器のことをもっと知りたくて「うつわディクショナリー」発売。

Interiors 2018.07.26

madameFIGARO.jpで連載中の「うつわディクショナリー」が書籍になりました。
うつわ作家が多くの人を虜にする日常のうつわを生み出せる理由は、どこにあるのか。作り手の方とお話をすることでそれを探ってきた著者の衣奈彩子さんに、本についてあれこれ聞きました。

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「うつわディクショナリー」 衣奈彩子著 CCCメディアハウス刊 ¥1,728 Amazon

Q:うつわのどんなところに惹かれたのですか?

母がうつわ好きで献立に合わせて盛り皿も取り皿も変えるような食卓で育ったので、作家ものに限らず、うつわを選んで使う意識はあったと思います。手作りのものにとくに惹かれたのは、そこに人が見えるからですね。ファッションでもインテリアでも、背景に作る人の営みや生き方を感じるとぐっとのめり込むところがあります。作家さんは、この先、何十年も仕事をしていく。ということは「ずっと作品を見せていただけるのだ!」と思ったら、何ともいえず嬉しい気持ちになり、うつわ作家さんとその作品を伝えることをライフワークにできたらと思うようになりました。

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Q:今回の書籍は、連載の同様、作家へのインタビュー形式でまとめられていますが、作家のリアルな声を伝えたいと思われた理由を教えて下さい。

私は「このうつわは、どうやって作っているの?」とか「なぜこんな素敵なかたちができたの?」とか、目の前のものが作られた過程を根こそぎ知りたくなる性分で、展示会に作家さんがいらしたら、仕事とは関係なく、お客さんとして気軽に話しかけさせてもらうことが多いんですね。そうすると、自分と近い食生活をしていたり、好きなものが似ていたり、モノ以外の発見がすごく多いことに気づいて。うつわがより愛おしくなりました。だけど、お買い物に来たらうつわを選ぶことに集中したい方もいるだろうし、作家さんに何を聞いたらいいか分からないと言う友人もいて。お節介かもしれないのですが、私がお話を聞いて文字に残せたらいいのかなと思ったんです。

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Q:数多くのうつわ作家の方々にインタビューをしてきて、いちばん、感銘したことを教えて下さい。

なんといったらいいでしょう。皆さん、とても献身的なんですよね。作風は人それぞれですが、そのうつわによって使う人が豊かな時間を持ってくれるようにと、気持ちを込めて作っていることは共通しています。シンプルに感動します。

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Q:この数年、うつわに何か目立った傾向はありますか?

やさしい色のバリエーションや洋皿のかたちをしたものが増えているかな、と思います。日本語には「うつわの大きい人」というような表現がありますが、現代作家のうつわは、まさに「うつわの大きいもの」という感じ。人々の異なるテイストや生活へのこだわりを大らかに受けとめる新しい表現が生まれていると感じます。使う人が「うつわはこうでなくては」という先入観なく好きなように使いこなしていることも、作り手にいい刺激を与えているのかもしれません。

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Q:この本は、うつわ用語のディクショナリーにもなっていますね。

はい。専門的なことってちょっと知るとぐっと世界が広がりますよね。でも「ちょっとで十分」というところもあると思うので、それくらいの気持ちで気軽に活用してもらえる用語集を作りました。うつわ作家とうつわ用語のディクショナリーとして、装丁は辞書っぽく。カバーも布のような手触りのあるものにしていただきました。

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Q:はじめて作家もののうつわを手に入れたいとき、何を、どういう目で、選んだらいいでしょうか。

それはずばり「自分の食卓に聞け」ですね。よく作る料理や好きな献立を盛り付けることを想像して「いいかも」「合うかも」と思ったものを選ぶのが正解なはず。忙しくてお料理をしない人なら朝一杯のコーヒーを美味しくするマグカップを探せばいいし、お酒が好きならビールにも日本酒にも使えるグラスを狙う、花が好きなら花器にもコップにもできるフリーカップを選んでもいいですね。その後は、服をコーディネートするみたいにそのうつわと相性のいいものをすこしずつ増やしていくと、食器棚が自然とまとまっていくと思います。多様性があるのが、現代のうつわのいいところ。ファッションやインテリアの好みも含めた自分のスタイルに通ずるものが、必ず存在するんです。まずは、ふらりとお店に足を運んでみてもらえたら。この本には、巻末にShop & Galleryリストもありますよ。

Q:作家もののうつわをふだん使いにしたいとき、手入れの仕方やしまい方で気を付けるべきことはありますか?

食洗機にかけるのは難しいことが多いですね。洗ったうつわは、しっかり拭いてしばらく置き、完全に乾燥してからしまうとカビなどを防げるといわれますが、そんなに神経質にならなくても大丈夫なことが多いです。使うことで汚れたり古びていくならそれも魅力的ですよね。私の場合は、食器拭きという家事があまり好きではないので、うつわによっては、手洗いした後に食洗機の「乾燥コース」で乾かしています。迷ったら、お店の方や作家さんに取り扱い方法を聞くのがよいと思います。そういう質問から別の話題に発展することもありそう。ぜひ、お話してみてください。

最後に書籍でご紹介した作り手24人の作品を抜粋してご紹介します。

Profile
衣奈彩子
ライター、エディター
「フィガロジャポン」編集部を経て独立。うつわを中心に工芸、インテリア、雑貨など暮らしにまつわる記事を執筆。うつわと食を愉しむ提案をするUTSU-WA?主宰。
http://enasaiko.com/
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