「リンゴはダイエットの味方」は本当か。

Gourmet 2019.06.14

英語には「An apple a day keeps the doctor away」という諺がある。すなわち、「1日1個のリンゴで医者知らず」。食欲を抑制し、ダイエットに役立つ優れた健康食品と言われるリンゴ。でも本当にリンゴは“スーパー食材”なのだろうか? リンゴにまつわる5つの定説について、専門家が検証する(残留農薬に関する記述は、フランスの一般的なリンゴ栽培方法に基づくもの)。

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美味しいだけでなく、さまざまな効用があると言われるリンゴ。photo:iStock

1.リンゴはダイエットの強い味方。

本当。だが注意点も。昔からリンゴにはダイエット効果があると言われている。リンゴは低カロリー(100gあたり54kcal)で、「ほかの果物に比べてGI値(グリセミック指数=血糖値の上昇度を示す指標)が低めで、糖質が血糖値に及ぼす影響が小さい食品です」と、栄養士のオリヴィア・シェプスは言う。

また、独特の食感のおかげで食べるのに時間がかかるため、少量で満腹感が得られる。「リンゴを味わうためにはよく噛む必要があるので、結果的に食べることに意識が集中するのです」とシェプスは説明する。

コンポートやジュースにすると硬さが失われるだけでなく、糖分が増加するため、生のまま食べる方がいい。また、リンゴを食べれば痩せられるという考えは信用できない。「果物である以上、糖質が含まれています。食べ過ぎには気をつけましょう」とシェプスは言う。一方、「果糖を過剰に摂取すると、脂肪肝など肝臓疾患の原因となります」と注意を促すのは、『Le guide des aliments contre les idées reçues(既成概念にとらわれない食品ガイド)』の著者で、生物学者のシルヴァン・デュヴァルだ。健康のため、1日に5種類の果物・野菜を摂取しようと言われるが、リンゴもこの範囲内で摂るといい。

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2.リンゴは食欲を抑制する。

本当。『Halte aux aliments ultra-transformés. Mangeons vrai(超加工食品にストップ。正しい食のすすめ)』の著者で、疾病予防のためのホリスティックな食事療法を研究するアントニー・ファルデはこのように指摘する。「既成概念の多くは人々の経験に基づいたもの。リンゴを食べるとかなりの満腹感が得られることは、多くの人が認める事実だということです」

この満腹感は、リンゴに含まれる食物繊維のペクチンによって引き起こされる。「ペクチンは消化管内の水分を吸収して膨張するため、胃の中で嵩が増します。食欲を抑える効果があるのはそのためです」と、ユニ・ラ・サール理工科学院(ボーヴェ)のフィリップ・プイヤール教授は説明する。

上昇した血糖値が下降することは、疲労感がや空腹感の原因になる。だがリンゴは糖質の少ない果物なので、リンゴを食べても血糖値はあまり上がらない。「リンゴは満腹感を得やすく、しかも食べた後すぐにお腹が空くということもありません」と栄養学者のシェプスは言う。

3.リンゴは歯磨きの代わりになる。

本当。ボルドーの歯科医リュシー・グランによると、「リンゴは虫歯を予防する果物です。リンゴに含まれる抗酸化物質のポリフェノールが歯に被膜を作り、歯石や細菌が歯に付くのを防ぎます。リンゴに適度に含まれている酸にも、細菌の働きを抑制する効果があります」

ゴールデンやグラニーなど、歯ごたえのある種類の方が歯の衛生には効果がある。「硬いものをかじると、咀嚼器官が刺激されて自己浄化作用が機能しやすくなります」と歯科医のグランは説明する。言うまでもなく、リンゴを食べれば歯磨きをしなくていいというわけではない。

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4.リンゴは医者知らずの果物。

本当。ただし注意点もある。リンゴは間違いなく「身体にいい」果物だ。ビタミンCが含まれているだけではない。「リンゴには健康維持に欠かせないミネラルや栄養素が含まれています」と、前述のプイヤール教授は説明する。リンゴにはビタミンA、マグネシウム、鉄分なども含まれている。教授によると、リンゴの抗酸化物質(50%は皮の部分に含まれている)には、とりわけ心血管疾患のリスクを減らす効果があるという。「また、呼吸器系の炎症を起こりにくくするので、喘息の改善にも。1週間に2〜5個リンゴを食べるだけで、喘息の症状が緩和されると言われています」

とはいえ、リンゴは奇跡の食べ物ではないことも知っておこう。「コレステロールを下げる効果がある食物繊維は、あらゆる果物に含まれています。リンゴだけが特別というわけではありません」と、食事療法研究者のファルデは言う。「それに抗酸化物質が最も多く含まれる果物は、リンゴではなくクランベリーやブルーベリー、フランボワーズなど、赤や紫の果物です」

5.リンゴは残留農薬が最も多い果物のひとつ。

本当。プイヤール教授によると、「リンゴは農薬が最も多く使用されている果物。40種類もの農薬が皮の下3〜5ミリの部分に浸透します」。水道の水で洗ったぐらいではどうにもならないと生物学者のシルヴァン・デュヴァルは強調する。「果物の表面についているのは油性の農薬ですから、水洗いでは落ちません」

ではどうしたらいいか。デュヴァルは重曹を溶かした水に2分間、リンゴを浸けるようすすめる。プイヤール教授のおすすめは、5%に薄めた酢水で洗うことだ。

有機栽培のリンゴもこうした方法で洗うのが望ましい。「大気を介したり、店頭で客が触れたりすることによる汚染もあり得るからです」とプイヤール教授は言う。有機栽培ではないリンゴは、洗った後に皮を剥くことが肝要だ。

texte:Raïnat Aliloiffa (madame.lefigaro.fr)

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