ル・コルビュジエ meetsブルレック。
南仏マルセイユの「ユニテ」にて

「......日差しは日増しに強くなり、日の暮れた後も、大通りにある大理石のベンチは、熱を持っている。」(『ムナーリのことば』ブルーノ・ムナーリ、阿部雅世訳、平凡社)

そんなムナーリのことばを思い出しながら帰宅した先週、ブルレック兄弟からのメールを受信。このデザイン・ジャーナルにも何度か登場してくれている Ronan & Erwan Bouroullec(ロナン&エルワン・ブルレック)の最新情報です。今回の舞台は、この時期、すでに夏の光が燦々と輝いているはずの、南仏マルセイユ。

B1.jpgピロティ、屋上庭園、ブリーズソレイユ(日よけ)などコルビュジエ建築の特色が目にできるユニテ・ダビタシオン。戦後の住宅問題解決のために政府から依頼された垂直にそびえる街としても有名。
Photo © Studio Bouroullec + FLC ADAGP


ル・コルビュジエが提唱した「Radiant City(輝く都市)」の実践例であり、「垂直にそびえる街」の最初の実現例となった、マルセイユの集合住宅(ユニテ・ダビタシオン)。「家は生活の宝石箱でなくてはならない」との名言も残している巨匠ル・コルビュジエが58歳のときに設計、65歳のとき(1952年)に完成した実験的な集合住宅。

300以上の住戸を納め、屋上庭園や幼稚園、ホテル、スーパーもあるひとつの都市、ユニテ。そのなかの住戸に、ブルレック兄弟が、彼らの感性を新たに融合させた様子です。
届いた写真、順に見ていきましょうか。

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ル・コルビュジエが南仏カップ・マルタンに休暇小屋「キャバノン」を建てたのと同年に完成したユニテ。住民に「ル・コルビュジエ」と呼ばれ愛されている歴史的建築を尊重しつつ、ブルレック兄弟が自分たちのデザインを丁寧に加えている様子がわかる。
Photo © Studio Bouroullec + FLC ADAGP

B5.jpg『PEN』最新号にも登場していたブルレック。右が兄のロナン、左が弟エルワン。
Photo ©Ora Lindal


「今年はじめ、ジャスパー(モリソン)が部屋のオーナーを紹介してくれて」と二人。「ミュージアムやギャラリーじゃなくて家として使われている」この住戸を、夏のためにリモデル、あわせてブルレック兄弟のデザインによるプロダクトを厳選し、室内を構成することに。シャルロット・ペリアンやジャン・プルーヴェが当初手がけたユニテの家具と響きあうようにと、まず選ばれたのがマジスの棚やテーブル、椅子でした。

ル・コルビュジエとタペストリーとの関係にも着目したブルレック兄弟、壁にはクヴァドラのパーティションで彩りを加え、床には色鮮やかなカーペットも。他にもヴィトラ、エスタブリッシュド&サンズの品々などが、ユニテ空間にとけ込んでいます。

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吹き抜け、窓やテラスなどコルビュジエ空間も改めて満喫。置かれた照明(写真上)はエスタブリッシュド&サンズの「Lighthouse」。椅子はジャン・プルーヴェの椅子に着想を得たというブルレック兄弟デザインの「スチールウッドチェア」(マジス)。
Photo © Studio Bouroullec + FLC ADAGP

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B9.jpgル・コルビュジエのモジュロールに基づく天井高は2.26m。はい、「成人男性の手が届く高さ」です。既存の棚とブルレックの家具が美しい調和を奏でていることに驚かされ、置かれた椅子の曲線に、ル・コルビュジエがトーネットの椅子を愛用していたことを思いだしたりも。それにしても、この家、暮らしてみたい。
Photo © Studio Bouroullec + FLC ADAGP

どんなに疲れていても、気分が沈んでいても、ポジティブな気持ちにしてくれるのが、友人・知人デザイナーからのこうした近況報告だったり、写真の数々。ああすばらしいデザインってやっぱり、心穏やかに、幸せな気分にしてくれる......そう思った瞬間、いつも不思議、元気になっている。今回も繰り返し見ていたい写真ばかりでした。

さて、この「Appartment 50」プロジェクト。部屋を長く所有しているオーナーも大満足。この夏7月15日からの1カ月間、一般公開される予定だそう。
ここに掲載した11枚の写真、いち早く夏の南仏を訪ねた気分で、お楽しみください。

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竣工当時からの引き戸が残っています。壁の棚も。
Photo © Studio Bouroullec + FLC ADAGP

B12.jpg照明は「Lampalmina」(Bittossi)。この家に暮らしている気分で「おやすみなさい...」
Photo © Studio Bouroullec + FLC ADAGP

Cité Radieuse
Unité d'habitation Le Corbusier
Appartement 50, 5ème rue
280 boulevard Michelet
13008 Marseille
http://www.appt50lc.org/
上記ウェブサイト内「Plans & Cotes」に従来の部屋写真あり。

Appartement 50インスタレーション 
7月15日〜8月15日
火曜日〜土曜日の14:00〜18:00のみ公開

Noriko Kawakami
ジャーナリスト

デザイン誌「AXIS」編集部を経て独立。デザイン、アートを中心に取材、執筆を行うほか、デザイン展覧会の企画、キュレーションも手がける。21_21 DESIGN SIGHTアソシエイトディレクターとして同館の展覧会企画も。

http://norikokawakami.jp
instagram: @noriko_kawakami

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