シャネルがゴールデンアワーを表現した新作ハイジュエリーコレクションを京都で発表。
Jewelry 2025.06.14
シャネルは新作ハイジュエリーコレクション「Reach for the Stars(リーチ フォー ザ スターズ)」を京都国立博物館にて発表した。
今回のコレクションでシャネルが着目したのは、日没前のわずかの間に現れ儚く消える"ゴールデンアワー"と呼ばれる瞬間。この束の間のひと時に紺碧のブルーが消えた空は、ピンクやモーブの色調に包まれゴールドの地平線の彼方に燃えるようなオレンジ色の太陽が沈む。太陽のその日最後の光が顔を照らし、日に焼けた背中を撫で、一つひとつの動きに柔らかな魔法をかけるーー。
「リーチ フォー ザ スターズ」は、豪奢と軽やかさ、構造美と柔軟性といった相対するものを融合している。モノクロームのクリエイション、ブラックとホワイトに加えて、ゴールデンアワーを象徴するようなカラーストーンがダイヤモンドを強調すると同時に、コメット(彗星)、ライオン、シャネルのハイジュエリーでは初登場となる翼という、ガブリエル・シャネルのクリエイティブを象徴する3つのシンボルにもオマージュを捧げているのだ。


独創的で気品に満ち、無条件の自由を愛し、自らの手で運命を切り拓いたガブリエル・シャネルは、自身の美意識と類稀な才能を盾に1930年代にはハリウッドにも活躍の場を広げた。トップ女優たちの衣装を手がけていくなかで、彼女が早くから意識していたのがアメリカにおけるジュエリーのスタイルだった。ダイヤモンドのカスケードに見るアート性、目を見張るほどの大きなストーンをセットしたカクテルリングや存在感のあるネックレスなど、壮麗さを誇りながらも、輝き、豪奢、栄華を称えるジュエリー......。
今回発表されたハイジュエリーは、ストーンのカスケードにチョーカー、オープンネックレス、ツーフィンガーリング、大ぶりのブローチ、アシンメトリーのイヤーペンダント、カフ、そしてティアラといったガブリエル・シャネルが好んだ壮麗で豪奢なデザインを踏襲。もちろんそこには大胆さ、エレガンス、自由といったシャネルのスピリットが融合し、ジュエリーが生み出すスタイルのエレガンスを表現している。
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メゾンが定義する美しさのシンボル、コメット。

星はガブリエル・シャネルが「永遠にモダン」な存在と評していたモチーフで、誰もがそれぞれのラッキースターを信じる自由があると考えていた。1932年に彼女が発表した最初にして唯一のハイジュエリーコレクション「ダイヤモンド ジュエリー」で、彼女は自身の作品を星々のモチーフで輝かせたほどだ。故パトリス・ルゲローとシャネル ファイン ジュエリー クリエイション スタジオは「リーチ フォー ザ スターズ」のコメットを、シャネルが定義する美しさのシンボルと捉えた。

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京都の職人とも協働した、優雅な翼。
京都の漆職人とタッグを組んだ「ファイブ ウイングス ブローチ」は全5種。蒔絵や螺鈿を取り入れた漆細工を嵌め込み、ジェムストーンとの組み合わせでデザインが異なり、豊かな表情を見せる。(写真上)左:ブローチ「ファイブ ウイングス」(WG×YG×ダイヤモンド×ブラックスピネル×漆) 右:不死鳥の翼を連想させるような生命力を感じる色使い。同(PG×ダイヤモンド×イエローサファイア×スペサルタイトガーネット×漆)(写真下)左:同(WG×サファイア×漆)、中:同(YG×ダイヤモンド×イエローサファイア×漆)¥30,580,000、右:同(WG×ダイヤモンド×漆)各¥30,580,000(すべて参考価格)/以上シャネル
「翼を持たずに生まれてきたとしても、自分の翼が育つのを妨げてはならない」と、1938年の雑誌インタビューで語ったガブリエル・シャネル。この言葉に共感したパトリス・ルゲローとシャネル ファイン ジュエリー クリエイション スタジオは、今回シャネルのジュエリーとして初めてこのシンボルに焦点を当てた。完璧なデザインや着け心地を追求したこのシリーズの中でも、注目は「ファイブ ウイングス ブローチ」。ここでは眩いジェムストーンと京都の漆職人によるサヴォワールフェールが精緻に組み合わされている。本コレクションの発表の舞台が京都だったのは、メゾンと日本の関わりだけでなく、シャネルと京都の匠の技との縁によるものだ。このシリーズではそのほかにも豪奢なデザインが目を惹く。ジュエリーに姿を変えた翼は、空のゴールデンアワーと光り輝く夕暮れ時の無限のパレットから着想を得た特別なストーンがセットされている。



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象徴であるライオンを新たな表現で。

獅子座のガブリエル・シャネルにとって、ライオンも大切なシンボルのひとつだった。力強さとエレガンスを持ち合わせたこの動物は、2012年にシャネルのハイジュエリーを象徴する存在へと昇華。そして本コレクションでシャネルは新たなライオンの表現に挑戦した。星に囲まれたライオンのたてがみが光り輝くメダリオンは、その姿にさらなる威厳を纏わせる。

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シャネルが定義する洗練された美を体現するゴールデンアワーは、故パトリス・ルゲロー率いるシャネル ファイン ジュエリー スタジオにインスピレーションを与えた。「私たちがつくりたかったのは、夕日に照らされ、地平線の向こうで赤々と燃えるようなジュエリーでした。ハイジュエリーが肌の上で煌めく昼と夜の境目に現れる、魔法のような瞬間をとらえたいと思ったのです」と彼らは語る。
コレクションの最後を飾る「ザ シルエット クロック」にもメゾンが定義する美が表れている。象徴的な八角形のダイヤルを備えたブラックジェイドのスタンドの上で、空を見つめるガブリエル・シャネル。沈みゆく太陽に照らされたかのようにゴールドに輝く彼女の姿は、ブレードがあしらわれたジャケットとパンツをシンプルに纏い、ポケットに手を収めた彼女は永遠を約束する星々を見上げている。

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新作ハイジュエリーを纏って美しいセレブたちも登場。
ハイジュエリーコレクション「リーチ フォー ザ スターズ」の発表に合わせて、京都東山の山頂に位置する将軍塚 青龍殿でのガラディナー パーティが開催され日本とアジア各国のセレブリティが出席した。




text: Natsuko Kadokura