うつわディクショナリー

うつわディクショナリー#41 手彫り模様に癒される生形由香さんのうつわ

うつわディクショナリー

東南アジアの風がうつわにもたらすもの

東南アジアの石彫のレリーフや、更紗布の草木柄からインスピレーションを得て、生形由香さんが生み出すうつわには、エキゾチックな装飾と日本人作家ならではの静けさが交わって、部屋の中に、テーブルの上に、神聖な落ち着きをもたらしてくれる。
 
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—生形さんといえば、草花や生きものの彫り模様が施された作品が美しく、ため息がでます。
生形:手彫りで装飾を施す作品は、独立した頃からずっと取り組んでいます。もともと、東南アジアの古代遺跡やインドを発祥とする更紗布の模様が好きだったので、石柱や石壁、石の彫刻の浮き彫りや、草花の柄を作品に取り入れるようになりました。彫る時は、簡単に下描きをするくらいで、あとは頭の中にあるイメージを手に伝えて一気に彫り込んでいきます。
 
—型に彫って粘土をあてることで、同じ模様を、何度も、いくつも作りだす方法もありますが、生形さんが、ひとつひとつ手彫りにこだわるのはなぜ?
生形:手彫りすることで、手跡というか、柔らかさを出したいからですね。東南アジアのものが持つ大らかな雰囲気が好きなんですが、ろくろや型ではどうしても形がきちっとしてしまうんです。できた形を客観的に眺めて、彫りの入れ方を決め仕上げていくことで、自分が理想とする大らかで優しい雰囲気や、温かみのある手触りをプラスしたいと思っています。
 
—同じ模様でも線の動きや彫りの深さが微妙に違うから、たったひとつのその一枚を自分だけのために選ぶ楽しみもひとしおです。
生形:私は、古代遺跡や更紗と同じように古い焼物も好きなんですね。数百年前に生まれたものが、人によって選ばれ残されてきたことの背景には、美しさだけでなく、それぞれの時代の生活や食生活の歴史はもちろん、残しておきたいと思わせる手触りや特別感があったということなのかなと。私のものもそんな風に、先の代まで長く大切にしたいと思ってもらえたら嬉しいですね。百年後に自分のものが発掘されることがあるのかなあ、なんて考えるとワクワクします。
 
—表情のある釉薬も、生形さんらしい表現のひとつです。
生形:釉薬が流れて生み出すグラデーションというのは、ある程度は予想はできますが、最終的には窯の熱による変化の問題、コントロールができません。人の手では予測できないところから生まれる釉薬の美しさにひかれて、焼物を続けているところがありますね。白、緑、茶、黒を定番として使ってきましたが、最近は、ブルーと黄色が気に入っています。ブルーは、古代のローマンガラスのように角度や場所によって異なる表情を見せる釉薬を。黄色は、部屋で育てている爽やかな色味の水仙に影響されて、元気がでる色を私なりに表現したところ、いい色になったかなと思います。
 
—エキゾチックな形で人気のマグカップや一点ものの花器は、釉薬の表情がよく分かりますね。
生形:高さのあるものは、釉薬の流れを一番よく感じられるので、作っていても楽しい。花器は、花をいけなくても「綺麗だな、部屋の中にずっと置いておきたいな」と思えるような形を意識して、生活の中のいろいろな場面で楽しんでもらいたいと思っています。
 
※2018年12月19日まで「銀座日々」にて「生形由香作品展」を開催中です。
 
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今日のうつわ用語【花器】
花をいけるうつわのこと。生け花の起源は、室町時代。掛け軸などを鑑賞する際の床飾りとして花をいけたこととされ、池坊により華道も広まった。この時代の絵図にある花器は中国から輸入された銅製のものだが、その後、生け花の変遷にともない江戸時代に陶器の花器も使われるようになったという。花器には、水を注いで花を長持ちさせる役割といけた花を美しく見せる飾りの役割がある。
【PROFILE】
生形由香/YUKA UBUKATA
工房:栃木県芳賀郡益子町
素材:陶器
経歴:短大卒業後、瀬戸の窯業専門学校で陶芸を学び、益子に移住。製陶所勤務ののち、陶芸家・鈴木稔氏に師事し独立。

銀座 日々
東京都中央区銀座3-8-15 APA銀座中央ビル
Tel. 03-3564-1221
営業時間:12時〜19時(展示会最終日は17時まで)
定休日:会期中無休
https://ginza-nichinichi.co.jp/
✳商品の在庫状況は事前に問い合わせを

『生形由香作品展』開催中
会期:2018年12/14(金)〜12/19(水)

photos:TORU KOMETANI realisation:SAIKO ENA

衣奈彩子

ライター、エディター
「フィガロジャポン」編集部を経て独立。うつわを中心に工芸、インテリア、雑貨など暮らしにまつわる記事を執筆。うつわと食を愉しむ提案をするUTSU-WA?主宰。http://enasaiko.com

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