今日のプチデジュネ、デジュネ、ディネ。#04 我が家のエピスリーから「アンチ・ガスピ」ご飯!

Gourmet 2020.05.03

外出自粛が続き、誰もがおうちご飯を作る機会が増えているはず。
料理上手なあの人は、どんなおうちご飯を作っている? フィガロでおなじみの料理家やフードコーディネーター、フードライターたちが、とある1日のプチデジュネ(朝食)、デジュネ(昼食)、ディネ(夕食)を紹介します。今回は「パリのマルシェとレシピ。」を連載中、料理クリエイターのHARADA SACHIYOさんです。


写真・文/HARADA SACHIYO(料理クリエイター

パリの外出制限が始まる前に、あらためてキッチンの棚や2つある冷蔵庫をチェックしてみて衝撃。
穀物、豆、粉類、乾物などなど、もう2~3ヵ月は籠城できそうな量です。
そんなわけで、これはおいしく食べながら整理整頓のチャンス! すべて家にあるものを使った、ある日の食事をご紹介します。

petit déjeuner

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目覚めにレモン水を飲んでから、濃い目の煎茶と白玉のお汁粉。
昔、マクロビをやっていた頃に、発芽する(上に伸びる)玄米を朝食べるとポジティブな気分になれると聞いてから、よく玄米かゆを食べていましたが、豆も同じく元気が出るもの。
小豆は血を作る食べ物として中国では女性が月経の後に食すそうですが、これも古来からのパワーフードですね。

冷蔵庫には父が北海道の家庭菜園で作って持たせてくれた小豆や黒豆がたくさん! 畑の肥料には近くのお豆腐屋さんから出る大量のおからを入れているそうで、不思議なリサイクルで育った豆は甘みがあるので、お砂糖は少しだけ。

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小豆や黒豆は鋳物の鍋を使い重曹をほんの少し入れて煮ると、短時間でふっくら炊き上がります。砂糖は精製されていない黒糖を。(フランスではサトウキビの未精製の砂糖)煮汁は祖母が「咳の薬」と呼んでいたので、豆乳ラテにしていただきます。
うつわ:@asa_utsuwa 小皿:@atelier_aonoto

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冷めたら、このように1食分を包み冷凍しておくと便利。朝や小腹が空いた時にさっと解凍していただきます。

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déjeuner

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お昼は、冷蔵庫からブルターニュ名産の蕎麦粉が出てきたので、ハム、チーズと卵でクラシックなガレットを。シードルが欲しいところだけど、代わりにホットレモネード。

フランス人に語らせると、「ガレット生地はやっぱりビール入りでしょう」とか「生地は一晩寝かせないとね」とか、わが家は卵なし、いや有りでしょうと、関西人のお好み焼きのごとく、うんちくが始まりますが、私が好きなのは粉が旨ければ水と塩だけを入れたもの。

子どもの頃、祖母が作るおやつといえば、丼に蕎麦粉、熱湯を注いで豪快にかき混ぜ、砂糖をかけた蕎麦がき。ケーキが食べたい孫にとっては、「またこれだ……」とがっくりしたものですが、名産地・十勝の蕎麦粉と甜菜糖、名水百選の支笏湖源泉の井戸水から作ったものは、いま思うと、とても贅沢なものでした。

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dîner

夜は、またまたお宝発掘! スペインのイカ墨ペーストが出てきたので、はて、何を作ろうかな??

こうも出かけられないと、頭の中には「空想レストラン」ができあがってきます。
あそこの料理がおいしかったなあ……あれがまた食べたい!と時々思い出すのは、かつて、9区の女王と言われた伝説の女料理人Olympe Versini(オランプ・ヴェルシニ)の料理。その店「Casa Olympe(カサ・オランプ)」の魚介のブイヨンで炊き上げたフィデウア(パスタのパエリア)。おいしい出汁を吸った極細パスタ、仕上げにオーブンでかりっと焼いた香ばしさが忘れられない。

■イカ墨のフィデウア(パスタのパエリア)

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ー 材料 2人分

極細パスタ(写真はCheveux d’angeというショートパスタを使用、もしくは手持ちのパスタを2㎝くらいに折る)120g
湯 350cc
冷凍イカ 150g
玉ネギのみじん切り 1個分
ニンニクのみじん切り 1片分
オリーブオイル 大さじ2
イカ墨 小さじ1
日本酒(またはワイン) 大さじ1
固形ブイヨン 1個
粗挽き胡椒、干したミニトマト、ハーブ、オレンジの皮オイル漬け少々


ー 作り方

1.フライパンにオリーブオイル大さじ1を入れてイカをサッと炒めてから取り出す。
2.オリーブオイル大さじ1を加えて、ニンニクを入れて香りが出たら玉ネギを加えて炒める。
3.湯、イカ墨、固形ブイヨンを加えてよく溶かし沸騰したところにパスタを入れる。パスタの茹で上がり時間を目安に煮る。
4.ほぼ火が通ったところにイカを戻して、日本酒を振りかけ火からおろし、粗挽き胡椒、ハーブ、干してあったミニトマト、オレンジの皮を飾る(冷凍庫にあった生唐辛子をさっと焼いてのせました)。イカ墨がなければ刻んだトマト、またはトマトジュース少々入れてもおいしい。

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ビオのオレンジがあったので、皮を刻んでオイル漬けを作ってみました。少し置いて蓋を開けるとニュートラルなグレープシードオイルにオレンジの香りが移って爽やか。サラダや焼き魚、お菓子などにもどうぞ(保存は冷蔵庫で)。 

タイトルの「Anti Gaspi(アンチ・ガスピ)」というのは、仏語でGaspillage(ガスピアージュ、無駄)。フランスでも食品の賞味期限切れやまとめ買いをして腐らせ廃棄するのはやめましょう! という呼びかけが盛んに。合わせて政府からもZéro Déchet(ゼロ・デシェ、ゴミ・ゼロ)運動の取り組みが始まっています。

最近では、容器持参で必要なものだけを買うショップ、地球環境に優しく食材を無駄なく使い切る料理のレシピやリサイクル・クリエイションの本も続々と出ています。

私も当分アンチ・ガスピ運動を楽しめそうです!

SACHIYO HARADA
料理クリエイター

長い間モードの仕事に携わった後、2003年に渡仏。料理学校でフランス料理のCAP(職業適性国家資格)を取得。 パリで日本料理教室やデモンストレーション、東京でフランス料理教室を開催。フランスの料理専門誌や料理本で、レシピ&スタイリングを担当。2016年春、ベジタリアン向けの料理本『LA CUISINE VEGETARIENNE』をフランス全土と海外県、ベルギー、スイス、イギリスなどのヨーロッパ各地で発売。この連載をまとめた『パリのマルシェを歩く』(CCCメディアハウス刊)が発売中。
Instagram : @haradasachiyo

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photos et texte : SACHIYO HARADA

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