韓国ソウル、ヴァン クリーフ&アーペルと出会う旅へ!
Jewelry 2024.01.17
韓国・ソウルの森公園と雄大な漢江を見渡す美術館、Dミュージアムでは、現在『Van Cleef & Arpels: Time, Nature, Love/ヴァン クリーフ&アーペル:時、自然、愛』展が開催中だ。ミラノから始まったエキシビションは上海を経てソウルへ! その土地ならではの空間デザインを取り入れた展示には、1906年から続くメゾンの300点以上のジュエリーと、90点以上の貴重なアーカイブ資料が一堂に揃う。そして、2022年にオープンしたヴァン クリーフ&アーペル ソウルメゾンにもこの際訪れよう。ソウルメゾン限定のアルハンブラ コレクションや、ソウルブティックだけでしか見られないインテリアを堪能したい。
ソウルで開催、ヴァン クリーフ&アーペルの20世紀ジュエリーを展示。
期待が高まるアーチの入り口。
Dミュージアムでは、グラフィックデザイナーのミハウ・バトリが手がけた韓国自生の植物をイメージしたグラフィックが出迎えてくれる。アーチを抜けると始まる展示は、3つのセクション「時、自然、愛」を軸に展開。メゾンが所有するジュエリーコレクションや、制作過程を描いたスケッチ、グワッシュ画はもちろん、オークションや顧客から買い戻されたアーカイブや、今回特別に貸し出された個人所有のプライベートコレクションなどまでが揃う。ミラノや上海では展示されなかった、ソウルのみで展示される宝飾品も登場。滅多に見ることのない貴重な作品の数々は、20世紀にヴァン クリーフ&アーペルのジュエリーが作り上げた壮大な芸術の歴史展示でもあるのだ。
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「時」をテーマにジュエリー史を見つめる。
3つのセクションの最初、「時」は壮大だ。イタリアを代表する現代作家イタロ・カルヴィーノの論評『新たな千年紀のための六つのメモ』に着想を得て、10のテーマによる小部屋に分けて展示。その小部屋は、<パリ>から始まり、<ここではないどこか>、そしてカルヴィーノから引用した<軽さ><速さ><視覚性><正確さ><多様性>が続き、さらに<ファッション><ダンス><建築>というテーマで用意された。
たとえば<パリ>の部屋では、パリの街並みを彫ったアーカイブのゴールドのシガレットケースなどが並ぶ。<ここではないどこか>では、パリ以外の世界中の都市からインスピレーションを得て作られてきた逸品が選ばれた。展示を見ながら、どこの国か想像するのも楽しいだろう。ツタンカーメンが掘り起こされた時代には、それに着想を得たような作品が誕生していたり、時代時々で人気を得た文化的モチーフは古さを感じさせない魅力があるのにも関わらず、社会のトレンドまで見えてくるようで大変興味深い。現在はメゾンを代表するバレリーナウォッチだが、その原型となるジュエリーも展示されている。<軽さ>では600石以上のダイヤモンドを使用した、エジプトのナズリ王妃がプリンセスのウェディングのために依頼したというネックレスが登場。決して軽くはないはずの逸品だが、オープンワークのセッティングにより軽やかなムードを演出している。<ファッション>ではエキシビションのポスターにも登場するジップのジュエリーに注目を。<ダンス>ではメゾンならではのバレリーナのジュエリーが生き生きと踊る様子をじっくり堪能してほしい。
左:パリを象徴するバスティーユ広場のオベリスクをゴールドで制作(ヴァン クリーフ&アーペル コレクション、1950年) 右:凱旋門を背景にシャンゼリゼ大通りを歩くマドモアゼルが描かれたコンパクトケースはゴールド素材でドレスにあしらわれたエメラルドやルビー、ダイヤモンドの顔がポイント。(ヴァン クリーフ&アーペル コレクション、1945年)
<ここではないどこか>では8つの国にインスピレーションを得たジュエリーが並ぶ。
左:エジプトの王妃が依頼した673石、204.03ctのダイヤモンドとホワイトゴールドのネックレス(ヴァン クリーフ&アーペル コレクション、1939年)。 右:隣には軽さをイメージし、プラチナとダイヤモンドによる羽根のブローチ。(ヴァン クリーフ&アーペル コレクション、1945年)
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もとはアメリカの制服として用いられたジッパーの機能性を、メゾンのサヴォワールフェールにより、煌びやかなネックレス兼ブレスレットへと昇華させた逸品(YG×RG×ルビー×ダイヤモンド、ヴァン クリーフ&アーペル コレクション、1951年)
イエローゴールド、ホワイトゴールドとルビー、ダイヤモンドで作られた、メゾンのアイコニックなダンサーのコレクションはダンサーが回転する展示にも注目。ダンサー クリップ(ヴァン クリーフ&アーペル コレクション、1942年)
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「自然」は創業時から続くアイコニックなモチーフ。
「自然」のセクションではヴァン クリーフ&アーペルで現代も人気を博す<動物><植物><花>をテーマにした作品を展示。
<動物>のテーマでは、愛くるしいアニマルジュエリーが出迎える。ここでは、ジュエリーの裏側までもがじっくり見られる鏡の演出のおかげで、没入度を高めてくれること間違いなし。<植物>や<花>の展示は、ジュエリーはもちろん、その影の見せ方までも美しい。豊富なグワッシュ画や、ミステリーセットのアイデアが書かれたノートも余すことなく展示されている。
メゾン独自のミステリーセットが施されたルビーとダイヤモンドによる芍薬の花をモチーフとしたブローチ。(ヴァン クリーフ&アーペル コレクション、1937年)
