山頂にいたった人は、そこから見下ろす風景を好みます。山頂それ自体にあるもののことは、あまり語られません。登頂を記念する写真には、標高や山の名前を書いた山頂標識は映り込んでいても、大切なのはその向こうに広がる空や、ほかの山の峰の風景なのではないかと思います。山頂にいたって足元を見ても、それが山頂だと示すようなものは、多分あまり見当たりません。でもそこは、山頂なのです。
今週の貴方の世界には、ちょうどそんな感じがあります。貴方が見ているものは荷物の中身とか、足元にあるものとか、一緒にいる誰かの表情とか、まさに「目の前にあるもの」なので、そこが「山の頂上」だということが、あまり意識に上らないのです。でも、今週の貴方はたしかに、ひとつのてっぺんにたどり着きます。貴方が今集中して見つめている「物事の中身」は、そのことと少なからず関係しています。今そこに上りつめたからこそ、その中身があり、その人がいて、その話ができている、ということなのだと思います。
非常に中身の濃い時間で、自分の心と他者の心の中にぎゅっとつまったものを直接扱うような場面がたくさんあるでしょう。同時に、そこはひとつの到達点で、そこに来た人にしかわからないものも、たくさんあるはずなのです。