パリジェンヌが出合った、奥深い京都の魅力。
Lifestyle 2021.09.18
パリから京都に移り、繊維業界の老舗や職人と働くマチルダは、「人生で大切なことを京都のほうがより楽しめる」と話す。長い歴史と工芸に魅了される彼女流の豊かな暮らしとは?
アトリエの棚や机は自らデザインして制作。パリのアパルトマンのような風情が漂う。紫のドレスは京丹後で求めた立体的な地紋の白生地を染めてもらい、自分で作った。
デザイナー/アートディレクター
1983年フランス・ブルターニュ地方生まれ。パリの高等装飾美術学校を卒業後、ファッションとインテリア業界で働く。2016年より京都を中心に日本の繊維企業と仕事を始める。
www.studiokaeran.com
日本各地の織元や繊維会社など、約30社と仕事をするマチルダ。3年間、日仏の往復を繰り返した後、京都への移住を決めた。
「京都を選んだのは第一に工芸の街だから。伝統的なものづくりや技術に圧倒されています。国際都市なのに、自然がすぐ近くにあって、静かなのも魅力。ストレスフルだったパリより、いまのほうが豊かに暮らせています」
自宅は左京区浄土寺の古い一軒家の敷地に立つ小さな蔵。古美術商でもある大家が設えた空間に、蚤の市で見つけた古道具や日本の旅先で出合った工芸品をシックに飾っている。近所にアトリエも構えた。偶然気に入る物件を見つけて住み始めたエリアだが、徐々にコミュニティを広げ、京都暮らしを満喫中。
「実家が4代続くレストラン稼業だから、アールドゥヴィーヴルよりart de recevoir(おもてなし)が私にはなじみ深い。人を招いて一緒に楽しむことは人生で大事なこと。いつか京都に家を持って人が集う場所を作りたい」
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HOME
箪笥の上に飾っているのは、蚤の市で見つけた箱や、姫路の友人が営む井上茶寮のカヌレ羊羹の空き箱など。画家・絵本作家のミロコマチコのポストカードや、香水のボトルと。
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お気に入りの場所は光が入る窓辺の小さなテーブル。人をもてなすことが好きで、友人をディナーに招待することも多い。「でもふたりしか呼べないから、広い家に引っ越したい」
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「京都に多いニュートラルカラーに、西洋の感覚で装飾的な色や柄を足すのが好き」。ソファカバーもクッションカバーも日本で買ったものだが、それがよく表れているコーナー。
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ロフトには布団を敷いて寝室に。枕は自分でデザインしたもので、生地は九州で出合った型染め職人のものや久留米絣を使用。階段の手摺にかけた布は蚤の市で見つけたもの。
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ATELIER
古い反物を使った自身のコレクションも手がける。黒紋付はトップに、金糸の織物はスカートに。「忘れられつつあるものをデザインで蘇らせ、新たな価値を見いだしたい」
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アトリエの一角には蚤の市で集めたうつわやオブジェが並ぶ。彼女が選んだ古いものや職人とコラボレートした新作などをオンラインで販売するtakara galleryを現在準備中。
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FAVORITE NEIGHBORS
昭和を代表する庭園家の旧宅の一部を公開。江戸期の建築と調和した枯山水を部屋の内部や縁側から鑑賞できる。「京丹後にある田勇機業で三玲の庭を初めて知った。石のオーガニックな形や幾何学模様に惹かれます」
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「パリっぽさもあるし、お客みんなが楽しそうな賑やかな雰囲気が好き」。元古書店を改装し、本棚にはずらりとナチュラルワインが並ぶ人気ビストロ。ワイン以外にもクラフトビールや珍しいハチミツのお酒なども揃う。
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京うちわの老舗、阿以波で修業した店主が開いた工房兼ショップ。京都の黒谷和紙や古裂を使ったモダンなうちわが並ぶ。紙や布を持ち込んでセミオーダーも可能。「店主は情熱的な人。意気投合してコラボレートするの」
*「フィガロジャポン」2021年9月号より抜粋
photography: Shin Ebisu, editing: Natsuko Konagaya