「Watatsumugi」の和綿ストール完成。
ミヤケマイさんの空間インスタレーションも

三陽銀座タワーにて、SANYO(三陽商会)の「Watatsumugi(わたつむぎ)」プロジェクトの第一弾、和綿のストールが紹介されています。

同社の皆さんが育てた「和綿」を素材として、藍で美しく染められた限定生産のストール。時代の新旧の時空をつなぐことに定評のあるアーティスト、ミヤケマイさんが手がけた空間インスタレーションもあわせて、7月24日まで展示、販売中です。

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三陽商会のオリジナルブランドを扱う三陽銀座タワー6階で。Photo: Satoshi Shigeta

「Watatsumugiは、三陽商会のCSR活動『think,SANYO』活動の一環で、『ほんとうにいいもの』を見つけようと3年前から育てている和綿を使ったものづくりプロジェクトです」。今回のプロジェクトについて、三陽商会の西野祐子さんと和田稔さんが説明をしてくれました。

「栃木の渡良瀬エコビレッジに300坪のSANYO COTTON FIELDをつくり、休日に自主参加した社員で和綿を種から育ててきました。3年間でのべ350名の社員が和綿づくりに関わっています」

「和綿は繊維内の空洞がアメリカなど海外産の綿の2〜3倍、弾力性があって製品がしっとりした風合いに仕上がるのが特色です。高温多湿の日本の気候にあう素材で、明治中期までは国内で生産される綿製品の100パーセントが和綿だったのですが、安価な綿が輸入されるようになって需要が減少しました。和綿を育てている畑は、全国でも数えるほどになってしまいました」

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「Watatsumugi」(ストール) 綿100% (和綿の割合25%)サイズ:80cm × 200cm。3色あり、生成 ¥17,000、先染め(薄い藍色)、¥25,000、後染め(濃い藍色)¥25,000(全て税抜き価格)。三陽銀座タワーのみでの販売。Photo: Satoshi Shigeta

「Watatsumugi」の「wa」は「輪」であり「和」、日本でつくられるものとしての「和」の意味も。日本の自然のなかで生まれた素材、受け継がれてきた技法に目を向けたストールには、皆さんの想いが込められていました。

「日々の暮らしのなかでそれぞれの季節をきりとって、幸せを感じたり、心がゆれたり、感謝したりする......いつの時代になっても変わらない人の心を伝えられればと思いました」と西野さんと和田さん。

「市場の動きの分析に始まる商品開発ではなく、自然のリズムに呼応するようなものづくりについても考えてみたかったのです。地球のリズムを軸にものづくりをとらえ直せないかと......」

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渡良瀬エコビレッジで。種まきに始まり、草とりから間引きまで作業が続き、昨年10月〜11月、収穫の時期を迎えました。Photo: hirose shinya (SPREAD)

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大正紡績で。和綿を研究したWatatsumugiチーム。

収穫された30kgの和綿を糸にしたのは大阪の大正紡績。同社の近藤健一さんによって「SANYO STORY」と命名された糸となりました。

その糸をストールに織り上げたのは、兵庫県多可町の土田織布。60年間仕事を続け、今年85歳になる土田隆夫さんがシャトル織機で織り上げたストールは、次に、藍染のために徳島県上板町のBUAISOU(ぶあいそう)に運ばれます。

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土田さんのアトリエへ。ここで織り上げられるストールの藍染を行った徳島BUAISOUの皆さんも一緒の訪問に。

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BUAISOUさんのアトリエでの藍染の手伝い。Photo: KYOKO/BUAISOU

阿波藍の栽培、染料となる蒅(すくも)づくりから手がける藍師、染師のBUAISO。Watatsumugiチームは藍染を手伝ったほか、藍の畑づくりにも参加したそうです。

「和綿の現状と同様、染料となる藍づくりを行う藍師の工房も減っています。昭和38年には2304軒もあった阿波藍の藍師の工房も、化学染料の登場によって今では5軒のみとなってしまいました。今回のストールは本藍染にこだわっています」

こうして完成したストールの数は218枚。生成りのほか、先染め(薄い藍色)、後染め(濃い藍色)、と各々にやさしい風合に仕上げられ、ミヤケマイさんの空間インスタレーションで紹介されています。

ミヤケマイさんのコンセプトは、「初夏の空を写す」。さらには、青空の断片をもち帰ってもらう、というものでした。青空から伸びた糸は、藍染めの大きなカメへ。

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インスタレーションを通して伝えられているメッセージ。「さまざまな壁を飛びこえて伝えてくれる力がアートにはあります。今後も同様にアーティストに参加していただきながら、理解してくださる方々にきちんと伝えていきたいと思っています」と西野さん。Photo: Satoshi Shigeta

店内でプレゼントされている和綿の種を私もいただきました。「小さな鉢でも育てられるんですよ。コットンボールがはじける秋に三陽銀座タワーに持ってきてもらえれば、来年つくるものの糸として大切にひきつがせていただきます」

「関わってくれた方々が皆、同じ方向を見てくれていたのも、とても嬉しいことでした」。西野さんと和田さんはこうも語ってくれました。「服をつくることは日本の様々な地域に住む人の思いやものづくりの技術をつなぐこと。そのバトンをさらに多くの皆さんにつないでいければと思っています」

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和綿の種は先着750名にプレゼントされています。「Watatsumugi」プロジェクトのグラフィックは風景と食設計室 ホー 、ディレクションはMIRU DESIGN。Photo: Satoshi Shigeta

「Watatsumugi」プロジェクト ストール販売
開催中~2016年7月24日(日)まで
三陽銀座タワー 6階、11:00〜20:00
www.sanyoginzatower.com
「Watatsumugi」プロジェクト
SANYO CSR(Facebook)

ミヤケマイさんの活動は以下で
www.maimiyake.com

Noriko Kawakami
ジャーナリスト

デザイン誌「AXIS」編集部を経て独立。デザイン、アートを中心に取材、執筆を行うほか、デザイン展覧会の企画、キュレーションも手がける。21_21 DESIGN SIGHTアソシエイトディレクターとして同館の展覧会企画も。

http://norikokawakami.jp
instagram: @noriko_kawakami

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