うつわディクショナリー

うつわディクショナリー#40 鉄器のようでいて、手に取るとやさしい岡崎慧佑さんの陶器

うつわディクショナリー

 

硬派とやさしさのあいだにある、心地よさ。

鉄のうつわのようでありながら手に包むと意外! 吸いつくように馴染んで気持ちがいい。岡崎慧佑さんの陶器は、洗練された見た目から受ける冷たい印象をさらりと裏切っていく。硬派なテクスチャーとやさしい曲線のギャップこそが作り出す心地よさは、初めての体験。

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—岡崎さんの作品を初めて見た時、ころんとした曲線の造形にとてもひかれました。
岡崎:美大で陶芸を始め、陶器のオブジェを作っている時間が長かったからか、使ううつわでありながら、最初に目にどう訴えるかということを大事にしているところがあって。なかでも曲線の導き方には、気を配っていると思います。土器のようなプリミティブなかたちも好きなんですが、ろくろを回す時には、かたちはあまり決め込まず、自分の眼が「ここが綺麗だ」と思った瞬間に手を止めるようにしています。
 
—湯のみやマグカップの丸みは、手に包んで触れるとスムースでとても気持ちいい。「ここが綺麗だ」という岡崎さんの直感が使う時の心地よさに無理なく繋がって、身体が喜びます。
岡崎:いまの時代にうつわを作ることってすごく難しいことだと思うんです。うつわは、食べることと共にあって、どんな人でも使い心地が良いものをよく知っているものですよね。使いやすいデザインだけを考えたら、工業製品を選ぶという選択肢もある。だからこそ、使い勝手よりも前に「綺麗だな」と心や身体がつい反応してしまうものを作れたらいいなと。
 
—鉄器のような硬派なテクスチャーと柔らかい曲線の組み合わせのギャップも、作品を特徴的なものにしていますね。
岡崎:僕にとっては、美しい曲線が決まることがなによりも重要なんです。納得のいくかたちが決まったら、あとは、黒、赤、青、緑の4色のどれかを選んでのせていく。黒い化粧土の上にそれぞれの色を重ね、ヤスリで削ることで経年変化した金属のような質感が出ます。どうヤスリをかけるかも作品のうち、ですね。シンプルな工程なので、その分、かたちが際立つといいと思っています。
 
—オブジェを作っていたということですが、うつわとの違いは?
岡崎:オブジェは自分の中の表現で完結しそれを発表するものですが、うつわには、その先がある。手にとって持ち帰ってくれた人が、使ってどう感じるか。その先にまで責任を持って作る必要があるので、同じ陶芸であっても、全く違う仕事です。いまでも作ることに没頭している時間が一番好きで、いい曲線が決まったことをずっと喜んでいたりしますけど、普段から料理をすることもあって、最近は、使い勝手を考えながら、同時に自分の表現も入れていくことに楽しさを感じています。
 
—料理に加えて、キャンプや山歩きなどアウトドアも好きだとか。
岡崎:子供の頃からキャンプにはよく行きました。アウトドアのギアが好きですし、古いものを見つけてきて、分解しては組み立て修理をするのも好きで、陶芸では、急須やポットの組み立てが好きだったり。陶芸を本格的にやろうと思ったのも、美大の課題で急須を作った時に、胴体、注ぎ口、取っ手、蓋というようにパーツを作って組み立てていくのが面白かったことがきっかけなんです。山歩きでふと目にする樹木の枝の曲がり方なども、曲線へのこだわりのインスピレーションになっていて、好きなことが制作に繋がっています。
 
—陶器には珍しい赤のうつわは、落ち着いた色味のチョイスが思いのほか料理を引き立てます。
岡崎:黒に合わせた時にかっこいい赤を、と考えた時に漆の赤が浮かんだんです。日本では昔からさまざまなものに赤が使われてきましたが、鎧に使えば、強さの象徴になり、建物に用いれば、高貴な雰囲気を宿す。日本らしい赤として陶器の上で成立する色を意識しました。
 
—どんなものを作りたいと思っていますか?
岡崎:うつわなので「生活に寄り添うものを作りたい」と言いたいところですが、むしろ、生活の端っこに、いつも転がっているようなものであれたらと思っているかもしれません。いつでも目の届くところに置いていたり、ふとした時に遊びで使うものなんだけど、その頻度が意外と多いというような、そういうものであれたらいいですね。
 
※2018年11月13日までうつわ謙心にて「岡崎慧佑展」を開催中です。
 

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今日のうつわ用語【急須・きゅうす
お茶出しの用具。中国の明時代に考案され、酒に燗をつけるのに使われていたが、室町時代に日本に伝わり、文化、文政期(1804〜30年)に煎茶の流行とともに普及した。
【PROFILE】
岡崎慧佑/KEISUKE OKAZAKI
工房:神奈川県鎌倉市
素材:陶器
経歴:近畿大学文芸学部芸術学科陶芸コース卒業後、東京藝術大学大学院美術研究科陶芸専攻修了。陶芸教室の講師を経て独立。1984年大阪府生まれ。
http://okazakikeisuke.com/

うつわ謙心
東京都渋谷区渋谷2-3-4スタービル青山2F
Tel. 03-6427-9282
営業時間:11時〜20時
定休日:水曜日
http://www.utsuwa-kenshin.com
✳商品の在庫状況は事前に問い合わせを

『岡崎慧佑展』開催中
会期:2018年 11/8(木)〜11/13(火)
会期中無休

photos:TORU KOMETANI realisation:SAIKO ENA

衣奈彩子

ライター、エディター
「フィガロジャポン」編集部を経て独立。うつわを中心に工芸、インテリア、雑貨など暮らしにまつわる記事を執筆。うつわと食を愉しむ提案をするUTSU-WA?主宰。http://enasaiko.com

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