地球が生み出した、美しき宝石図鑑。
Jewelry 2025.08.24
大自然の中で育まれた贅沢で、かけがえのない存在である宝石。毎日ずっと身に着けたい運命の石と出合うために、彩りと煌めきのパレットへご案内! アゲートからターコイズ、ジルコンまでジュエリーに使用される宝石を欧文名のAからZの順にご紹介。誕生石の月や石の特性、名前の由来などもチェック。
ジュエリーに使用される頻度が高いメジャーな宝石を、欧文名のAからZの順に紹介。
【鉱物名、または鉱物グループ名】
〈和名〉
〔石の主なカラー〕
(誕生石の月)
[石の固さを示すモース硬度]を表記。
石の特性や魅力、名前の由来のほか、その宝石にまつわるエピソードや主な産地、カットや加工の特徴なども記載。
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Agate|アゲート
【カルセドニー】
〈断面が馬の脳のように見えることから瑪瑙(めのう)〉
〔レッド、オレンジ、イエロー、グリーン、イエロー、虹色などさまざま〕
[6.5-7]
縞を有するカルセドニー。色やインクルージョン、透明度によってサードオニックスやオニキスに分類されるものも。仏教における七宝(七つの宝)に、金・銀・瑠璃・水晶・真珠・珊瑚とともに名を連ねている。
Alexandrite|アレキサンドライト
【クリソベリル】
〈ロシアで初めて採掘された際、緑に光っていたことから金緑石(きんりょくせき)〉
〔無色、イエロー、レッドなど色合いは産地によって異なる〕
(6月)
[8.5]
名前は黄金を意味するギリシア語に由来。自然光の下では緑色、人工光(白熱灯)で照らすと赤などに色が変わるカラーチェンジ特性があり、変色の程度が明瞭であるものほど貴重とされる。
Amethyst|アメシスト
【クオーツ】
〈紫水晶〉
〔紫色〕
(2月)
[7]
新石器時代から装飾品として用いられてきた。ギリシア神話の中にワインの神バッカスが水晶にワインを注いで紫色に染めたというエピソードがあることから、身に着けると酒酔いを防ぐと信じられてきた。紫外線に長時間晒すと退色するので、ジュエリーを外した後は直射日光が当たらない場所に収納するのが望ましい。
Apatite|アパタイト
【アパタイト】
〈燐灰石(りんかいせき)〉
〔半透明から透明のブルー、無色、グリーン、イエロー、パープル、ピンクなどさまざま、ブルーが最も代表的〕
[5]
リンの資源鉱物。名前はアクアマリンやモルガナイトなどベリル系の宝石に似ていて紛らわしいことから、ギリシア語で「惑わす」を意味するアペーテに由来。角度によって色が異なって見える二色性の特性がある。
Aquamarine|アクアマリン
【ベリル】
〈水宝玉、藍玉〉
〔ブルー〕
(3月)
[7.5−8]
名前はその色合いから水(アクア)と海(マリン)に由来し約2000年前にローマ人が命名したといわれている。古くから海難から逃れるお守りとされ、現代でも船のオーナーなどが好んで身に着ける。原石のままで美しい青色をしている石もあるが、その大部分は色を引き出すため低温加熱加工が施されている。
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Bloodstone|ブラッドストーン
【カルセドニー】
〈血石(けっせき)〉
〔赤い斑点模様が入ったディープグリーン〕
(3月)
[6.5-7]
濃いグリーンの地に赤い斑点があることから、十字架に架けられたイエス・キリストの血が足元のジャスパーの上に垂れて誕生した石であると伝えられてきた。また、古代ギリシア語で「太陽を呼び戻す石」を意味するヘリオトロープの名前でも呼ばれることもある。
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Carnelian|カーネリアン
【カルセドニー】
〈紅玉髄(べにぎょくずい)〉
〔ブラッドレッドからオレンジまで〕
[6.5-7]
酸化鉄や水酸化鉄を含み赤みを帯びたカルセドニー。加熱すると黄褐色の石が濃い赤系に変わる。古くは血の流れを鎮めたり熱を冷ます効果があると信じられていた。高品質のものはインド産だが、ブラジル産やウルグアイ産のカルセドニーを着色したものも流通している。
Chrysoberyl Cat's Eye|クリソベリル・キャッツアイ
【クリソベリル】
〈金緑石、猫目石〉
〔無色、ハニーイエロー、グリーン〕
(2月)
[8.5]
キャッツアイとは猫の目の瞳孔のように宝石上に細長い一条の光の光が現れるシャトヤンシーと呼ばれる現象のことで、一般的に美しく希少性の高いクリソベリル・キャッツアイを指す。東洋では眉間に当てると先見の明が得られるとされ、スリランカでは悪霊から身を護ると信じられた。
