職人たちの超絶技巧でドラマティックに咲き誇る。
Naturalistic Beauty
花のありのままの姿を写し取る自然主義スタイルには、デザインに合わせて宝石を研磨する高度なテクニックが駆使されている。「デイジー」クリップ(1964年、PT×YG×ルビー×ダイヤモンド)/ヴァン クリーフ&アーペル(以上ヴァン クリーフ&アーペル ル デスク)
「ローズ」ブレスレット(1924年、PT×ルビー×エメラルド×オニキス×イエロー&ホワイトダイヤモンド)/ヴァン クリーフ&アーペル(以上ヴァン クリーフ&アーペル ル デスク)
Stylized Aesthetics
花々を大胆なまでに様式化するには洗 練されたデザイン感覚が必要。「シルエット フラワー」クリップ(1937年、YG×ルビー×ダイヤモンド)/ヴァン クリーフ&アーペル(以上ヴァン クリーフ&アーペル ル デスク)
最高級の「パスティーユ ブーケ」クリップ(1951年、PT×YG×ルビー×ダイヤモンド)/ヴァン クリーフ&アーペル(以上ヴァン クリーフ&アーペル ル デスク)
Bouquets
戦争が世界を覆いつくした1940年代は、明るい色で咲くゴールドのブーケが人々に希望と勇気を与えた。「パス パルトゥー」ネックレス&クリップ(1940年、YG×サファイア×ルビー)/ヴァン クリーフ&アーペル(以上ヴァン クリーフ&アーペル ル デスク)
「ミオソティス」クリップ(1940年、YG×サファイア×ダイヤモンド)/以上ヴァン クリーフ&アーペル コレクション/ヴァン クリーフ&アーペル(以上ヴァン クリーフ&アーペル ル デスク)
Modern Pieces
折り重なる花びらを立体的に仕立て、大輪の花を見事に表現した現代のクリエイション。「パンジー」クリップ(WG×RG×ピンク&ブルーサファイア×ルビー×パール×ダイヤモンド)/ヴァン クリーフ&アーペル(以上ヴァン クリーフ&アーペル ル デスク)
「ピヴォワンヌ」クリップ(RG×WG×ピンク&レッドスピネル×ダイヤモンド)/ヴァン クリーフ&アーペル(以上ヴァン クリーフ&アーペル ル デスク)
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[ あふれる物語性 ]
ノアの方舟に乗ったつがいの動物たちやジュリエットに愛をささやくロミオ、恋する王子が暮らすお城がハイジュエリーに変わる。シェイクスピアの芝居や古い童話、バレエなど、多彩な分野からインスピレーションを得て、自在に紡ぎ出される魅惑のストーリー。
L'Arche de Noé
「ラルシュドノエ」コレクションより。
「ジラフ」クリップ(YG×ダイヤモンド×エメラルド×ブラックスピネル)/ヴァン クリーフ&アーペル(ヴァン クリーフ&アーペル ル デスク)
「パングワン」クリップ(WG×RG×ダイヤモンド×コーラル×オニキス)/ヴァン クリーフ&アーペル(ヴァン クリーフ&アーペル ル デスク)
左:研磨されたオニキスのボディとゴールドの台座がぴったり合わさるように微調整する工程。右:コーラルのくちばしをオニキスにセット。目の部分にはさらにダイヤモンドをセット。
Romeo & Juliet
「ロミオ&ジュリエット」コレクションから。
同名のクリップ(WG×RG×YG×ブラックラッカー×ルビー×カラーサファイア×スぺサタイトガーネット×ラピスラズリ×ホワイト&イエローダイヤモンド)/ヴァン クリーフ&アーペル(ヴァン クリーフ&アーペル ル デスク)
左:髪の毛をひと筋ひと筋刻む彫金の技。男性をかたどったクリップは少ないので貴重。右:水彩で描くデザイン画は完成品のイメージをアトリエに伝えるのに重要な役割を果たす。
Peau d'Ane
「ポーダンヌ」コレクションより。
「シャトーアンシャンテ」クリップ(WG×ダイヤモンド×エメラルド×ピンク&バイオレットサファイア×サファイア)/ヴァン クリーフ&アーペル(ヴァン クリーフ&アーペル ル デスク)
左:立体的で複雑な構造のため、幾つものパーツを組み合わせてひとつの作品に仕立てる。右:実在するシャンボール城から想を得たデザイン。中央に輝く39.85カラットのオーバルカットエメラルドはブラジル産のとても貴重な石。
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[ 個性ある石 ]
世界各国の原産地から何年もかけて集められた極めて価値の高いレアストーン。メゾン独自の美意識で厳選された個性豊かな石は、身に着ける人の魅力をさらに引き立ててくれる。 家宝として何世代も伝えられていくにふさわしいエターナルな輝きに、ただため息。
Yellow Diamonds
「ポーダンヌ」コレクションより、「ボーテセレスト」リング(WG×YG×ダイヤモンド×イエローダイヤモンド)/ヴァン クリーフ&アーペル (ヴァン クリーフ&アーペル ル デスク)
Pink and Mauve Sapphires
「ロミオ&ジュリエット」コレクションより、「イナモラート」ブレスレット(WG×RG×ダイヤモンド×ピンク&モーヴサファイア)/ヴァン クリーフ&アーペル (ヴァン クリーフ&アーペル ル デスク)
左:中央に入るのは4.05カラットのイエローダイヤモンド。右:台座を徹底的にポリッシュすることでダイヤモンドが輝きを増す。
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ハイジュエリーとジュエリーの違いとは何だろう。どんなことがハイジュエリーには必要とされるのだろう。
まずは、世界にふたつとない最高級の宝石。それからアイデアを凝らした魅力的なデザイン。そして、どうしても欠かせないのはサヴォワールフェール(芸術的な職人の手仕事)。
ヴァンクリーフ&アーペルでは、アトリエに従事する熟練の職人たちを「マン ドール(黄金の手)」と呼ぶ。時には顕微鏡を使わなければならないほど細かい作業を繰り返すハイジュエリーは、原型を作る人、金細工を担当する人、宝石のセッティングに長けた人、貴金属のポリッシュをする人など、さまざまな分野のクラフトマンシップを結集した総合芸術ともいえそうだ。
厳重なセキュリティで守られたハイジュエリーのアトリエには、彫金やストーンセッティングなどさまざまな職能のマン ドールたちが集う。
また「パスティーユ ブーケ」クリップなどの名作に使われている「ミステリーセット」は、メゾンの誇りともいえるもの。ルビーやサファイアを爪なしで留めるこのテクニック は、デザインに合わせて宝石をひと粒ひと粒研磨しながらセットしていくという、気の遠くなるような作業が続く。ディテールにこだわったマスターピースとなると、ひとつの作品が完成するまでに1000時間を要することも珍しくないのだとか。
こうした空前絶後の技を継承し、未来のマン ドールたちに伝えていくヴァン クリーフ&アーペルのようなメゾンは、ジュエリーシーンにおいては本当に貴重な存在なのだ。
アトリエはヴァンドーム広場の本店からほど近い場所にあり、広場のシンボルも窓から見える。
*「フィガロジャポン」2022年7月号より抜粋
photography: ©Van Cleef & Arpels text: Keiko Homma