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「愛」とは? 情熱的な想いをジュエリーで表現し続けたメゾン。
青磁を連想する壁の色やアクリルとガラスのオブジェが目を惹くと、そこは「愛」のエリアだ。
「愛」のセクションでは、愛のシンボルや贈り物、感情を具現化した作品が並ぶ。本来は目に見えないはずの感情が、煌めく逸品を通じて鮮やかに表現されている。愛を告げるプリンスとプリンセスの物語のワンシーンは、このメゾンならではの作品。
ロミオがジュリエットに愛を告げるシーン。(「ロミオとジュエリエット」左:YG×エメラルド×サファイア×ルビー×養殖パール 右:YG×エメラルド×ルビー×養殖パール、ヴァン クリーフ&アーペル コレクション、1951年)。イエローゴールド、プラチナ、ルビーとダイヤモンドがふんだんに用いられた鳥のつがい(ヴァン クリーフ&アーペル コレクション、1945年)に気持ちを託して。
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光と透明感あふれる色彩が見事な展示空間は、一歩足を踏み入れれば外界と隔てられた特別な時間が流れ始めるように感じるはず。ソウル開催ならではの青磁をイメージしたペールグリーンの壁や、ハングルを使用したコンテンポラリーなカリグラフィは、空間デザイナーでありアーティストのアメリカ人、ジョアンナ・グラウンダーによるもの。
幻想的なグラフィックが映し出される廊下。
そして、エキシビションのキュレーションを手がけたのは、イタリア人研究者・著作家で、ミラノ工科大学ジュエリーおよびファッションアクセサリー インターナショナルマスター課程のディレクター、アルバ・カペリエーリだ。今回、イタロ・カルヴィーノに着目し、メゾンの価値観やジュエリーが作られてきた20世紀という時代との繋がりを見出し、歴史に知的にフォーカスして大規模な展示を見事に成功させた。
このエキシビションは残念ながら東京開催の予定はない。ここでしか見られないアーカイブもあるので、ぜひソウル旅のTodoリストに加えよう。
●エキシビション『Van Cleef & Arpels: Time, Nature, Love』
会期:開催中〜2024年4月 14日
会場: Dミュージアム
83-21, Wangsimni-ro, Seongdong-gu, Seoul
開)11:00~17:00最終入場(火〜木、日) 11:00〜18:00最終入場(金、土)
休)月(4月1日、8日を除く)、2月10日
入場料:19歳以上12000ウォン、18歳以下無料(12歳以下は保護者同伴にて入場可)
www.vancleefarpels.com/kr/en/the-maison/exhibitions/van-cleef-arpels-time-nature-love.html
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チョンダムの新ランドマーク、光と庭のブティック。
エキシビションを楽しんだ後は、ソウルのヴァン クリーフ&アーペルのメゾンへ。ジュエリー好きはもちろん、建築好きにも勧めたいブティックは、活気あふれるチョンダムエリアに2022年にオープン。
ライトアップされた外観は華やかなランドマークに。
韓国の工房によるサヴォワールフェールが生きるファサード。
外観には韓国の工房で作られた陶磁器が用いられ、光を受けて優しいグリーンが浮かび、菱形の透かし模様はメゾンのアイコンであるロザンジュマークを彷彿させる。ガラスに囲まれた店内には陽光がたっぷりと差し込み、韓国出身のランドスケープ建築家のソ・アンが手がけた本物の庭が設られた。ジュエリーを抱くように植えられた韓国ならではの草木や花々は、専門の庭師が丹精込めて日々育てているという。
韓国の伝統とメゾンのインスピレーション源である植物が反映されたブティックは、5つのフロアで構成。1階にはソウルメゾンの限定アルハンブラがラインナップ。中2階には外の庭園へ繋がっているかのようなプライベートスペースがあり、階段の壁面にはアーカイブのポスターやグワッシュ画が展示され、踊り場は贅沢にもヘリテージ作品が並ぶ。2階では韓紙が用いられた壁や天井が優しくジュエリーを包み込み、3階に進むとイベントスペースも。4階にはプライベートサロン、5階はガーデンテラスがあり、どこまでも植物と共存する世界が広がる。ここでしか味わえない特別な体験が待っているのだ。
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1階には湖を模したガーデン。床の丸いラグは蓮の葉をイメージ。
中二階は少しプライベートなスペース。
階段の脇にはクチュールのレースをイメージしたメッシュのボード。
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壁や天井に韓紙がふんだんに使われた2階にはヘリテージのアイテムも並ぶ。
ガラス張りの壁面からは気持ちの良い光が差し込む。
●Van Cleef & Arpels Seoul Maison
ヴァン クリーフ&アーペル ソウルメゾン
住所:06010 Gangnam-gu, 441 Apgujeong-ro,
営)11:00〜20:00(月〜土) 11:00〜19:00(日)
無休
●問い合わせ先:
ヴァン クリーフ&アーペル ル デスク
0120-10-1906(フリーダイヤル)
www.vancleefarpels.com
photography: Yongjoon Choi(exhibition), Van Cleef & Arpels