ブシュロンのハイジュエリー、移りゆく自然を6つの生物多様なコンポジションで表現。

Jewelry 2025.07.27

ハイジュエラーの聖地と呼ばれるヴァンドーム広場に最初にブティックを構えたジュエラーであるブシュロン。年に2回発表するハイジュエリーコレクションのひとつは、カルトブランシュ(白紙委任)と呼ばれ、クリエイティブディレクターのクレール・ショワンヌに文字通り全てを一任されている。彼女は自由にテーマを選び"夢"を具現化するために、ハイジュエリーの世界における慣習や定義から解放されて創造性と革新性にあふれるコレクションを発表しているのだ。それによって造形・素材・技法といったあらゆる面において、ハイジュエリーの限界を超える挑戦と可能性を押し広げる革新を続けている。

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6つのコンポジションが幻想的なグラデーションを描くハイジュエリーコレクション「インパーマネンス」

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新作の発表会場には花道「みささぎ流」家元の片桐功敦が手がけたフラワーアートが飾られていた。

7月上旬、その最新のコレクション「Impermanance(インパーマネンス)がパリでお披露目された。クリエイター冥利に尽きるのではないか、と思わせるコンセプチュアルでユニークな素晴らしいハイジュエリーコレクション。「新作"カルトブランシュ"コレクションにおいて、私は自然の美しさが色褪せる前に、その一瞬を捉えてハイジュエリー作品に閉じ込めたいと考えました」とクレールは語っている。

日本の生け花にインスパイアされたというアートピースのような6つのコンポジション。花、枝、葉、昆虫など22点のハイジュエリーピースで構成されている。花器から花や枝を外して、ブローチやネックレスとして身に着けることができ、アートピースのような存在感とさまざまな方法で身に纏うことができる、マルチウエアラブルなハイジュエリーだ。コンポジションの始まりであるNO.6は光を感じさせるみずみずしい透明感で、次いで白、そして少しずつ黒が翳りをもたらし、最後のコンポジションNO.1では完全に黒となる。「光」を軸として、自然界における植物などの誕生から終焉へという生命のサイクルを象徴し、永続しない(インパーマネント)という無常の観念を表現し、自然がいかに儚く、尊い存在であるかを伝えるのだ。

「私が永遠に結晶化させたいという願いを託した"かけがえのない 一瞬"へのオマージュです」という6つのコンポジション。延べ18,000時間以上に及ぶアトリエの緻密な制作を経て創り上げられた。その実現についてはアトリエに対して、いつもよりさらに要求の度合いが強いものだったとクレールは振り返る。ひとつずつ、紹介していこう。


コンポジションNO.6 チューリップ・ユーカリの枝・トンボ

制作時間:合計1860時間

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チューリップはブローチ、ユーカリはヘアジュエリーまたはブローチとして、トンボはシングルのイヤリングとして着用できる。
チューリップ、ユーカリ、トンボ(WG×ダイヤモンド×ホウケイ酸ガラス×サファイアガラス×MOP×ニチノール) 花器(ホウケイ酸ガラス)

透き通るような繊細で美しいコンポジション。メゾンで愛される象徴的な素材であるロッククリスタルではなく、それ以上に耐熱性と展性に優れるホウケイ酸ガラスが素材として選ばれた。ジュエリーとしては珍しい素材だ。ガラス工芸技術を極めたメゾンの職人たちの手作業で厚さわずか2mmという限界まで薄く加工され、花器の両端に施されたサンドブラスト加工のマットな質感が、植物の茎にセットされたダイヤモンドとともにコンポジションに表情を生み出している。トンボの繊細な翅の厚さはわずか1mm足らず。サファイアガラスとマザーオブパールを重ねることで自然な虹彩がされ、レーザーで翅脈を入れてリアリズムを追求。ホワイトゴールドに彫刻が施されたボディには、ダイヤモンドがあしらわれて優美に仕上げられている。

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コンポジション NO.5 アザミ・カブトムシ

制作時間:合計2,880時間

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大きなアザミは取り外してブローチとして、あるいはバイオ由来素材で作られたコードを取り付けてクロスボディジュエリーとして着用可能。この素材もハイジュエリーとして初の試みだ。小さなアザミはダブルフィンガー リングとして、カブトムシはブローチとして着用できる。
アザミ、カブトムシ(WG×ダイヤモンド×ホワイトセラミックコーティング×透明バイオ由来樹脂×バイオ由来素材) 花器(ホワイトコンポジット)

