トリンドル玲奈が髪を切って手に入れた、新しい価値観。【私のパリシック。vol.1 トリンドル玲奈】
Fashion 2024.06.10
自分らしく人生を謳歌するパリジェンヌの生き方には、いまの私たちが力強く生きるためのヒントが詰まっている。そんなパリジェンヌのスタイルに共鳴するアイコンにフォーカス。初回は、ヘアをベリーショートにしたトリンドル玲奈が彩り豊かな人生を築くための考え方を語る。
2009年にモデルとしてデビューしたトリンドル玲奈は、32歳を迎えた今年、ヘアチェンジをして潔いベリーショートに。「みんなと一緒がいいタイプだった」と語る彼女が髪を切って手に入れた、新しい価値観とは?
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"ベリーショートはその人の女性らしさを
際立たせるヘアスタイル"
─今年3月に大胆なヘアカットをしたトリンドルさん。ベリーショートにした理由を教えてください。
実は2年ほど前にもショートカットにしようと思ったことがありました。その時はお仕事の都合でできなかったのですが、今年に入ってから、お仕事でもプライベートでも髪をアップにすることが多くて、もうこのうしろ髪はいらないかもと思って(笑)。もう一度、「髪をこんな感じで切りたいです」と事務所に相談をしてみることにしました。そうしたら今回はトントン拍子に話が進んで、念願のベリーショートにすることになりました。
─「こんな感じ」というイメージの中に映画『勝手にしやがれ』のジーン・セバーグの写真があったとうかがいました。彼女のスタイルに惹かれた理由は?
知人に「ジーン・セバーグみたいなスタイルが似合うと思うよ」と言われ、そこから映画をいくつか観ました。その中に『勝手にしやがれ』もあって、はっとする美しさに心を奪われてしまいました。髪は短いのに誰よりも女性らしさを感じて、ベリーショートはその人の女性らしさや美しさを際立たせるヘアスタイルなんだ、と。そう思うと余計に私も挑戦したくなりました。
参考にしたイメージのひとつとなったのは映画『勝手にしやがれ』でジーン・セバーグが演じたパトリシア・フランキーニ。
─髪を切ってからしばらく経ちましたが、ご自身の中で感じている変化はありますか。
いままでは、メンズっぽい服を好んで着ていたのですが、前が開いて肌が見える服やフリルやガーリーなデザインのあるブラウスがしっくりくると思うようになりました。メイクもいままでよりアイラインをしっかり入れて、女性らしいポイントをつくることが増えたと思います。振り返ってみると、そういったスタイルやヘアメイクを好んでしていた時期もあったのですが、年齢や流行とともにミニマルに。ヘアチェンジをきっかけに、もともと好きだった服やメイクがまた好きになっている気がします。
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"髪を切って、いままで憧れていた
考え方に自然となれた"
─心の変化はいかがですか。
内面も外見も含めて"軽やか"という言葉がぴったり! もともと私は、何をやるにしてもみんなと一緒がいいと思う性格。けれど、ここまでショートだとそもそもが人と違うので、同じにしようと思ってもそうはならなくて(笑)、みんなと一緒じゃなくてもいいと思えるようになりました。髪を切る前は、まわりからどんな反応があるか怖い気持ちもあったのですが、実際に髪を切った後はまわりの反応はどうでもよくなって......。ヘアカットがきっかけで「みんなと一緒がいい」という気持ちを自然と手放すことができた。過去の自分の性格が嫌だとか否定する気持ちは全くないのですが、いままで憧れていた考え方に自然となれたのは年齢的にもよかったと思っています。
"ファッションだけで独立せず、その人の生き方と
結びついているのがパリシックなスタイル"
─今日は、ストライプのシャツをパリジェンヌさながらノンシャランに着こなしていただきました。トリンドルさんはパリシックと聞いて、どのようなスタイルを思い浮かべますか。
パリには一定期間アパルトマンを借りて、暮らすように旅をすることがあります。そこで見る街行くパリジェンヌたちは、おしゃれだけどそのおしゃれを自分のものにしている感じがするんです。自分はこういう顔だから、こういう骨格だから、こういうものが好きだからと、"自分"に誇りを持って選んでいる感じがするから、服がその人に馴染んでいるんですよね。流行りだからではなくて、自分にはこれが似合うから着る。ファッションが独立せず、その人の生き方と結びついているのがパリシックなスタイルだと思います。
─トリンドルさんが思う"豊かさ"とはどのようなものでしょうか。
いま自分に持っている素材やものを大切にできること。誰かのマネをしようと思っても、持っているものが違うのだから、自分の個性や素材を生かす方法を探す方がいい。そういう積み重ねは、自分を好きになれるきっかけにもなると思うから、自然と心も豊かになっていく。物質的には、自然やグリーンが生活に少しでもあるといつもの景色が豊かに見える気がします。
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─日常生活の中に自然を感じられる場所はありますか。
自宅のベランダには植物がいくつかあります。もともとは何もなかったのですが、植物を置いてみたら季節によって花が咲いたり、カーテン越しにグリーンの影が入ってきたり、それだけでなんだか可愛らしいと思えて、癒されています。
─手入れもご自身でされるんですか。
お手入れは、ほぼ夫の担当です(笑)。でも、私もたまにお水をあげます(笑)。
─年明けには結婚を発表されましたよね。おめでとうございます! 結婚をしてから感じている変化はありますか。
髪を切る時も、ヘアスタイルの参考としてオードリー・ヘプバーンやジーン・セバーグの画像を見ていたら「ミア・ファローも可愛いよ」と写真を集めて「こういう感じも素敵じゃない?」と言ってくれて......。もし、髪を切って世間の人にちょっとないなと思われたとしても、パートナーがいいって言ってくれるなら、とりあえずいいかと思えたんです。人生の心強い応援団ができた気持ちです。
いまの時代、ひとりでも生きていけるけど、逆に結婚したからといって縛られるわけでもない。私は、ひとりでいることがあまり得意ではないので、家族がいて自分が安心できる環境があるからこそいまのフィールドで頑張れるんだと思っています。ベランダに置く植物も、多分ひとりだったら何もしなかったし、あんまり凝り過ぎても引っ越しの時大変かな、と感じていたと思うのですが、夫は日常の何気ないところに豊かさを見つけられる人。嬉しい気持ちや素敵だと思う感覚をシェアできたり、支え合えたりできることで、私の中で新しい発見がたくさんあります。
"人と比べず、自分にとっていいものだけを
取り入れていきたい"
─これから年齢を重ねていく中で、変わらずに大切にしたい思いや価値観はありますか。
髪を切ってから、まわりと比べてもしょうがないなと思ったこの価値観は、年齢を重ねても忘れず持っていたいものです。おばあちゃんになって、隣のお家の庭の方が可愛いなとか、果物がたくさん穫れていいなと思っても、人と比べず、自分にとっていいものだけを取り入れるようにしたいです。
【トリンドル玲奈着用】シャツ(メンズアイテム)¥39,600/マーガレット・ハウエル その他スタイリスト私物
トリンドル玲奈
2009年、モデルとして活動をスタート。2012年にドラマで俳優デビュー。昨年は初舞台となる「OUT OF ORDER」に出演し、俳優としてますます活躍の幅を広げている。最近の出演作にドラマ「不適切にもほどがある!」「イップス」がある。
photography: Sakai De Jun, shutterstock styling: Kotomi Shibahara hair & makeup: Tomoe Nakayama(Flare)