直島に誕生、安藤忠雄設計の
「李禹煥(リ ウファン)美術館」

デザイン・ジャーナル

穏やかな海と青空、木々の緑......瀬戸内の豊かな自然とともにアートを満喫できる直島に、安藤忠雄さんの設計による「李禹煥(リ ウファン)美術館」が開館。久しぶりの直島滞在は、燦々と輝く日ざしのなか、新しい美術館を楽しむ旅となりました。

李禹煥美術館は、韓国に生まれ、日本を拠点として世界的に活躍するすばらしいアーティスト、李 禹煥さんの、世界で初となる個人美術館です。海に面し、三方が山に囲まれた場。海辺に向かって丘のように広がるなだらかな谷あいに、美術館は建てられています。

100716_1.jpgPhoto: Tadasu Yamamoto, Courtesy of Naoshima Fukutake Art Museum Foundation
建物前の広場には作品『関係項--点線面』(2010年)。高い柱も圧巻。「宇宙の森羅万象は点からはじまり点に還るという。点は新たな点を呼び、そうして線に延びる」。作品の前で李さんの文章を思い出した。横に伸びるコンクリート壁の左手がエントランス。

その場所は、安藤さんの設計ですでに開館している地中美術館と、宿泊ができるベネッセハウスのちょうど中間地点。李さん、安藤さんをはじめとする関係者が皆、「とっておきの場所」と口にする意味を、現地を訪れ、まさに実感しました。

しかも美術館の建物は、谷あいの地形をうまく用いた半地下空間、「地中」の建築です。
エントランスにはコンクリートの長いアプローチ。その先に現われるのは、鋭角の庭と3つの四角い空間。凛としてとぎすまされた空気に、ああこの美術館はまさに李さんと安藤さんの共作なのだ! と強く感じました。

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100716_3.jpg アプローチの長い通路。Photo: Noriko Kawakami
「私のモチーフは、内部と外部の結節点に、想像の羽根を着けること」。李さんの著書『余白の芸術』で出会った文章が印象的で、その後も私の頭のなかにある。今回の美術館のアプローチも、内と外とをゆるやかに結ぶもの。様々なものの出会いがここに。

素材や表現が最小限のものに止められることで、無限の世界を感じさせてくれるのが、李 禹煥作品の醍醐味です。一筆のストロークやひとつの石、一枚の鉄板。点が描かれ、石や鉄板が置かれることで、周囲の余白や空間は振動を始めます。最小限の表現に潜むとてつもない強さ。

そして今回、美術館そのものがそうした李さんの強さが満ちる世界。小ぢんまりとした規模の美術館ですが、隅々に至り、なんとも言えない力が充満していることを感じます。そのうえで作品と一体となった空間が深い息をしている......そうも感じました。

妥協を許さぬアーティストと建築家と、互いの世界が響きあう様子を体感できる貴重な場。作家の考えや作品を理解する建築家だけが表現できる建築空間となっていて、また、できあがった空間に応えるようにアーティスト自身が作品の展示を仕上げている......二氏の長い友人関係があったからこそ実現した世界がここに。

100716_4.jpgPhoto: Tadasu Yamamoto, Courtesy of Naoshima Fukutake Art Museum Foundation
「出会いの間」。やはり私の好きな李さんの文章を思い出しながら、代表作を含む展示を楽しんだ。「一つの点を打つと、がぜん辺りが動き出し、紙面の上空低く生気の漲(みなぎ)る空気が漂う。この初々しいイリュージョンの体験は、ついにぼくを画家にした」。

100716_5.jpg Photo: Tadasu Yamamoto, Courtesy of Naoshima Fukutake Art Museum Foundation
「沈黙の間」の『関係項--沈黙』(2010年)。石と鉄板。李さんは作品に用いる石をいつも丁寧に選ばれている。今回も岡山県など、周辺の石を1年ごしで探したそう。

100716_6.jpgPhoto: Tadasu Yamamoto, Courtesy of Naoshima Fukutake Art Museum Foundation
「瞑想の間」には『対話』(2010年)。靴をぬいで部屋に。壁に描かれた作品に向きあう。


「海の近くに長く暮らしていると、潮の満ちひきを身体で感じるようになるものです」。
鎌倉にアトリエを構える李さんは、そうも語ってくれました。満ちひきを繰り返す海は周囲の山と響きあい、空とも響きあっている。そうした様々な「力の張りあい」を、改めて全身で感じる場......そう、ここだけにしかない美術館の誕生です。

100716_7.JPG美術館周辺のスナップから(次3枚も)。Photo: Noriko Kawakami

100716_8.jpg美術館を背に海方向、李禹煥作品である石と鉄板の作品ごしに目にした空は青く。

100716_9.jpg瀬戸内の海は終日穏やか。美術館の先に広がる海。夕暮れ時。

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李禹煥美術館
香川県香川郡直島町字倉浦1390
毎週月曜日休館
http://www.benesse-artsite.jp/lee-ufan/


7月19日より、
直島を始め、瀬戸内の7つの島と高松港を舞台とする
瀬戸内国際芸術祭「アートと海を巡る百日間の冒険」
がスタート。あわせて鑑賞を。http://setouchi-artfest.jp/

川上典李子 Noriko Kawakami

ジャーナリスト
デザイン誌「AXIS」編集部を経て独立。デザイン、アートを中心に取材、執筆を行なうほか、デザイン展覧会の企画、キュレーションも手がける。21_21 DESIGN SIGHTアソシエイトディレクターとして同館の展覧会企画も。
http://norikokawakami.jp

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