本店、そこは物語が詰まった場所。 ショパンが住んでいた部屋が当時の姿のまま保存された文化遺産でもある、ショーメ本店ブティックへ。

Jewelry 2024.02.18

歴史と物語が詰まった老舗ジュエラーの本店を訪れて! インテリアの意匠、本店でしか見られない美術品レベルのアーカイブ、メゾンを愛し訪れたセレブリティや文化人の残り香など、甘美な世界を堪能できる。


CHAUMET

1780年創業、皇帝ナポレオンのジュエラーとして数々の宝飾品を製作したショーメがヴァンドーム広場15番地(現在のリッツ)に店を出したのは、1812年のこと。その後数度の転居を経て、1907年、ヴァンドーム広場12番地に本拠を定めた。ハイジュエリーの代名詞とも言えるヴァンドーム広場に店を構えた初めてのメゾンである。

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3階のグラン・サロンには、ショーメを象徴するブルーの壁に数百ものマイヨショール(ティアラの模型)が飾られたティアラのサロンがある。

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2020年、創業240周年を祝って行われた大規模なリノベーションで歴史的アドレスである12番地は大きく変わった。顧客を迎えるブティックに加えて、歴史と文化遺産を語るグラン・サロン、そしてサヴォワールフェールの場であるハイジュエリーのアトリエがともに集う、ショーメの家メゾンが誕生したのだ。1階と2階のブティックが手仕事にこだわった内装で仕上げられ、クリエイションのすべてが展開されていることは言うまでもない。だが、メゾン・ショーメの秘密は、ブティックの上、普段は一般に公開されることのない3階と4階に隠されている。

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天井まで届く書棚に、ずらりと並ぶグアッシュの台帳。ティアラ、指輪、ペンダントなど、アイテムごとに整理されている。

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歴史建造物の指定を受け、往時の姿そのままに修復、保存されているサロン・ショパン。

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大きな玄関ホールから大階段を上がった3階は、ショーメの歩んだ歴史と文化遺産を語るグラン・サロン。ブルーに染められたエントランスを入ると、奥には天井画とシャンデリア、ゴールドの浮き彫りに彩られたサロン・ショパンが現れる。19世紀半ば、ショパンが住み、1849年、最後の作品となるマズルカを作曲したというゆかりのサロンだ。また、中庭に面したサロン・デ・ペルルは、深いブルーとゴールドの色使いで、クラシックとモダンが融合する空間。邸宅の中でも、天井の高い3階はプレステージの高いフロアだけに、大きな窓から広場を見下ろし、18〜19世紀の装飾を残すグラン・サロンは壮麗な雰囲気だ。複数の部屋からなるこのフロアにはアーカイブピースが展示され、重要な顧客を迎えるなどの特別な機会に使われている。

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エントランスに「フレデリック=フランソワ・ショパン、1849年10月17日、この邸宅で死去」のプレートがある。

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ヘリテージが展示されるグラン・サロンのエントランスには、ナポレオン1世と皇后ジョゼフィーヌの肖像画が飾られている。ナポレオン1世の宝剣や夫妻の戴冠式の冠はショーメの創業者ニトが手がけたもの。

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メゾンの心臓部、職人が働くハイジュエリーのアトリエは4階にある。「3年前の改装で、アトリエは広場を見下ろす場所に移されました。それは、手仕事の素晴らしさがメゾンの力であり中心である、という考えの表れ」とヘリテージ部門責任者のクレール・ギャネは言う。そして、同じ4階にアーカイブが置かれているのも、歴史遺産はメゾンを支える柱のひとつだという考えにほかならない。窓の左右に天井まで届く書棚が聳える閲覧室が、外部の研究者や社内のデザインスタッフを迎えている。アイテムごとに整理されたグアッシュのデザイン画は6万点。受注台帳、請求書、買い取った石をすべて記帳した台帳も整然と並んでいる。

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クリエイションの前段階となるデザインを描いたグアッシュ。100年以上前のティアラのデッサンも美しく保存される。

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ヴァンドーム広場を望む4階にはハイジュエリーの職人が働くアトリエがある。

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「ここにあるのは、その中のほんの5%です。この部屋は、アーカイブそのものの美しさを見せるためでもあるのです」。古のジュエリーや、作品を撮影した写真のガラス乾板30万点は、別の場所で大切に保管されている。入荷した素材の記帳から、顧客の注文書、デザインを描いたグアッシュ、完成品の写真と請求書まで。一粒の石が宝飾品として完成するまでの経過が、美しい筆跡で記録されたアーカイブ。そこには時代の好みを映し出すデザインの歴史ばかりか、メゾンを訪れた華麗な顧客の好みや人となりまでもが浮かび上がる。メゾンが保管するアーカイブピースは、時代の証人。世界中のブティックで展示されるほか、メゾンが主催するテーマ展の機会に公開されている。

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顧客の依頼が美しい筆跡で記録された訪問台帳。1927年、マダム・ピカソがダイヤモンドとエメラルドの時計をブレスレットに作り替える相談に訪れた記述が残る。

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奇しくも、このメゾン・ショーメのグラン・サロンにて、『A Golden Age 1965-1985』と題した展覧会が12月2日まで開催されている。王侯貴族に愛され、洗練されたティアラがことに知られるショーメだが、社会が大きく動いた70年代前後の作品は、そんな既成概念を吹き飛ばすようなエッジーなデザインばかり。老舗ジュエラーの思いがけない面を発見させる展覧会は、グラン・サロンの歴史空間へ訪れることのできる、希少な機会でもある。

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ショーメらしい、自然をモチーフにした柊のブローチ。1890年頃の作品。シルバーに真珠とダイヤモンド。

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雷神を描いた日本風のベルトのバックル。1900 年頃。ゴールドにオパール、ルビー、ダイヤモンドとエメラルド。

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12, place Vendôme 75001 Paris France
tel:33-(0)1-44-77-24-24
営)10:30〜19:00(月〜土)
休)日
www.chaumet.com/fr_fr/notre-maison/12-place-vendome

 
*「フィガロジャポン」2024年1月号より抜粋

text: Masae Takata (Paris Office) photography: ©Chaumet

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