妊娠中に2人目を妊娠:過受胎の驚きの事例とは?
Lifestyle 2023.08.22
あるイギリス人女性が1カ月違いで妊娠したふたりの赤ちゃんを同じ日に出産したという耳を疑うようなニュースで、過受胎という非常にまれな現象にスポットがあたった。専門家が解説する。
妊娠中に2人目を妊娠することは過受胎と呼ばれる。photography: Karl Tapales / Getty Images
妊婦の名はソフィ・スモール。妊娠7週間目の最初のエコー検査で、医師たちは彼女の子宮内に胚がふたつあり、大きさにかなりの差があることを確認していた。だが、ふたりの赤ちゃんの在胎週数が異なることに医師たちが気づいたのは2021年の出産の時だったとイギリスの日刊紙『ザ ・サン』が5月21日付の記事で報じている。ふたりの子どもは28日違いで母親の胎内に宿ったという。2人目を妊娠したとき、ソフィはすでに妊娠中だった。最初に妊娠した赤ちゃんは36週目で誕生。後日行われた性交渉で受胎した2人目の赤ちゃんは32週目で生まれている。
こんな特異な現象にもちゃんと説明が用意されている。妊娠中に2回目の妊娠をすることは過受胎と呼ばれるのだ。別の日に行われた性交渉の結果受胎したとはいえ、子どもは同じ日に誕生するため、一種の多胎妊娠に分類されている。どうしてこんなことが起きるのだろう? 通常、妊娠すると排卵は起こらないが、過受胎のケースでは、排卵が継続しているという。「前の月経周期で胎児がすでに宿っているにもかかわわらず、卵子が卵巣から排出されたのです」と、2008年に過受胎に関する論文を発表している産婦人科医のオリヴィエ・パプは説明する。「そして、その後に行われた性交渉で2回目の受胎が起こり、ふたつ目の胚が成長し始めたわけです」。したがって、赤ちゃんの父親がそれぞれ違うこともあり得る。
出産前に過受胎だと診断するには、ふたつの条件が必要だ。エコー検査で、2人目の赤ちゃんが後から母体に宿ったことが証明されること。次に、出産までの間胎児の発育にコンスタントに差があることだ。
過受胎はある種の動物ではありふれた現象だが、人間ではまれ。「現在のところ、科学的に確認されているのは世界中でわずか10例ほどです」と産婦人科医のオディーユ・バゴは言う。
過受胎は不妊治療が原因?
これまで得られた知見によると、生殖補助医療が過受胎の要因だと考えられるケースもある。「この状況で過受胎が判明した女性たちでは、妊娠率を上げるために処方される薬の作用で妊娠後も排卵が継続していました」とバゴは説明する。
レベッカ・ロバーツがその一例だ。このイギリス人女性は2020年に双子を出産し、その後、SNSで自らの体験談を発信し続けている。排卵誘発剤を利用して妊娠に至った彼女は、3回目のエコー検査で2人目の赤ちゃんが宿っていることを確認した。「私の双子の子どもたちは3週間の差で受胎しました。誕生後も数週間が経過するまで、身体の大きさの違いがはっきりわかりました」とユーチューブに投稿された動画で明かしている。子どもたちは科学的に確認された過受胎の14例目のケースだ、と彼女は記している。
体外受精後に過受胎が判明したケースもある。「このケースで過受胎が確認された女性のなかには、すでに自然妊娠した後で胚が移植された例が何件かありました」と産婦人科医のバゴは言う。
子宮の奇形?
遺伝的要因の関与が考えられるケースもある。「妊娠中に排卵が起きないのは、胎盤でhCGホルモンが産生されるためです」と、産婦人科医のパプは説明する。「遺伝的体質によって、このホルモンの分泌量が少ない女性もいます」
これまでに確認された事例のなかには、子宮の奇形が過受胎の原因となったケースも2例ある。こうした例では、子宮の位置や向きが2度目の妊娠が起こりやすい状態にあったという。「この事例は双角子宮やディデルフィスと呼ばれる、形態が通常と異なっていたり、大きさが平均より小さい子宮を持つ患者で確認されています」とパプは説明する。
とはいえ産婦人科医のバゴによれば、心配する必要はない。「過受胎はとてもまれなケースですから、心配する必要はありません。ですから妊娠後に2度目の妊娠を避けるために予防策を講じるのは無意味です」
text: Louise Servans (madame.lefigaro.fr)