リアルなサイズの二輪のアザミは、技術の革新と職人の技が結びついて不可能を可能にした素晴らしいジュエリーだ。トゲや鋭い葉のデザインに至るまで驚くほど忠実に再現されている。ディテールまで実にリアルなトゲ状の花冠を実現したのは、バイオ由来樹脂を用いた高解像度3Dプリント技術で、これはハイジュエリーにおいて初の試みだったそうだ。職人にとって課題となったのは、金属の骨組みがない構造にいかにダイヤモンドをセッティングするか、だった。職人は微細構造の小さな凹みに縫い込むというクチュールセッティングという画期的な技法を開発。大きな花には600石以上、小さな花には200石以上のダイヤモンドがセティイングされた。アザミの茎、トゲ、葉はホワイトゴールドで形作られ、セットされたダイヤモンドの上には、ホワイトセラミックコーティングが施されている。葉の裏面にオープンワーク(透かし彫り)による有機的なパターンを施すことで、ダイヤモンドの輝きが引き立てられている。白く輝くアザミに引き寄せられるのは、ダイヤモンドの輝きを纏ったホワイトゴールド製のカブトムシ。そのボディにもホワイトセラミックコーティングが施され、コンポジションは究極の白の世界観で統一された。

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コンポジションNO.4 シクラメン・オーツムギ・毛虫・蝶

制作時間:合計4,279時間

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回転構造が組み込まれたシクラメンは、ブレスレットまたはブローチとして着用可能。オーツムギは、その自然な軽やかさを活かしてヘアジュエリーとして、毛虫はブローチとして、そして、蝶はヘアオーナメントとして着用できる。
シクラメン、オーツムギ、毛虫、蝶(WG×ダイヤモンド×ブラックスピネル×ロッククリスタル×チタン×合成繊維×ナイロンワイヤー×ブラックラッカー×ブラックDLC) 花器(WG×ダイヤモンド)

全面にダイヤモンドがスノーセッティングされたホワイトゴールド製の花器の片側にシクラメン、反対側にオーツムギ、そして毛虫と蝶という自然界の生物多様性を強く印象付けるコンポジションで、ここからは黒がコンポジションに少しずつ姿を見せ始める。技巧における最大のポイントは、シクラメンのホワイトゴールドの花びらにセッティングされた約700石ものローズカットダイヤモンド。シクラメンの花びらの自然なうねりと曲線をなぞるように選ばれたサイズもフォルムもさまざまなダイヤモンドが、まるでステンドグラスのように表情豊かな輝きを見せている。輝きを放つローズカットとラウンドカットのダイヤモンドの配置によって、メタル部分の姿を消すのは、まさにメゾンのサヴォワールフェールの技。花びらの縁に施された艶やかなブラックラッカーとのコントラストで、ダイヤモンドの煌めはより引き立てられている。オーツムギの素材はブラックコーティングのチタンで、その穂先に繊細にあしらわれているのはダイヤモンドだ。穂の内側にはDLC(ダイヤモンドライクカーボン)コーティングによる奥深い光沢が。穂を支えるマットな茎はブラックDLC コーティングにより、繊細さと力強さを兼ね備えている。ホワイトゴールドの花器の上にはう毛虫は、ホワイトゴールドにダイヤモンドと丸みのあるブラックスピネルがあしらわれている。リアルな繊細な毛のディテールは、クリエイティブスタジオで用いられる絵筆からの着想。伸縮可能な構造によって、柔軟な動きも表現できるよう工夫され姿勢を自在に変えることができきる。オーツムギの茎に翅を広げてとまっている蝶は、ホワイトゴールドにスノーセッティングが施されたダイヤモンド、そこにブラックラッカーをあしらったデザインだ。

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コンポジションNO.3 アイリス、藤、クワガタムシ

制作時間:合計4,685時間

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アイリスはショルダーブローチとして、藤はコーム式構造により、ヘアジュエリーもしくはブローチとして、そしてクワガタムシはブローチとして着用できる。
アイリス、藤、クワガタムシ(WG×ダイヤモンド×ホワイトセラミック×チタン×アルミニウム×ブラックスピネル×ロッククリスタル×ホワイト樹脂×マグネット×ブラックDLC) 花器(アルミニウム×ブラックスピネル) 

漆黒の世界に繊細なダイヤモンドの輝きのコントラストが映えるコンポジション。藤の花房が求める堅牢かつ軽量であるという相反する要素の両立もまた職人たちには難題だった。セラミック、チタン、アルミニウムといった軽量素材を巧みに組み合わせ、デザインのボリュームを損なうことなくわずか150gへの軽量化に成功。約100もの独立したパーツから構成される花房は、職人たちの手作業で丁寧に組み立てられ、自然に垂れ下がっている様は本物の藤のよう。葉や花びらにセッティングされたダイヤモンドが作品全体に光のニュアンスを添えている。小さな花びらや蕾にはホワイトセラミックが用いられ、質感の変化がより豊かな表情を引き出している。アイリスの花びらに黒いチタンとダイヤモンドが描くのは、黒と白のコントラスト。花芯はアザミと同じく3Dプリントして成形したバイオ由来樹脂によって構成されて、とてもリアルだ。蕾にはブラックスピネルがあしらわれ、アイリスの葉にはグレイン セッティングされた2列のダイヤモンドと、2粒のロッククリスタルによって朝露が滴るかのようなリアリズムが表現されている。ブラックスピネルをパヴェセッティングしたアルミニウム製の花器には、黒とダイヤモンドの縞模様が愛らしいスカラベ。

