うつわディクショナリー

うつわディクショナリー#75 無骨さと洗練と。亀田大介さんのうつわ

うつわディクショナリー

寒くなるほど使いたい、あたたかみのある白磁

白磁というとキンとした硬質なうつわを思い浮かべることもあるけれど、陶芸家・亀田大介さんが作るそれは、たっぷりと釉薬をかけたとろりとした質感。見込みが大らかで盛り付けやすく、普段の料理がなんだか美味しく見える。鉄釉の黒や灰釉粉引、銀彩も魅力的。毎日楽しく使いこなせる、いいうつわです。
 
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—今回の展示会は、奥様で陶芸家の文(ふみ)さんとの二人展。写真のピッチャーやマグカップ、銀彩のプレートは大介さん、小さめのリム皿や長方形のプレートは文さんの作品ですが、一緒に並べるとお互いが引き立ちますね。
亀田:僕は、ぽってりした白磁のうつわを作ることが多く、銀彩は昨年から作るようになった作品です。かたちも釉薬も、西洋的なフォルムの妻のうつわと僕のうつわのあいだをつなぐようなものになるような気がしていて、二人展を中心にバリエーションを増やせたらと思っているんです。
 
—銀彩のプレートは、磁器に銀彩を施しているとか。
亀田:僕が長年作っている白磁の土に銀彩を施すので「銀磁(ぎんじ)」と呼んでいます。一般的に銀彩というと釉薬の上に銀を施す上絵となりますが、僕の銀彩は、無釉で焼いた皿に直接銀を塗って焼きつけるためマットな質感になる。使い込むといい味わいに育っていきます。磁土に銀彩を施すアイデアは、昨年参加させていただいた企画展で球体のオブジェに銀を塗り、住んでいる別府の温泉の湯の花小屋の中に置いて化学反応させたのがきっかけなんです。
 
—温泉で、ですか!
亀田:別府温泉の硫黄成分の強い蒸気と銀が反応して表面に色ムラや濃淡ができたんです。経年を重ねたような深みがあってすごく魅力的で。食器に応用したらいいものができるのではないかと。やるなら西洋のピューター皿(錫を主成分とする金属の皿)のようなものを作ってみたいとリムのあるプレートになりました。食物を盛り付けるのに適した綺麗な色味を心がけていますが、久しぶりにオブジェに挑戦したことは、新しいうつわ作品が生まれるきっかけになりました。
 
—亀田さんはご実家が福島の大堀相馬焼の窯元。子供の頃から陶芸に興味はあったのですか?
亀田:僕は4人兄弟の長男で、下に妹が3人。自宅の敷地内に窯元の細工場と販売する店舗があって職住一体の生活でしたし、祖母によく将来の話をされていたので、子供心にいつかは跡を継ぐんだろうなと思っていました。大学で陶芸を専攻して具体的に陶芸を仕事にすることを意識したのは、在学中に父が急逝した時です。陶芸家の方に弟子入りすることが決まっていたので、1年だけそこで学ばせてもらってから家業を継ぎ、窯元の仕事と自分の作品を並行して作っていました。作品はオブジェが中心で、うつわは奇抜な造形のものばかりを作っていましたね。
 
—いまのような普段使いのうつわではなかったんですね。意外です。
亀田:大きな造形的な作品を作ることが多かった中で、それに比べて小さなうつわは簡単にできるような気がしていたんでしょうね。うつわも造形作品のように目を引くものでなくては、と思っていたような気がします。でもある時、お客様に「あなたのうつわは使う人のことを全く考えていない。きっと料理を作って盛り付けたこともないんでしょうね」と言われてしまって。ハッとしました。
 
—料理のためのうつわを意識するようになったのですか?
亀田:やっと、ですよね。作家さんが作るうつわやギャラリーを真剣に見るようになると、朝鮮の李朝時代の白磁のような、磁器なのにあたたかみのあるものが気になって。なかでも和歌山でそういった焼物を作っている森岡成好さん、由利子さんご夫妻の大らかなうつわに憧れました。
 
—だから、亀田さんの作品は、磁器なのにキンとした冷たさや硬さがないのですね。それに適度な厚みがあって頼れるうつわという印象です。
亀田:軽すぎず、重すぎず、ちょっとやそっとじゃ割れないほど丈夫で、長く使い続けられるもの。その人の手を離れた後も、100年、200年、ずっと残るようなうつわが理想です。
 
—釉薬をたっぷり掛けていることがよく分かる、とろりと滑らかな手触りもたまりません。
亀田:一見、肉厚で無骨だけど手に取ると温かいうつわがいいですね。銀彩のリム皿にしても、ある程度の厚みと存在感があるものをと心がけています。
 
—高台の大きい小鉢や碗は、白磁のほか灰釉粉引など釉薬のバリエーションがあり、リピートして買う方も多いほどたくさんの人に親しまれています。
亀田:小鉢は、お正月に黒豆を盛ることを想像して少し華やかに見えるよう高台を高くしました。台小鉢と呼んでいます。内底が丸ではなく平らになっているんです。碗のほうは米料理だけでなく、お惣菜を入れても見栄え良く盛り付けられます。
 
—いろいろな献立に使いまわせると食器棚の中でつい手が伸びますね。亀田さんご自身も料理をするのですか?
亀田:いえいえ、全くと言っていいほどしません(笑)。だけどお酒が好きだから「このつまみはこのうつわに。こんなふうに盛り付けたいな」という晩酌の風景の具体的なイメージは強いんです。
 
—九州は食材もお酒も美味しいものばかりですから、食事のイメージには事欠かないですね。
亀田:東日本大震災によって福島で窯元を続けられなくなり、縁あって大分県の別府市に移住し作家活動に専念して8年が経ちました。別府湾を望んで海も山も温泉もあるとてもいい場所です。九州にはいろいろな焼物がありますし、僕もひとつの作風にとらわれすぎずに、自由に楽しく、自分が使いたいと思ううつわを提案していきたいと思っています。
 
*11月3日(火)まで、KOHORO二子玉川にて「亀田大介 亀田文展」を開催中です。
 
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うつわ用語【銀彩・ぎんさい】
銀を用いて装飾する技法やその作品をさす。銀泥や銀箔で彩るほか金属系の材料を用いることもある。
【PROFILE】
亀田大介/DAISUKE KAMETA
工房:大分県別府市
素材:磁器、陶器
経歴:福島の大堀相馬焼の窯元に生まれる。玉川大学芸術学科陶芸専攻卒業後、佐伯守美氏に師事。その後、窯元の仕事と自作の制作を両立する。東日本大震災をきっかけに大分県に移住、築窯。作家活動を続け現在に至る。1975年福島県生まれ。http://www.instagram.com/daisukekameta/?hl=ja


KOHORO二子玉川
東京都世田谷区玉川3-12-11 1F
Tel. 03-5717-9401
営業時間:11時〜19時
定休日:水曜(展示会中無休)
http://www.kohoro.jp
✳商品の在庫状況は事前に問い合わせを

「亀田大介 亀田文展」開催中
会期:2020年10/24(土)〜11/3(火)

photos:TORU KOMETANI realisation:SAIKO ENA

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