なぜ子どもは疲れを知らないのか?

Lifestyle 2018.06.17

les-enfants-infatigables.jpg

心理学者のマリー・ルーカス氏によれば、子どもが疲れを知らないのはごく普通のことで、むしろ健康な証拠だという。Photo: iStock
 

「5分だけでも座りたくならないの?」
もしこんな言葉を発したことがあるとすれば、あなたはきっとあり余るエネルギーを持つ子どもの親に違いない。なぜ子どもが疲れを知らないのかについて、ふたりの専門家が分析する。

土曜日の午後4時。スイミングクラス、自転車遊び、お買い物、誕生日会を終えた後、それでもまだ疲れを知らずにトランポリンに行きたいと子どもは言う。親は昼寝をしたいというのに、子どもはまだまだハーフマラソン並みの運動が可能だ。なぜ子どもはこんなにも疲れを知らないのだろうか? その質問に、幼児からティーンエイジャーを専門とする心理学者のマリー・ルーカス氏と小児科医のアンドレア・ウェルナー氏が答える。

子どもというものは決して疲れを知らない印象がありますが、彼らにとって睡眠はさほど重要ではないのでしょうか。

マリー・ルーカス(以下、L):「はい、それは子ども本来の特徴です」

アンドレア・ウェルナー(以下、W):「それが現実でしょうね。子どもはたいていの場合、親より疲れを知りません。しかしながら、日中どんな活動をさせるかにもよるでしょう。日中テレビを見せっぱなしにしたり、本当は歩ける年齢なのにベビーカーに乗せて移動したりせずに、思いきり外で遊ばせれば、夜にはしっかり疲れが出るでしょう」

子どもたちが膨大なエネルギーを持っている理由とは?

L:「子どもとは、彼らの脳そのもののように成長著しい存在なのです。脳の感覚を司る部分をフルに働かせています。また学習過程にあるため、より多くのエネルギーを持っています。脳は新品そのもので、恐れという感情に汚染もされていないのです。また子どもはたいてい一度にひとつのことしかできません。何か行動するときは、そのこと自体に夢中で、気が散るということがありません。何かひとつのことに意識が集中すると、身体や気持ちが深い瞑想状態となり、脳をリラックスさせ、また新たな活力を生み出すことができるのです」

W:「何よりも年齢の問題です。子どもは親より体力的にはるかに優れています。生理学的にそういうものなのです」

大人と子どもはどうしてこんなにも違うのでしょう?

L:「子どもと違って、大人というものは受け取ることよりも自ら発信することが多いのです。大人は一度に数多くのことを行うこともしばしばです。さまざまなことを同時にうまくこなせない場合には悩んでしまい、またそのことが疲れる原因となるのです。それに加えて日々、ストレスや心配事はつきものです。一方、子どもの脳はそういったストレスや心配事にはまったく汚染されていません」

W:「また、現代の大人は昔に比べて睡眠不足の傾向があることも影響しているでしょう。スマートフォンやタブレットなど発光する機器は、安眠を阻害します。日中、身体を思いきり動かして遊び、インターネットとは無縁の生活を送る子どもは、簡単に眠れるのです。一方、スマートフォンやタブレットに触れる時間が多い大人は眠ることが難しい傾向にあるのです」

【関連記事】
娘と読みたい、偉大な100人の女の子の物語。

---fadeinpager---

子どもが疲れを知らないことと多動症の違いとは。

子どもが過剰に興奮するのはどうして?

L:「『疲れ知らず』と『興奮しすぎる』ということは区別して考えなければいけません。子どもが疲れを知らないというのはごく普通のことで、むしろ健康な証拠と言えます。一方、興奮しすぎてしまう子どもは、一般的な子どもに比べて極端に活動的か、もしくは何らかの問題が考えられます。タブレットやテレビなどの見過ぎで興奮状態になることはよくありますし、『私をもっと見て。もっと私に注意を払って』と両親にメッセージを送っていることの現れという可能性もあります」

W:「子どもが興奮しすぎる状態が多動症を暗示するのかと聞かれたら、答えはノーです。疲れを知らず、過度に興奮してしまうということは、年齢に関係しているのです。寝る前に興奮してしまうようならば、日中の外出が足りなかったことの現れでしょう」

時には親にも休息が必要だということを子どもに理解させるのにはどうしたらいいのでしょう?

L:「時間をとって説明することです。親は子どもに事実を伝えるべきです。その際には、『一緒に遊ばなくても、ちゃんとあなたのことを考えている』ということを伝えるようにしましょう。子どもが何歳であろうとも、子どもと向き合って話さなければいけません」

W:「6、7歳前の子どもに説明をすることに本当に意味があるのか、私は疑問です。善悪の判断がつくようになる7歳以前というのは、子どもは両親が指示することを受け入れなければいけません。7歳になってようやく子どもは何が自分に説明されているのかを理解できるのです。幼い子どもを大人のように扱うことはやめるべきです」

子どもたちを自発的に疲れさせるのはよいアイデアでしょうか?

L:「私は解決法にはならないと思います。日中十分に遊んだ子どもは、夜は穏やかになるはずです。過剰な運動などは必要なく、まず最初にその子に合った運動量やアクティビティを理解する必要があります」

W:「子どもというものは自然に疲れるものです。もし子どもが疲れないとすれば、親は基本に立ち返る必要があります。もっと身体を使った遊びを増やしたり、3歳以下の子にはテレビやタブレットをみせないようにしたり、座ってばかりの生活を避けたりするなどしましょう」

自分の子どもは多動症なのではないかという不安を抱える親は数多く存在します。一般的な子どもと多動症の子どもの違いは何でしょう?

L:「多動症とは、ある種の倦怠感や苦痛から引き起こされる心理的な問題です。多動症の子どもは、しばしばOCD(強迫性障害)を同時に発症し、不安感を訴えます。多動症と『子どもは疲れ知らない』という事実とは、まったく関連性がありません」

W:「加えて6歳になる前に、多動症の診断を下すことは不可能でしょう。また、多くの親たちが、未成熟さと多動症とを混同しています。未成熟な子どもというものは休んだり、自分を落ち着かせたりすることはできませんが、それは多動症とは関係ありません。立ち止まることを理解できるほどまだ成熟していないということなのです」

【関連記事】
大人になって分かった、"アスペルガー症候群"。

texte : Mooréa Lahalle(madame.lefigaro.fr), traduction : Hanae Yamaguchi

Share:
  • Twitter
  • Facebook
  • Pinterest
Business with Attitude
コスチュームジュエリー
35th特設サイト
パリシティガイド
フィガロワインクラブ
BRAND SPECIAL
Ranking
Find More Stories

Magazine

FIGARO Japon

About Us

  • Twitter
  • instagram
  • facebook
  • LINE
  • Youtube
  • Pinterest
  • madameFIGARO
  • Newsweek
  • Pen
  • CONTENT STUDIO
  • 書籍
  • 大人の名古屋
  • CE MEDIA HOUSE

掲載商品の価格は、標準税率10%もしくは軽減税率8%の消費税を含んだ総額です。

COPYRIGHT SOCIETE DU FIGARO COPYRIGHT CE Media House Inc., Ltd. NO REPRODUCTION OR REPUBLICATION WITHOUT WRITTEN PERMISSION.