「以前より友人が減った」。孤独に直面するフランス人たちのリアルとは。

Lifestyle 2025.02.04

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一種の「友情の後退」に直面し、私たちはますます孤独を感じている。photography: Shutterstock

パリ、水曜日の夕方。最近離婚したばかりの2児の父親であるニコラ(38歳)が15区のレストランに到着すると、そこには5人の見知らぬ客がディナーのために彼を待っていた。しかし彼らの出会いは偶然ではない。彼らは事前に「私生活」「性格」「情熱を傾けていること」などに関する40の質問に答えていた。見知らぬ人同士が友人となるためのディナーをアレンジするマッチングアプリ「タイムレフト」の性格診断アルゴリズムが、全員の間に絆を作ることを目的としたテーブルプランを作成するためだ。

2023年にマキシム・バルビエとアドリアン・デ・オリベイラが共同で設立したタイムレフト社のコンセプトは、多くの人々が苦しんでいるとされる「都会の孤独」と、「友情の後退(友人の数の減少)」に立ち向かうことを目的としているが、その好況ぶりは目を見張るものがある。

見知らぬ人同士を繋げるディナーは毎週、世界60カ国300都市で開催され、昨年は35万人以上が参加したという。「ここ数年、仕事と夫婦生活、そしてふたりの子どもの誕生で、友人関係に割く時間が減ってしまいました」とニコラは自身の交友関係を説明する。「以前より友だちが減っていることに気付きました。離婚してからは、孤独に苛まれることもあります」

これは、何百万人ものフランス人が共有している感情である。フランス財団が2022年に実施した調査では、15歳以上の人口の20%が孤独を感じており、この数字は減少傾向になく、社会生活の存在は孤独感を防ぐことにならず、また周囲に人がいるという恵まれた場合もその17%が、「毎日、またはほぼ毎日」孤独を感じていると答えたという。

段階的な感情の変化

この「友情の後退」は、心理社会学者ドミニク・ピカール(1)によると、段階的に起こるという。「小学校、中学校、高校では、友人を作るのは簡単です。成長するにつれて、カップルはより永続的な方法で形成され、人間関係が変化します。お互いをパートナーと見なし、子どもを持ち、少し内向的になります。また学生時代の友人は仕事仲間に置き代わりますが、この人間関係は以前ほど楽ではなく、楽しくもなく、自発的でなくなりました。同じような人たちと閉じ込もっていると、もっとさまざまな人に囲まれていた時代を懐かしく思うこともあるでしょう。また、離婚のような人生のアクシデントは、人との絆を断ち切ることもあります。離婚によって、共通する友人の何人かが離れてしまうことを、暴力的だと考える人もいることでしょう。また、食事の際に奇数の人数になることが煩わしくなり、夕食に招待されることが減ります。そして、年齢を重ねるにつれて、肉体的にも気力的にも変化が起こり、興味の対象も変わり、他の抑制が生まれ、他人がより退屈に感じられるようになるなど、人生は以前ほど楽ではなくなるのです」

心理社会学者がここで強調しているのは、配偶者、子ども、両親、同僚、隣人、地元のパン屋......といった人たちに囲まれながらも、人は孤独を感じることがあるという点だ。これは人間関係について、もっと自由だった以前ほど友好的に感じられなくなっていることを表している。「現実的に他人と会って過ごす機会が減っているのです。孤独感とは認識から判断するもので、必ずしも現実に基づいたものではありません」と専門家は結論づける。

増える傾向にある孤独な若者たち

このような孤独感は、本来は年齢とともに自然に訪れるものだが、いまや若者にも襲いかかっている。 SOSアミティエフランスの広報責任者であるキャサリン・クレブス氏によると、2023年に受けた350万件の電話(過去最高)のうち、25歳以下の人からの電話が10%を占めたのに対し、2019年にはわずか3%だったと指摘する。「この増加の原因は、広い意味での精神的苦痛が、ほかの原因(うつ病やその他の深刻な問題、または一時的な問題)を圧倒していること以外に、人間関係の問題や孤独感によっても説明できると、彼女は強調している。確かに、若者は既存のサークル(学校、家族、職場など)に囲まれていることが多く、選択肢が豊富にあるにもかかわらず、その中で理解されたり、サポートされているとは感じていないようだ。結婚や家庭生活に満足していた以前の世代とは異なり、若者はよりオープンなセクシャリティに触れており、それに疑問を抱いている。このことは家族モデルや彼らが望む生活の在り方にも疑問を投げかけている。

選択肢が多すぎて、成人期に入ろうとしている時に不安になることもあるだろう。しかし、その選択こそ友情が生まれる場所なのだ。「もともと友情とは自由で、時に神秘的な選択から生まれるものだ」と哲学者のミシェル・エルマンは語る(2)。これは哲学者モンテーニュが親友ラ・ボエシーとの友情について、なぜ彼のことを好きなのかという問いに対し、「彼だったからだし、私だったから」と語ったことを理論化したものだ。「長い間、生温かい感情だと考えられていた友情は、愛と同じくらい強力なものとなりました。間違いなく、世の中の厳しさから身を守るためであることは間違いありません」とエルマン氏。

コロナ禍で意識に

では、この「友情の後退」という現象をどう説明できるだろうか?「コロナ禍の間、人々は家で囚人のような気分になっていましたが、自分を満たすには、必ずしも他人を必要としないという考えにいたりました。隔離とソーシャルディスタンスを徹底した期間中、誰もがひとりで解決しなければならない困難に直面したのです」とエルマン氏は分析する。

エルマン氏はまた、別の政治的な理由についても言及している。「人々の言うことに反して、私たちはイデオロギー的な時代に生きています。政治的思想が再び自己の理想となる時、あらゆる友情を制限する急進主義に行きつきます。私たちは、正しいことをし、正しいことを考え、正しいことを実践していると確信していますが、その信念を共有しない者は、事実上の敵であり、友人とは言い難いのです」。しかし、このような孤立は、「孤独な男は悪い仲間に囲まれている」という言葉を思い出させる。

友情は育まれるべき絆である。「私たちは存在するために他者を必要とするのです」とは、心理社会学者ドミニク・ピカールの言葉だ。「私たちのアイデンティティは、部分的には他者の目を通して、他者と接することによって構築されるのです」。つまり、自分の姿を映し出してくれる人が周りにいないと、自分が何者なのか分からなくなってしまう。愛情がなければ、疑心暗鬼になってぐらついてしまうことだろう。

話を最初に戻そう。パリのニコラのテーブルでは、数時間前までお互いを知らなかった6人のゲストは、幸せそうに夜を終えた。彼らは珍しい出会いを果たしたことを祝福し、出会い系アプリに代わるタイムレフトのサービスに満足していると語る。この方法は、特に女性に安心感と信頼感を与えてくれるようだ。タイムレフトのアプリの登録者数は130万人だが、2024年1月にはピークを記録したという。こうして人と再びつながることは、新しい年の抱負のひとつになるかもしれない。

(1) ドミニク・ピカール著『対人関係とコミュニケーション』、エドモンド・マルク共著、デュノ出版、2015年
(2) ミシェル・エルマン著『友情の絆。魂の強さ』、デュノ出版、2016年。世界孤独の日、1月23日。journee-mondiale.com

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text: Marion Géliot (madame.lefigaro.fr) translation: Eri Arimoto

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