グッチが紡ぐエレガンスの結晶、パリで披露されたハイジュエリーとハイウォッチメイキング。
Jewelry 2025.07.28
2025年7月7日、2026年秋冬オートクチュールコレクションが開催中のパリ。モンテーニュ通りにあるグッチのフラッグシップショップを舞台に、グッチのハイジュエリーとハイウォッチメイキングの新作、そしてポメラートとのコラボレーションによる「モニリ」ハイジュエリーコレクションが披露された。
まずハイジュエリーでは、ラビリンスに迷い込んだような幻想的な「ラビリティ グッチ」コレクションから新作が登場。2024年に誕生したこのコレクションは、イタリア式庭園の幾何学的な造形美や咲き誇るフレッシュな花々からインスピレーションを得たもの。今回、よりシンプルで洗練された一点もののジュエリーが新たに20点ほど加わった。
なかでも目を惹いたのが、直線状に連なるダイヤモンドが動くたびに眩い輝きを放つ優美なネックレス。ネックラインをしなやかに包み込むデザインの中央には、鮮やかなタンザナイトとパライバトルマリンを配置。そのふたつのジェムストーンからダイヤモンドが流れ落ちるように配されたデザインは、庭園の奥にひっそりと存在する泉を彷彿とさせる。

ラビリンスを表現したこのコレクションは、シンプルなものからデコラティブなデザインへと多彩なクリエイションを展開。ブラジル産の澄んだアクアマリンを主役に据えたネックレスは、透かし編みのようにダイヤモンドが連なるネックラインにブルーのタンザナイトが彩りを添える。豪奢なデザインながら、オープンワークによる軽やかな構造が抜け感を演出し、繊細さと華やかさの絶妙なバランスを生み出している。ほかにも、アールデコ調のデザインやGモチーフ、ジェムストーンを織り交ぜながら、自然の豊かさを探求するグッチならではの美意識を表現したものも披露された。

今年、ハイジュエリー コレクションに加わった「ホースビット」は、乗馬の世界からインスピレーションを得たタイムレスなコレクションだ。ブランドを象徴するホースビットを主役に、ひと際ラグジュアリーなデザインへと昇華した新作が登場。シンプルなラインにダイヤモンドがちりばめられたブレスレットには大ぶりなサファイアが輝き、アシンメトリーなチョーカー風ネックレスには鮮やかなレッドとグリーンのカラーストーンがあしらわれている。色彩のコントラストがモダンなフォルムを際立たせ、エフォートレスで洗練されたエレガンスを漂わせている。


