フランス一般家庭に浸透した、オーガニック食品の現在。

Gourmet 2019.04.23

消費者の意識の高まりとよりよい商品の発売により、オーガニック食品はフランス人の生活に根ざしはじめた。大手スーパーも取り扱いを開始している。地球環境に優しい食品への意識の高まりは、全国レベルへと拡大するのだろうか?

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フランス人の71%が少なくとも月1回はオーガニック食品を消費している。Photo: iStock

「脂っこい」、「塩辛い」、「甘すぎる」、「添加物が多すぎる」、「農薬を使いすぎている」……ここ何年かの間、加工品や量販店で売られるクッキーなどを食べた時に、こんな表現を使ったことはないだろうか。フランス人の88%(*1)がそうであるように、食べるものを以前よりも意識するという機運が高まっている。

Agence Bio(フランス有機農法発展振興局)は先ごろ、フランス人の71%が少なくとも月1回はオーガニック食品を消費していると発表したばかりだ。多くの人がNutri-Score(フランスにおける食品栄養表示の新制度)を見て、そのラベルの付いた製品をできるだけ選び、スマートフォンアプリYukaで身体によいかどうかをチェックしている。

開始数週間が経過したランディ・ヴェール(緑色の月曜日)キャンペーンでは、ローラン・ベーグ氏とニコラ・トライク氏のふたりのフランス人研究者が中心となり、イザベル・アジャーニやジュリエット・ビノシュを含む500人の著名人とともに、肉や魚を食べない月曜日の実施を試みはじめた。

しかしそれで十分だろうか? きっと違うだろう。しかし、どのようによりよく食べ、自分なりのルールを作ったらよいだろう? フランスのような裕福な国では、どのように食生活を通じて、健康被害の問題(たとえば、森林減少、多様な生態系の変化、心血管疾患のリスク増加、糖尿病、ガン、肥満など)に取り組んでいけばよいだろうか?

*1 2019年2月にAgence Bioが行った年次調査。

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まずは自分が食べているものについて知る

Agence Bioによると、フランス人の12%のみが毎日オーガニック製品を消費している。消費者の84%は価格が高すぎると回答しており、その結果には驚きはない。一方、フランス人の62%が「商品はどこから来ているのかという疑問」を持っている。

人類学者で食物社会学者のクロード・フィッシュラー氏は、頻繁に食べたくなるものは新しいものではないということを訴える。 彼はヒポクラテスを引用し(「汝の食事を薬とし、汝の薬は食事とせよ」)、そしてこう説明する。

「私たちは論理的に、何を食べているのか知りたいのです。自分が誰であるかを知るためには自分が何を食べているかを知ること、それは具現化の基本です。文明とともにこの分野においても多くの選択肢、たとえば、ロカボア、ベジタリアン、ヴィーガン、フレクシリア(準菜食主義)、地産地消を支える消費などがあります」

オーガニックはおいくら?

フィッシュラー氏は世間に広がるさまざまな噂には慎重で、ときには手厳しい意見を述べる。同氏は、私たちの平均寿命が1946年以来、20年も増加しており、それは今後も伸び続けると主張している。 彼は、「食生活の見直しは多くの人々にとって実践するのが難しい。一方、もし労働階級の人々が高価格帯の手間暇かけて育てた野菜を消費するようになると、それは豊かさに繋がっていく」と指摘する。

ディレクターで環境活動家でもあるシリル・ディオン氏は、消費習慣の見直しのために日々奮闘している。「オーガニック食品を消費することは必ずしもお金がかかるとはかぎりません。生産者から直接購入すれば、スーパーマーケットで購入するよりも安くすみます」と述べる。また同氏は、「フランスでは、収入よりも教育レベルの高さが食習慣の高さに比例しています」と語る。

ジェネレーションZの食卓

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常に進化し続ける商品と消費者のニーズにより、オーガニック食品はフランス人の日常生活に根ざしつつある。全国レベルで地球環境に優しい食品が普及するだろうか?
Photo: iStock

