親は子どもたちの前で泣いてもよい?

Lifestyle 2019.09.25

多くの親にとって、涙を浮かべることはあっても号泣するということはない。子どもの前で号泣してしまうのは面目ないことだと、彼らが考えているからだ。そういった心の脆さを表現することはよくないのだろうか? もしくは自分の感情について語るべきなのだろうか? 3人の専門家が回答してくれた。

190924_peut-on-pleurer-devant-ses-enfants-.jpg

本来、子どもを守るべき存在の親が、子どもの前で弱音を吐いたり、自分をさらけ出したりするというのは容易ではない。Photo: iStock

子どもの前で泣くことが何でダメなの?と、疑問さえも浮かばない人もいる。しかしそうはいかない人もいる。本来、子どもを守るべき存在の親が、子どもの前で弱音を吐いたり、自分をさらけ出したりするというのは容易ではない。これまで自分の感情を表現する方法を学んできていない場合、感情を表に出すのはたやすいことではない。ましてや、子どもを心配させて混乱させてしまう恐れから、自分自身を解放するのは簡単ではないのだ。

しかしながら泣くという行為は人間的であり、救済をも意味する。「感情を抑えることができない時、感情を言葉で表現できない時、私たちは泣きます」と心理学者のフィリップ・シャロム氏は述べる。

---fadeinpager---

感情とは学びである

誰もが次の質問の答えを想像できるだろう。「自分の子どもたちの前で泣くことができますか?」答えはイエス。誰もそれを禁じることはない。むしろその感情表現をおすすめしたい。心理学者で『À quoi sert l’autorité insiste(専門家の主張すること)』の著者であるヴェロニク・ゲラン氏はこう述べる。

「私はすべての親にそれをすすめたいですし、感情表現の豊かな人間であってほしいと思います。感情は絆、温かさ、そして優しさをもたらします。子どもは親の真似をしながら成長していきます。感情表現に乏しく、冷たい性格の親と一緒に過ごしていれば、子どももそうなるのです」

喜び、悲しみ、怒り、恐れなどの感情というものは学びながら覚えていくものである。また敬意、礼儀正しさ、分かち合いも同様だ。

『Quand les mères craquent(母親が歯をくいしばる時)』の著者で臨床心理士および精神分析家のエティ・ビュザン氏はこう付け加える。「他人に対する気遣いや思いやりを育むことは大変重要です。子どもは感情を捉えて読み取る力を身に付けなければいけません」

---fadeinpager---

大人のよりよい感情マネジメント

私たちの文化において、悲しくなるということは心の弱さを表す。

−−精神分析家 エティ・ビュザン氏

親としての子どもへの課題は山積みだ。私たちは子どもたちが幼い頃からともに生活し、お互い慣れ親しみ、信頼を築き、お互いを受け入れ、ルールを決め、やがて彼らは言葉で感情表現ができるようになる。そして子どもたちは人生をよりよくマネジメントできるようになり、思春期における人間関係、友人関係、怒り、それら人間関係での立ち位置など、人生における困難を乗り越えていけるようになる、とゲラン氏は解説する。感情を抑圧しすぎると、大きな暴力として現れ、爆発することもある。

子どもには、特に幼児期のように感受性の強い時期がある。「子どもたちは両親の感情に対してとても敏感で、親がどう感情をマネジメントしているかを見つめています。特に4〜6歳のエディプス期はその傾向が強く見られます。この時期、子どもは両親のアイデンティティの影響を色濃く受けながら、自分を守るための防御方法を身に付けます」とシャロム氏は強調する。

実際のところ、子どもの前で泣くことは問題ない。「親の中には、子どもに自分の悲しみや苦しみなどの感情について話すのは危険だと思っている人もいます。しかしまったく危険はありません」とシャロム氏は述べる。ところが、私たちの生きる社会がそれを難しくしている。「フランスの文化では、悲しみとは弱さと結び付けられて考えられます。そして長い間フランスでは、思考によって感情はコントロールすべきだとするデカルト的な思考が一般的でした」とヴェロニク氏は言う。

では、自分の惨めな状態をさらして、子どもを不安にさせることはどうなのだろうか?

「子どもにとって、親が辛いのを見るのは非常に不安です。子どもには家族の基盤である安心感が必要です。親が不安定に感じるとすぐに、子どももまた脆くなります。しかし私たちも人間です。大切な人を亡くしたり、不慮の事故があったりすれば悲しみに暮れるのは当然です。また、そういったことは回避できません。言葉でしっかり説明すれば、子どもの心の傷も癒やされます」とビュザン氏は説明する。

---fadeinpager---

言葉で表現することで、その涙をドラマティックにしない

2歳児であれば、完全に家庭の雰囲気に影響されます。

−−精神分析家 エティ・ビュザン氏

「子どもの年齢に合った言葉を使い、嘘偽りなく、何が起こっているかを説明すれば、子どもは理解できます」とヴェロニク氏は言う。

「もし誰かが亡くなった場合などには、噛み砕いた言葉で説明しましょう。シンプルに“お父さんとお母さんは寂しいの”とか、“不安なの。けれど詳しいことはあなたがもっと大きくなってからあらためて説明するね”と言ってあげればよいでしょう。こういったことを話すことは大きな意味で“喪失”を学ぶよい機会でもあります」とシャロム氏はアドバイスする。

精神分析家のビュザン氏はこう述べる。「子どもたちにとって最も重要なのは、“それはあなたのせいではないのよ、あなたのことを怒っているわけではないのよ”などの声がけによって、罪悪感を感じさせないことです。子どもは親の影響を受けますし、2歳児であれば、子どもは完全に家庭の雰囲気に影響されます」

親の感情について説明の言葉がなければ、子どもはドラマティックに想像力を働かせます。「言葉で事実を説明すれば、子どもは何が起こっているかを知ることは禁じられているわけではない、と理解できます。そうでなければ状況はさらに悪化します。子どもの空想の世界は、思春期までとてもパワフルです。説明がなければ、置かれている状況を大変心配してしまいます」とシャロム氏は言う。

より幼い年齢であればそれはさらに明らかだ。「実験の映像から、7〜9カ月の赤ちゃんにお母さんの笑顔を見せると、うれしそうに手足をバタバタ動かします。一方、お母さんが突然無表情になってシリアスな表情を浮かべると、赤ちゃんは動き出してお母さんを揺すります。そして赤ちゃんは完全に当惑して泣き出します。赤ちゃんはお母さんの写し鏡なのです。子どもたちの人生において、とても長い期間、お母さんを真似る行動が続きます。もし母親が不機嫌だったり、ぼんやりしていたりして感情を言葉に表さないとしたら、子どもは鬱々とした気持ちになり、罪悪感を感じるのです」とビュザン氏は警告する。

自分自身、そして子どもがよい状態でいるためにも、まずはリラックスすることが大切だ。

【関連記事】
あなたは職場で泣いたこと、ありますか?
なぜ子どもは疲れを知らないのか?
子どもたちをタブレット中毒にさせないための習慣とは。

texte : Ophélie Ostermann (madame.lefigaro.fr), traduction : Hanae Yamaguchi

Share:
  • Twitter
  • Facebook
  • Pinterest

シティガイド
フィガロワインクラブ
Business with Attitude
編集部員のWish List!
BRAND SPECIAL
Ranking
Find More Stories