そして、もうひとつの新たなハイジュエリー コレクション「マリナチェーン」が誕生。1960年代に海の世界からインスピレーションを得たグッチのアイコニックなコードを、色彩豊かなジェムストーンによって表現している。なかでも、このコレクションを象徴するのがレインボーカラーのネックレスとブレスレットのセット。マリナチェーンのチャームにはルビー、ツァボライト、カラフルなサファイアがふんだんにあしらわれ、チャームを繋ぐリンクにもダイヤモンドのパヴェが煌めく華麗なジュエリーだ。アクアマリンにライトブルーのサファイアとダイヤモンドパヴェがあしらわれたチャームを主役にしたペンダントネックレスやイヤリングも展開する。ひとつひとつのジェムストーンにグッチのクラフトマンシップが息吹き、唯一無二の輝きを放つクリエイティブなコレクションとなっている。
何百石ものルビー、ツァボライト、ブルーやオレンジ、ピンク、イエローのサファイアが華やかに彩られたマリナチェーンのネックレス。Courtesy of Gucci
それぞれ、3.82ctのオーバルカットのタンザナイトを中心に、ライトブルーのサファイアとダイヤモンドパヴェをあしらったイヤリング。Courtesy of Gucci
ハイウォッチメイキングには、第5世代コレクションとして「G-タイムレス」「GUCCI 25H」「グッチ インターロッキング」から7つの新作が登場。大胆な技術と複雑機構、グッチの歴史を物語るモチーフを取り入れ、卓越した職人技と精度を体現するラインナップとなっている。
「G-タイムレス」コレクションに加わった5つの新作は、グッチのアーカイブのシルクスカーフからインスピレーションを得たもの。イタリアのアーティスト・イラストレーターのヴィットリオ・アッコルネロ・デ・テスタがスカーフのために描いたフローラプリントやノーティカル(航海)をテーマにしたデザイン、アニマリエ(動物)シリーズ、サファリプリントなど、メティエダールの技巧によってダイアルのアーティスティックな装飾に落とし込んだ。グッチの重要なモチーフであるエクエストリアン(乗馬)の競技シーンは、ハンドグレービングとハンドペイントを施したローズゴールド製の馬と騎手でダイナミックに表現。精密に描き出されたアートピースのような美しいダイアルに、長年にわたって受け継がれてきた熟練の技が光る。
アイコニックなスカーフの「フローラ プリント」を、ホワイトゴールド、ダイヤモンド、ホワイトのグランフーエナメルで表現。ボタニカルモチーフの繊細な彫刻と手描きで緻密に彩られた花々がエレガントなデザイン。Courtesy of Gucci
スカーフにもしばしば登場する乗馬の競技シーンを描いたモデル。イタリアのオリーブウッド40ピースを用いてマルケトリー技法で仕上げたダイアルに、ブラックのアリゲーター ストラップで力強さを。Courtesy of Gucci
2021年にグッチ初の独自キャリバーを搭載して誕生した「GUCCI 25H」コレクションからは、古代ローマのコロッセオにインスピレーションを得た40mmスケルトン トゥールビヨン モデル「GUCCI 25H」アンフィシアターが登場。特徴的な超薄型ケースのインナーリングにセッティングされた、立体で多層的なバゲットカットのダイヤモンドが印象的だ。ダイアルに奥行きと躍動感のある表情を演出し、ユニークかつコンテンポラリーなデザインに仕上がっている。
厚さわずか8.4mmのローズゴールド製超薄型ケースを採用し、6 時位置にフライングトゥールビヨンのケージを配置。ダイヤモンドの構築的なバックルで仕上げたブラウンのアリゲーター ストラップも魅力。Courtesy of Gucci
一方で、2024年に誕生した「グッチ インターロッキング」コレクションに新たに加わったのは41mmのローズゴールド モデル。サイズの異なるダイヤモンドをふんだんに使用し、手作業でモザイク状にあしらったケースが光によって多彩な輝きを放つ。多層構造のブラックのダイアルにスモーク サファイアガラスの下に手作業でラッカー仕上げを施したアワーディスクを配置することで、ガラスの開口部から特定の時間だけが視認できるような革新的な設計に。ブラックのアリゲーター ストラップがエレガントな印象を醸し出す。
これまでと同様に、10.7mm厚のクッション シェイプ ケースを採用。インターロッキングG をあしらったフライングトゥールビヨンとジャンピングアワーという2 つの複雑機構を搭載する。Courtesy of Gucci
さらに今回、ポメラートとの初コラボレーションによる「モニリ」ハイジュエリーコレクションも登場。イタリア語でジュエリーを意味する名前が付けられたこのコレクションは、5月にフィレンツェで開催された2026年クルーズ コレクションのショーで初披露されたものだ。グッチのレザーグッズで受け継がれてきた職人技とポメラートの金細工や技巧を融合し、両ブランドに共通するタイムレスな価値観とイタリアの卓越したクラフツマンシップを体現している。ポメラートの1984年のアーカイブジュエリーに着想を得て、彫刻的なシルエットとブランドを象徴するモチーフを取り入れたネックレスやブレスレット、クラッチバッグをラインナップ。レザー、ゴールド、ダイヤモンドパヴェの多彩な素材が表情豊かなコントラストを生み出す。
ブラックレザーのクラッチバッグは、ダイヤモンドパヴェのリストチェーンによってジュエリーのような佇まい。ダイヤモンドパヴェで装飾されたパーツとブラックレザーによるノットデザインのブレスレットも、しなやかなラインで手元にエレガンスを添える。ほかに、ステッチを施したブラウンレザーにダイヤモンドパヴェの装飾とローズゴールドを用いたネックレスやブレスレットも展開。素材の組み合わせによってジュエリーのフォルムを際立たせ、個性豊かでモダンな佇まいに仕上げている。
ブラックレザーで仕立てたハードケースのクラッチバッグに、ダイヤモンドパヴェが煌めくホワイトゴールドのリストチェーンを組み合わせて。Courtesy of Gucci
ダイヤモンドパヴェで装飾されたホワイトゴールドのパーツとなめらかなブラックレザーが描き出す、しなやかなカーブが印象的なブレスレット。Courtesy of Gucci
カラフルなジェムストーンやダイヤモンドで彩られたユニークピースの数々。グッチが培ってきたクラフトマンシップと美意識が、洗練されたエレガンスに結実している。
text: Momoko Suzuki