コロンビア生まれ、カラフルなランプシェード。
"ペット・ランプ" が伝えてくれるメッセージ。

南米コロンビアの鮮やかな色や「編む」ことでのものづくりについて、前回「MARNI 100 chairs」のご紹介後、読者から嬉しい感想をいただきました。そこでもうひとつ、コロンビアに関連する気になるプロジェクトをとりあげたいと思います。帽子のようにも見えますが、ランプシェードなのです。手しごとを生かした「PET LAMP（ペット・ランプ）」。

今年春、ミラノでの展示風景から。Photo: Noriko Kawakami

その名はペットボトルが主な素材であることから。今年のミラノサローネの際には、注目デザイナーを始め多くの人々が集うショップ＆ギャラリー、スパッツィオ・ロッサーナ・オルランディの中庭を彩っていました。この場所については横山いくこさんもブログで書かれているので、興味のある方はこちらもぜひ。

そのままでも美しく、点灯されてさらに美しい。 Photos: Courtesy of PET Lamp Production

プロジェクトの中心人物はスペイン、マドリードを拠点とするデザイナー、アルバロ・カタラン・デ・オコン。彼がコロンビアを訪ねたのは2011年夏。アマゾン川流域で問題になっている廃棄されたペットボトルをリユース（再利用）する方法を考察するプロジェクトに参加したのでした。昨年８月に再びコロンビアに足を運び、首都ボゴタで、文化背景の異なる２組の職人たちとのワークショップを実施しました。

再利用したペットボトルを素材として、長く使われる魅力的なものをいかに実現するか。この課題に向きあったアルバロが発想したのが「日本の茶道で使う茶筅（せん）」という点がまず興味深い。竹を細かく裂いてつくられ、シャッシャッとお抹茶を泡立てるときに用いられるあの茶筅です。

ボトル本体に細かな切れ目を入れる。紐や藁（わら）などを編み込んでいく。こうしてランプシェードがつくられます。素材の質感と色、参加した人々の伝統的な編みの技術を生かした柄もペット・ランプの特色。

制作風景。ペットボトルがうまく生かされていることがわかります。 Photos: Courtesy of PET Lamp Production

またこのプロジェクト、前回のMARNI 100 chairsと同様に社会の現況に手をさしのべるものともなっています。資源の再利用という自然環境に対する視点はもちろん、コロンビア国内のゲリラ線で被害を被り、カウア県からボゴタに移ってきた職人たちの立場も考えたコラボレーションとなっているのです。

暮らす場所を失い経済的にも厳しい状況に置かれた人々に、彼ら自身の伝統文化によって新たな暮らしを得ていく可能性をさしだそうという試み。なるほど、こちらも骨太なプロジェクトでした。ペット・ランプのウェブサイトから購入可能、150ユーロからの価格となっています。

編み方はさまざま。個性豊かなランプシェードが誕生しました。 Photos: Courtesy of PET Lamp Production

デザインと社会のつながりや、ひとが社会に対してできること。あるいは美しさが多くの人にもたらしてくれる感動、そして喜び。鮮やかなランプシェードが、デザインの魅力や大切さをそっと教えてくれます。

ペット・ランプを見ている友人たちと、「あれはよかったよね！」と今も話題に。 Photos: Courtesy of PET Lamp Production

PET LAMP
http://www.petlamp.org