Citrine|シトリン
【クオーツ】
〈黄水晶〉
〔イエローから薄いオレンジで濃淡に幅がある〕
(11月)
[7]
紀元前から宝石として扱われ、名前はフランス語でレモンを意味するシトロンに由来。ロシア、ブラジルに加え、ザイールやザンビアでも産出している。天然のものは少なく、市場でシトリンとして出回っている石はアメシストに加熱処理を施しイエロー系に変色されたものが多い。
Coral|コーラル
【コーラル、有機物】
〈珊瑚〉
〔レッド、ピンク、ホワイト〕
(3月)
[3.5]
海中の微生物によって作られる生物起源宝石。古代ギリシャ・ローマ時代から魔除けや幸運を呼ぶお守りとして身に着けられた。日本にはシルクロードを経由し奈良時代に持ち込まれた。地中海産の赤サンゴ、日本産の淡いピンクでムラのないエンジェル・スキンが人気。汗や酸で変質するので注意。
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Diamond|ダイヤモンド
【ダイヤモンド】
〈金剛石〉
〔主に無色透明だがレッド、グリーン、ブルー、ピンク、イエローなどもある〕
(4月)
[10]
地球上で最も硬い物質。名前はギリシャ語で「征服されざる」を意味するアダマスが語源。その強さと美しさから紀元前より神秘的な力を持つと信じられてきた。光を反射して輝くよう計算されたラウンドブリリアントカットに研磨される石が多い。
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Emerald|エメラルド
【ベリル】
〈翠玉(すいぎょく)〉
〔グリーン〕
(5月)
[7.5-8]
歴史上最古の宝石市場とされるバビロンで紀元前に取引されていたといわれ、エジプトではクレオパトラが所有したといわれるエメラルド鉱山の遺跡が発見されている。六角柱状の原石を最も効率よく美しく研磨できるスタイルとして、その名もエメラルドカットというステップカットが編み出された。
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Garnet|ガーネット
【ガーネット】
〈ザクロのような色合いから石榴石(ざくろいし)〉
〔主に深いレッド。緑や黄色、オレンジ、紫がかった赤色のロードライトガーネットなども〕
(1月)
[7-7.5]
血の色を連想させることからギリシャ、ローマ時代から身を守る護符として用いられ、特に十字軍の兵士が戦傷を防ぐため盛んに身に着けた。また子宝や安産のお守りにされることもあった。
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Iolite|アイオライト
【コーディエライト】
〈スミレの花のような色合いから菫青石(きんせいせき)〉
〔ブルー〕
(3月)
[7-7.5]
語源はギリシア語の青を意味する言葉。見る角度によって青紫色、灰黄色、淡青色に変様する強い多色性をもつ。サファイアの青さと水の透明性を併せ持つことから「ウォーターサファイア」とも呼ばれている。主な産地はミャンマー、スリランカ、インド。
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Jadeite|ジェイダイト
【ジェイダイト】
〈翡翠〉
〔最も珍重されているのは半透明で深く澄んだグリーン。ラベンダー翡翠と呼ばれる薄紫色のものやホワイト、レッドなどさまざま〕
(5月)
[6.5-7]
英語でジェードと呼ばれる石にはジェイダイトとネフライトの2種類があるが、価値の高い宝石品質の翡翠はジェイダイトのことを指す。東洋で古くから愛されており、日本の国石でもある。
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Kunzite|クンツァイト
【スポシュミン】
〈リチア輝石(きせき)〉
〔最もポピュラーな色はライラックピンク。ほかにグリーンやイエロー〕
(9月)
[6.5-7]
1879年にアメリカで初めてこの石を発見した宝石の研究者、ピエール・クンツ博士にちなんで命名された。現在の主な産地はブラジル、アフガニスタン。天然の色でなく放射線照射を施して人工的に色を濃く仕上げたものも存在する。
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Lapis Lazuli|ラピスラズリ
【ラズライト】
〈瑠璃(るり)〉
〔不透明の濃いブルー〕
(12月)
[5-6]