もっとよい食生活を送りたいという気持ちはいつ、どのように決まるのだろう? 2015年に15歳以上の500名を対象に行った調査(調査会社TolunaがAgroParisTechの依頼を受けて行った調査)によると、50歳以上の女性は肉の消費が数年間で激減している。35歳未満の男性は増加傾向だ。

一方、15〜24歳はそれと対照的である。肉の消費は平均以上であるものの、ベジタリアンも増加傾向なのだ。Agence Bioによると、これらの若いジェネレーションZ(1990年代後半以降から2010年の間に生まれた世代)の消費者はオーガニック食品の最も高い支持層である。エシカルで社会的な理由で支持し、毎日高いお金を払ってでもオーガニック食品を購入している。

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消費の拡大により、流通も変化

食品業界もこのオーガニック食品の人気の高まりには着目している。かつては価格が最も重要と思われていた時代もあったが、今日では食品の安全性やトレーサビリティ(商品の流通経路が追跡可能であること)などが購入の重要なポイントとなり、エシカルで社会的責任を意識した商品へのニーズが高まっている。

18年にはオーガニック食品の市場は93億ユーロで、毎年13%程度増加し続けている。その商品の半分はスーパーマーケットで販売され、半分はマルシェなどで販売されている。

「オーガニック食品に力を入れるスーパーマーケット、仏カルフールも転換期を迎えています。05年以来、自社ブランドでオーガニック食品を提案し続けています」と同ブランドのディレクターであり、La Vie Claire(フランスのオーガニックスーパーマーケット)元ゼネラルマネージャーでもあるブノワ・ソワリー氏は言う。

17年7月以来、カルフール・グループの会長を務めているアレクサンダー・ボンパール氏は、取り扱い食品の見直しを戦略の重要な軸としている。18年9月以降、テレビ広告でAct for Foodプログラムを開始し、「私たちはすべてベストなものを提供します」というスローガンを掲げている。

本プログラムはさまざまなことを実施している。たとえば、農家がオーガニック食品生産に移行するためのサポートを行ったり、全233店鋪中23店鋪のオーガニック食品専門店をオープンしたり、大量供給による販売拡大をしたり、100以上の疑問視される成分を含む商品を販売禁止したりしている。

90年末以降、仏スーパーマーケットのモノプリ(Monoprix)も持続可能なオーガニック食品や近隣で生産される食品を積極的に販売している。E・ルクレール(E.Leclerc)もまた8年前から自社オーガニックブランドBio villageを販売している。そして本年度、リーダープライス(Leader Price)は、自社のオーガニック商品の生産を2倍に増やした。

家から近いオーガニック

フランスの都心部では、フランス人の多くが、ナチュラリア(Naturalia)、ビオセボン(Bio C'Bon)、またはビオコープ(Biocoop)ネットワークなどのオーガニック専門店に足を運んでいる。18年prix Madame Figaro /Business with Attitude(毎年マダムフィガロが選ぶビジネスパーソンに贈られる賞)のファイナリストでもある、エルサ・ハーマル氏が2年前に共同設立したEpiceryのようなネットスーパーで購入する人も多い。

「Epiceryのアプリを使えば、近隣の職人さんが作った質の高い商品を購入できるのよ」とある29歳の女性は述べる。 すでに約5万人がダウンロードしており、Monoprix(Casino Group)が同社に出資している。

「Epiceryのおかげで、一部のトレーダーは売り上げを伸ばしました。私たちのプラットフォームでは、人間がサービスの中心ですし、最も重要です」とハーマル氏は言う。もしくは、フィッシュラー氏が前述したとおり、「自分が誰であるかを知るためには自分が何を食べているかを知ること」が重要かもしれない。

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texte : Hélène Brunet-Rivaillon (madame.lefigaro.fr), traduction : Hanae Yamaguchi

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