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Composition No.2 マグノリア・ナナフシ

制作時間:合計3190時間

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マグノリアはヘッドジュエリーまたはクエスチョンマークネックレスとして着用が可能。ナナフシはコンポジションから取り外し、ブローチとして纏える。
マグノリア、ナナフシ(WG×ダイヤモンド×ブラックセラミックコーティング×シルバー×アルミニウム) 花器

クレールが求めたのは植物本来の姿さながら自由に枝を伸ばすマグノリアのドラマティックな存在感。メゾンの職人たちがマグノリアをスキャンして、枝や花、蕾の細部まで正確に捉えたという。その水平に広がるシルエットのために軽量かつ光沢感のあるアルミニウムとシルバーを使用し、そこにダイヤモンドをスノーセッティングして有機的質感を生み出した。輪郭だけの花弁はブラックセラミックコーティングを施したアルミニウム製で、直線状に並られたダイヤモンドが繊細な輝きを放っている。ホワイトゴールドの花の中心部にはキューレット(ダイヤの尖端)が外向きになるよう上下逆にセッティングを施すという斬新な技術が用いられた。雄しべはブラックロジウム仕上げを施したホワイトゴールドで精緻に彫刻され、そこにダイヤモンドをセット。蕾はローズカットとラウンドブリリアントカットのダイヤモンドがあしらわれたロジウム仕上げのホワイトゴールドだ。マットな質感のブラックコンポジット素材の丸みを帯びた花器からマグノリアの枝に身を伸ばしているのはナナフシ! ロジウム仕上げのホワイトゴールドで造形され、ボディと翅にはグレインセッティングのダイヤモンドがあしらわれ、頭部にはペアシェイプダイヤモンドが輝いている。

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Composition No.1 ポピー・スイートピー・蝶

制作時間:合計2,004時間

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ポピーはヘアオーナメントまたはブローチとして着用可能。4つのスイートピーの花は複数のブローチとして自由にスタイリングを楽しめる。蝶はマグネット式の留め具によって、人の身体に舞い降りたかのようにショルダーブローチとして着用できる。
ポピー、スイートピー、蝶(WG×アベチュリンガラス×ガラス×オニキス×ブラックスピネル×ダイヤモンド×チタン×マグネット×ベンタブラック®(99.965%の可視光を吸収する塗料)×ブラックセラミックコーティング) 花器(ブラックサンドの3Dプリント製) 

自然界の生命のサイクルの移ろいをテーマにしたクリエイション「インパーマネンス」。コンポジションの最後は光が消失する瞬間、生命の終焉を表現している。ポピーの花弁はマットブラックチタンで、内側に葉脈が手彫りされ、表面に施されたのはベンタブラック®という特殊なコーティングだ。これは可視光の99.965%を吸収し、最も完璧な黒を実現するコーティング素材で「無」に溶け込んだような視覚効果をもたらす。こんな革新的な要素が秘められているポピーの花。その花芯にはブラックスピネルの凹凸をあえて見せるように両面でセットされ、わずかに差し込む光を受けて艶やかに輝く。雄しべのゴールドを極限まで細く引き延ばした繊維状の先端には、ブラックスピネルとベゼルセッティングのダイヤモンドがあしらわれている。花の小さな世界にメゾンの卓越したサヴォワールフェールが凝縮されているのだ。スイートピーには3種の素材が用いられている。グラデーション状にブラックスピネルがセッティングされているしなやかな巻きひげはチタン。花びら部分は長時間かけて丁寧に彫刻されたオニキスと黒のアベンチュリンガラスで繊細な質感だ。ほかの花びらはブラックチタンで作られ、微細なテクスチャーを手作業で加えることで、奥行きある黒のハーモニーが完成。蝶のボディはマットブラックチタンにブラックスピネルをあしらい、翅には半透明のブラックガラスが用いられている。翅にポリッシュ仕上げで入れられた筋模様が、マットな質感とのコントラストで繊細で幻想的な透明感を生み出すのだ。なおブラックガラスは純粋で深みのある黒を実現するために特別に開発された素材だという。このコンポジションを支える花器もまた、ブラックサンド(黒砂)を用いて3Dプリントで制作された独創的な作品である。

問い合わせ先:
ブシュロン クライアントサービス
0120-230-441(フリーダイヤル)
https://www.boucheron.com/ja_jp/

 

editing: Mariko Omura

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