本店、そこは物語が詰まった場所。 ヘリテージ コレクションやアーカイブピースが展示、美術館のようなヴァン クリーフ&アーペル旗艦店。

Jewelry 2024.02.14

歴史と物語が詰まった老舗ジュエラーの本店を訪れて! インテリアの意匠、本店でしか見られない美術品レベルのアーカイブ、メゾンを愛し訪れたセレブリティや文化人の残り香など、甘美な世界を堪能できる。


Van Cleef & Arpels

長方形の四隅が面取りされてヴァンドーム広場は八角形をなしている。貴重な面取り部分のひとつの22番地に、ヴァン クリーフ&アーペルが誕生したのは1906年。その後、左隣の24番地へと本店が広がり、2016年にはさらに右隣の20番地の建物にも新たなサロンをオープンした。この新たなサロンは時計やアイコニックなジュエリーを扱うブティックというだけでなく、店の奥にヘリテージ ギャラリーが備えられている。過去のクリエイションをアーカイブとして所蔵するジュエラーは少なくないけれど、それらが公開されるのは特別な機会のみでしかも短期間。ところがヴァン クリーフ&アーペルでは20番地店を訪れれば、いつでもメゾンの貴重なパトリモニー コレクションの所蔵品を鑑賞できるのだ。

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ハイジュエリーも取り扱う22番地の本店。メゾンの大切なインスピレーション源の自然を代表してホワイトゴールドの薔薇の装飾と、手吹きのムラノガラスのボールを無数に使用した華麗なシャンデリアが輝いている。

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「メゾンの芸術、職人の才能を証言する過去の宝飾品を買い戻してパトリモニー コレクションを作ろうと、1970年代から収集が始まりました。現在約2500点を所蔵。これらを見ると、時代の芸術的潮流と結びついてジュエリーが制作されていたことがよくわかります。パトリモニー コレクションの展示を始めたのは、24番地の本店がリニューアルされた2006年から。現在よりずっと小規模でしたが、メゾンを輝かせた創造の歴史をより多くの人々とシェアしたいというプレジデント兼CEOニコラ・ボスの熱意から生まれたことなんです。20番地のサロンでは年にふたつのテーマで展覧会を開催し、毎回会期は半年。テーマを介してさまざまな時代の作品を展示でき、またフォーカスが絞られた展示なので、ジュエリーに詳しくない人でもわかりやすく楽しめます」と、パトリモニー部門ディレクターのアレクサンドリンヌ・マヴィエル=ソネが説明する。

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1939年のパスパルトゥ。ネックレス、チョーカー、ブレスレット、ベルト、クリップと、何通りにも姿を変えるアヴァンギャルドなデザインと多機能性が革新的だった。

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1941年のバレリーナ クリップ。メゾンの歴史の中で重要な位置を占めるバレエという芸術。新たな章として近年では振付芸術を支援している。

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創業時の22番地の小さなブティックは現在香水のスペース。オードパルファム22 Vendôme(日本未展開)が一番人気だ。

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20番地のサロン。本店同様、ジュアン・マンク・エージェンシーがデザインした。階段の黒い手すりがミステリーセッティングのレールを想起させる。

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彼女によると、パトリモニー コレクションのために入手する過去のメゾンの宝飾品の出どころはさまざま。オークションで競り落としたり、個人の所有者から連絡をもらったり......。愛、自然、ミステリーセッティングなどメゾンを象徴するテーマや特徴的な技術を求め、所蔵品に含める意味や価値のあるジュエリーを集める苦労は少なくないという。とりわけメゾン創業の20世紀初頭は数が少ないだけでなく、リフォームすることが多く行われていた時代なので、アトリエから出た時の姿をとどめていないのだ。そんな中で、語るアレクサンドリンヌの声を弾ませるのは、今年コレクションに加わった驚きの一点。1937年に女優マレーネ・ディートリッヒのために制作されたガーターブレスレットである。

「ルビーとダイヤモンドを敷き詰めたボリュームのあるピースなのに、手首につけるととても軽い。パトリモニー コレクションは特に有名人が所有した来歴等にはこだわってはいません。このブレスレットは、施された驚くべき技術ゆえに入手しました」

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右上:マレーネ・ディートリッヒのガーターブレスレット。ヒッチコック監督の映画『情婦』(1957年)で着用し、演じた。 左下:1933 年に特許を取得した革新的なミステリーセット技法を生かして、1952 年に制作されたマロニエの葉モチーフのクリップ。

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ヴァンドーム広場20番地の店内で予約なしで入れる展覧会を開催するヘリテージ ギャラリー。ブティック左側に専用エントランスがある。

次回ヴァンドーム広場のサロンを訪れることがあれば、迷わず20番地のヴァン クリーフ&アーペルへ足を運ぼう。2024年1月9日までは『色の遊び、素材の遊び』展が開催予定。プレシャスストーンを使った赤青緑のジュエリーの時代の後、コーラルやターコイズなどハイジュエラーが使う石の種類の幅が広がった50~70年代のカラフルな宝飾品約60点を展示。最後に、見るだけでは物足りないというジュエリーラバーへの朗報を。それはメゾンが1920年代から90年代にかけて制作した作品を新たに販売するために自ら収集したヘリテージ コレクションの存在。こちらは不定期だが、22番地の本店にて展示されているアーカイブピースを購入することもできる。

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ヘリテージ ギャラリーの『色の遊び、素材の遊び』展より。コーラル、ターコイズ、タイガーアイなどのカラフルで陽気な50〜70年代のジュエリーを展示。

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技術開発に15年近くを要し、1950年に誕生した独創的なジップネックレスは閉じるとブレスレットに。

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『色の遊び、素材の遊び』展に展示されているブレスレットはビーズ状のターコイズとルビーの色合わせがユニーク。

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1938年制作の「エグランティン ミノディエール」。留め具は取り外してクリップにもなる。多機能性はメゾンを代表する特徴のひとつだ。

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22-24, place Vendôme,
20, place Vendôme 75001 Paris France
営)11:00〜19:00
休)日
tel:33-(0)1-55-04-11-11
www.vancleefarpels.com

 
*「フィガロジャポン」2024年1月号より抜粋

text: Mariko Omura

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