今の時代は不思議なもので、人と人とがなかなか会わなくなったのに、なぜか「コミュニケーション!コミュニケーション!」と、対話が重視されます。容易に同じ時間をともにしなくなったからこそ、なんでも言葉で説明しなければならない、ということなのかもしれません。
それでも、長年仕事をともにしてきた相手とか、付き合った「相方」のような存在ならば、ほとんどのことは言語化しなくてもわかるようになったりします。言語化しなくても通じている、ということが自覚できないほど、その「伝達」は自然で、身体の一部です。
いつから「言語化しなくても通じるようになった」のか。それはグラデーション的な変化で、「昨日からです」のようなものではないだろうと思います。でも、ある種の象徴的な出来事がきっかけとなり「その時から、相手の気持ちがなんとなくわかるようになりました」といった語りは、よく耳にします。もしかすると貴方の世界にも今週、そんな出来事が起こるかもしれません。人間と人間のあいだにある絶対的な境界線、それを曖昧にすり抜けるためのパスポートのようなものが、手に入るかもしれません。