空間を漂い、心を高揚させてくれる色や柄。「MARENCO × 鈴木マサル」今週末より大阪で開催。
デザイン・ジャーナル 2015.04.09
アルフレックスの家具とテキスタイルデザイナーの鈴木マサルさん。何とも気になるコラボレーションイベントが、今週末より、大阪で始まります。
日本におけるテキスタイルデザインの草分け的存在、粟辻 博さんのデザイン室を経て1995年に独立した鈴木マサルさん。2005年には自身のファブリックブランド「OTTAIPNU(オッタイピイヌ)」を始動させています。マリメッコやラプアン・カンクリ、日本発「ムーミン」のテキスタイルシリーズ「MOOMIN TRIBUTE WORKS」も手がける鈴木さんについては、このコラムでも以前に紹介したことがありました。
今回のスペシャル・エキシビション「MARENCO(マレンコ)× 鈴木マサル」は、アルフレックスの代表的な家具であるソファ「マレンコ」に、鈴木さんが手がけたオリジナルファブリックが登場するという心はずむ企画です。じつは鈴木さんがソファやチェアの張り地をデザインされるのは、今回のプロジェクトが初めてのことだそう。もちろんどれも購入可能、カバーのみの販売もあるのですでに家具を持っている方にも朗報です。
イタリア アルフレックス社が1971年に販売を始め、以来40年以上、多くの人々に愛されている名作ソファ、マレンコ(デザイン:マリオ・マレンコ)。このソファに、制作技術も異なる3種のファブリックが用意されました。デザインを順に紹介しましょう。鈴木さんが「色も柄も、なるべくあわないようなものを隣に並べて構成してみたら、案外しっくりきて......」と語る「DANCE(ダンス)」。
「デザインにとりかかったとき、うまくやろうと思っていました。そうしたら全然うまくいかない。名作ソファに対してうまくやろうなんておこがましいのだと反省しました」。そんな、鈴木さんらしく微笑ましいコメントも!
マレンコ独自のフォルムにあえてこだわることなく、ソファ全体を「一枚のキャンパス」と見たててファブリックがデザインされている「PARK(パーク)」。デジタルプリントの技法が駆使され、クッションやシートなどの柄がつながったり、分断されるという絵画的な楽しみが。
マレンコ用ファブリックの定番となっている麻の生地に躍動的なドット柄が、一版ずつ手捺染でプリントされた「BALOON(バルーン)」。10m単位でひとつの柄が描かれています。なので、ソファ用にカットされることで、予測できないドットの表情が生まれ出るのです。
以前、鈴木さんに取材をした際に語ってくれたことをふと思い出しました。「自分が考えていることを自由に表現しようと考えたら柄がどんどん大きくなりました。それらを目的にあわせて自由にカットして使ってほしいと思います」。カットされることで生まれ出る表情は思いもかけぬものともなり、私たちに嬉しい驚きをもたらしてくれるのです。そう、これぞ鈴木さんデザインの醍醐味!
他に、アルフレックス ジャパンの人気チェア「RINN(リン)」(デザイン:藤森泰司)にも鈴木マサルバージョンのファブリックが登場しています。「DANCE」「PARK」「BALLOON」の3種類で、こちらもカバーつき本体/カバーのみ、それぞれが紹介、販売されます。
鈴木マサルさんファンの皆様にはさらに朗報を! バング&オルフセン ジャパンから発売になった「BeoPlay A9」の、限定スピーカーカバーも誕生しています。デザインは「POLKA DOT」「FORTE」「ZEBRA TONE」「QUARTET」「ELEPHANT COMBO」の5種類で、各柄30枚限定での販売だそう。
名作ソファ、チェア、スピーカー......。それぞれを包む鮮やかな色と柄。どのファブリックも鈴木マサルさんのお人柄にも似て、大らかで明るいデザイン。
「色柄が空間を漂い、ひとの心のなかで揺らぎ、高揚させ、かたちにならない感覚が新しいリアリティとなって生活を、そして環境を変えていくのです」と鈴木さん。本当にその通り! 生活のアートとも表現できる美しきファブリックを不朽の名作家具と味わえる貴重な機会、魅力溢れる家具たちにぜひ出会ってください。
「MARENCO × 鈴木マサル」
会期:4月10日(金)~4月21日(火) ※4月15日(水)は定休日
時間:11:00〜19:00
会場:アルフレックスショップ大阪
大阪市中央区南船場4-2-11 ベネトン心斎橋ビル6F
Tel.06-6258-8822
http://www.arflex.co.jp/
Noriko Kawakami
ジャーナリスト
デザイン誌「AXIS」編集部を経て独立。デザイン、アートを中心に取材、執筆を行うほか、デザイン展覧会の企画、キュレーションも手がける。21_21 DESIGN SIGHTアソシエイトディレクターとして同館の展覧会企画も。
http://norikokawakami.jp
instagram: @noriko_kawakami