語源はラテン語の青い石。人類が用いてきた最古の鉱物といわれ、6000年前からアフガニスタンで産出、ツタンカーメンの黄金マスクにも使用されている。きらきら輝くパイライトが含まれていることも。絵の具の原料としても使われ、画家のフェルメールが多くの作品で愛用したことで知られる。
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Malachite|マラカイト
【マラカイト】
〈孔雀石(くじゃくいし)〉
〔グリーン〕
[3.5-4]
濃淡の緑の縞模様が美しい石。古代エジプトではパウダー状にしてアイシャドウにも用いられていた。岩絵具「緑青」の原料でもある。ロシア・サンクトペテルブルグのエルミタージュ宮殿(現・エルミタージュ美術館)には柱から調度品まで室内を約2トンのマラカイトで装飾された「孔雀石の間」がある。
Moonstone|ムーンストーン
【オーソクレース】
〈月長石(げっちょうせき)〉
〔亜透明の無色、ピンクやオレンジやグレーなどを帯びたホワイト〕
(6月)
[6-6.5]
光を当てた時に "シーン"と呼ばれる閃光が浮かび上がることから古代ローマ人は月の光が固まったものだと信じていた。またインドでは満月の夜に口にくわえると自分の将来が見えるといわれた。主にカボションカットに加工される。
Morganite|モルガナイト
【ベリル】
〈緑柱石(りょくちゅうせき)〉
〔淡いピンク、ライラック色、ピーチ色、オレンジ、ピンクがかったイエローなど〕
(4月)
[7.5-8]
1911年に宝石学者のクンツ博士が発見、モルガン財閥の創始者で銀行家、宝石収集家としても知られるJ.P.モルガンの功績を讃えてネーミングされた。淡いピンクやライラック色、ピーチ色、オレンジ、ピンクがかった黄色などがある。
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Onyx|オニキス
【カルセドニー】
〈黑瑪瑙(くろめのう)〉
〔ブラック〕
[6.5-7]
名前は爪を意味する古代ギリシャ語に由来。色が黒の場合はオニキス、レッドからオレンジ系の色のものはサードオニックスと呼ばれる。丸い山形のカボション状にカットされたりビーズに加工されジュエリーに用いられるが、市場でオニキスの名で出回っているものの多くは人工的な染色が施されている。
Opal|オパール
【オパール】
〈蛋白石〉
〔不透明でホワイト、虹色、ブラック、オレンジなどさまざま〕
(10月)
[5-6]
名前はサンスクリット語で宝石を意味する言葉に由来。虹色に光が揺らめくものをプレシャスオパール、遊色効果を発しない赤から黄色のものをファイヤーオパールと呼ぶ。主にカボションにカットされる。シェイクスピアの『十二夜』の中では宝石の女王と記されている。
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Pearl|パール
【パール、有機物】
〈真珠〉
〔ホワイト、ブラック、ゴールド、ピンク〕
(6月)
[2.5]
アコヤ貝などの二枚貝やコンク貝の中で育つ。紀元前より貝の中から偶然に見つかる希少品として珍重され、日本の正倉院宝物にも納められている。1893 年に御木本幸吉が養殖に成功した。養殖真珠の多くは真円だがバロックと呼ばれる変形した珠もヨーロッパを中心に人気。
Peridot|ペリドット
【オリビン】
〈オリーブを意味する橄欖石(かんらんせき)〉
〔グリーン〕
(8月)
[6.5-7]
紅海のセントジョンズ島で3500年以上前から産出されていた。ほの暗い照明下で輝くことからイヴニングエメラルドとも呼ばれる。ドイツのドレスデンにある宝飾展示室「緑の丸天井」には大粒のペリドットがはめ込まれた18世紀のザクセン王家の宝物が展示されている。
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Rock Crystal|ロッククリスタル
【クオーツ(石英)】
〈水晶〉
〔無色透明〕
[7]
名前はギリシャ語で氷を意味するクリスタロスに由来。アイスストーンとも呼ばれる。古くはあまりにも硬く凍ったために解けなくなった氷、または水の化石であると信じられていた。カットしやすい素材のため透明ガラスが普及するまではジュエリーだけでなくうつわやレンズなどにも加工され、広く用いられていた。
Ruby|ルビー
【コランダム】
〈紅玉〉
〔レッド〕
(7月)
[9]
語源はラテン語で赤を意味するルベウス。情熱や愛を想起させる色であることから、古代ビルマでは不死身を与え、中世ヨーロッパでは精神の健全を保つ、あるいは未来を予知する力を備えると信じられていた。最高品質のルビーは無処理かつ大粒でピジョンブラッド(鳩の血)と呼ばれる濃いめの黒みがかった赤色のもの。
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Sapphire|サファイア
【コランダム】
〈蒼玉(せいぎょく)〉
〔単にサファイアと呼ぶ場合はブルーサファイアを指すが、ほかにもさまざまな色がある〕
(9月)
[9]
コランダム種の鉱物のうち赤(ルビー)以外の石。ロイヤルブルーの色にちなんで英国王室では数多く所蔵している。故ダイアナ妃の形見のブルーサファイアはウィリアム皇太子からキャサリン妃に婚約指輪として贈られた。
Sardonyx|サードオニックス
【カルセドニー】
〈赤縞瑪瑙(あかしまめのう)〉
〔赤褐色に白い縞模様〕
(8月)
[7]
サードとはギリシア語で茶色のこと。オニックスはラテン語で爪を意味する言葉で、縞目模様が爪の白い部分と似ているため命名された。サードニクスとも呼ぶ。並行に現れる縞模様は、特にインド産の石が色のコントラストが美しい。彫刻を施してカメオに加工されることも多い。
Sphene|スフェーン
【チタナイト】
〈楔石(くさびいし)〉
〔本来は無色だが鉄などの微量成分により緑、黄、茶などさまざま〕
(7月)
[5]
チタンを含む石。名前は結晶の形がくさび状になることからギリシャ語の楔を意味する言葉に由来。色のバリエーションが多くあるが、特に緑色のスフェーンは鮮やかで美しい。屈折率が高くダイヤモンド並みの強いディスパージョン(分散光)を放つ。
Spinel|スピネル
【スピネル】
〈尖晶石(せんしょうせき)〉
〔レッドをはじめブルー、パープル、ピンクなど〕
(8月)
[8]
名前は結晶の先端が尖っているためトゲを意味するラテン語に由来。最古のスピネルはアフガニスタンの紀元前100年頃の仏教徒の墓から発見されたもの。ルビーやサファイアと外観が似ているため鑑別技術が発達していない時代は間違えられることが多かった。
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Tanzanite|タンザナイト
【ゾイサイト】
〈灰簾石(かいれんせき)〉
〔ライラックブルーからサファイアブルー〕
(12月)
[6-7]
1968年に発見地であるキリマンジャロ山のあるタンザニアにちなんでジュエラーのティファニーによってネーミングされ、アメリカを中心に人気が広く高まった。硬度が低く欠けやすいので、ぶつけたりする可能性のあるリングにはカボションカットがおすすめ。
Topaz|トパーズ
【トパーズ】
〈黄玉(おうぎょく)〉
〔無色が最も多いがイエローの人気が高く、ほかにピンク、水色、シェリー酒色などもある〕
(11月)
[8]
スリランカが主な産地だったが18世紀以降はブラジルやウラルからも産出。日本でもかつては滋賀県で産出した。なお、現在市場に出回っているブルートパースはほとんど無色のトパーズに放射線照射で色をつけたものである。
Tourmaline|トルマリン
【トルマリン】
〈熱すると電気を帯びる性質から電気石〉
〔グリーン、ピンク、レッド、ブルー、イエローなど〕
(10月)
[7-7.5]
共通の結晶構造をもつ10以上の石の鉱物グループ名。名前は砂礫(されき・小石のこと)を意味するスリランカのシンハラ族の言葉に由来。近年では希少性の高いネオンカラーのパライバトルマリンやバイカラートルマリンも人気を高めている。
Turquoise|ターコイズ
【ターコイズ】
〈トルコ石〉
〔不透明のブルーや青緑色〕
(12月)
[5-6]
主な産地はイランやアメリカ南部だが、かつてヴェネツィアの商人がトルコ経由でフランスにこの石を持ち込んだ際に「トルコの石」と呼んだことからこの名になった。メソポタミア(現・イラク)では紀元前5000 年のトルコ石のビーズが発見されている。ふたつと同じ網目模様がないのも魅力。
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Zircon|ジルコン
【ジルコン】
〈ヒヤシンスの花を思わせる紫やピンクの結晶もあることから風信子石(ふうしんしせき)〉
〔無色透明、グリーン、ブルーなどさまざま〕
(12月)
[6-7.5]
5世紀頃からお守りや魔除けとして身に着けた記録が残っている。屈折率が高く輝きが強いため無色のものはダイヤモンドの代用品とされてきた。人造石であるキュービック・ジルコニアとは別の石。
*「フィガロジャポン」2023年1月号より抜粋
photography: Masanori Akao, amanaimages text: Tomoko Shimizui collaboration: Zenkoku Hoseki Oroshi-sho Kyodo Kumiai