人生の幸福度を上げる非認知スキルとは?

Lifestyle 2021.12.27

From Newsweek Japan

文/船津徹(TLC for Kids代表)

コロナによってフィジカルな交流が制限されたことで、子どもが友達と親密に関わる機会は激減しました。対人スキル、忍耐力、協調性といった非認知スキルを育てるためにいまこそ、集団の習いごとに参加させて仲間と交流できる環境を作ってあげることが大切です。

iStock-1142171903-a.jpgphoto: iStok

2019年にユニセフ(国連児童基金)とバルサ基金(スペインのプロサッカーチーム)が共同で行った調査で、子どものスポーツ参加は、学習能力、やる気、リーダーシップ、自己肯定感を向上させ、キャリア形成や幸福度にも影響を与えるという報告書を発表しました。

同調査を実施したユニセフのシャルロッテ・ペトリ・ゴルニツカ氏は、「スポーツが子どもの健康や身体成長に影響することは知られていましたが、今回の調査で、スポーツが子どものライフスキルの形成にも強い影響を及ぼす実証データを得ることができました」と述べています。

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ひとりで勉強しているだけでは人間力は育たない。


東京成徳大学の夏原隆之准教授 が、小学3年生〜中学3年生を対象に実施した「子どもの非認知スキルの発達とスポーツ活動との関連性」調査で、スポーツ経験のある子どもは「非認知スキル」が、未経験者に比べて高いことが分かりました。また集団スポーツを長く継続している子どもほど「非認知スキル」が高い傾向があることもが分かりました。

非認知スキルというのは、自信、自己肯定感、チャレンジ精神、粘り強さ、レジリエンス、コミュニケーション力など、物事を成し遂げたり、新たな技能を習得したり、人間関係を形成していく上で不可欠な力の総称で、「人間力」「EQ」「ソフトスキル」とも呼ばれます。

非認知スキルが注目されてきた背景に、2000年にノーベル経済学賞を受賞したアメリカの研究者ジェームズ・ヘックマン博士の研究があります。これは子どもが身につけた非認知スキルの高さが、将来の学歴、キャリア形成、経済的な安定度、人生の幸福度に関係することを明らかにしたものです。

日本、韓国、中国など儒教の影響が残る国々では、伝統的に認知スキル(偏差値や知能指数など数値で評価できる技能)が重視されてきました。しかし前述の調査で明らかになったように、ひとりで机に向かって勉強しているだけでは社会で生きていくために必要なスキルの多くが身につかないのです。

認知スキル(IQ)と非認知スキル(EQ)は車の両輪のような関係です。どちらかに偏っても車はまっすぐに進むことができません。両者をバランスよく育てることによって、子どもは知力と人間力を兼ね備えた人材へ成長し、たくましく社会で自立していくことができます。

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集団の習い事が対人スキルを鍛えてくれる。

子どもの非認知スキルを育てるには、スポーツをはじめとする「集団の習い事」に参加するのがいちばんです。日本ではピアノ、バイオリン、英会話など「個人の習い事」が好まれる傾向がありますが、子どもの非認知スキルを育てる上で考慮してもらいたいのが「集団の習い事」への参加です。

少子化の進行やコロナ禍によって、子どもが友だちと親密に関わり合う機会がめっきり減ってしまいました。その結果、コミュニケーションスキル、忍耐力、協調性、自制心といった非認知スキルが育ちにくくなっています。キレやすい子、自制心の弱い子どもが増え、学級崩壊が社会問題化しています。

集団の習い事、たとえばチームスポーツでは、周囲とコミュニケーションを取らなければ、チームとしてまとまりを欠き、試合で勝つことはできません。仲間と協力し、励まし合い、チームが一丸となって勝利に向かって努力していくプロセスが、子どもの協調性や自制心を育んでくれます。

小学生になると、それまで家族中心だった子どもの人間関係が、友だちへと移行していきます。家から外へと子どもの行動範囲が広がり、自立への道を歩んでいくわけですが、この移行がスムーズにいかないと、友だちがうまく作れず、集団の中で孤立してしまう危険性があります。

友だちを作る力、仲間と信頼関係を築く力=対人スキルを育てるには、学校内の人間関係だけに限定せず、集団スポーツなどの課外活動に参加させて、多様な仲間たちと交流する機会を作ってあげることが大切です。

集団の習い事はスポーツ以外でも構いません。ダンス、演劇、合唱、吹奏楽など、音楽やアート分野、また、ボーイスカウトやガールスカウトなど、集団で自然体験やサバイバル体験を行なう活動も、社会の中で生きていくための様々な力を鍛えてくれます。

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習い事のポイントは「長く続けること」。
 

子どもがどんな習い事に参加しようとも重要なのは「長く続ける」ことです。習い事をしていると、子どもが「やめたい」と言うことがあります。でも簡単にやめさせてはいけません。子どもには「続けること」の大切さが理解できないのです。大人になってから「あの時やめなければよかった」と悔やむ人生ほど後ろ向きなものはありません。

子どもが「やめたい」と言ってきた時は、冷静に「技能」と「やる気」を見極めて、継続するかどうか判断をしてください。そして、本当にやめてもいいのか、子どもに選択をさせます。やめるべき状況でない時には、子どもととことん話し合い、子どもの本心を確かめてください。

その習い事が明らかに子どもに向いていない(技能が平均以上になる見込みがない、仲間と折り合わない)のであれば、やめることも選択肢です。習い事で失敗体験や嫌な思いを繰り返していても非認知スキルは育ちません。

まだ子どもに「やる気」が残っている場合、あるいは、努力次第で平均以上に上手くなる望みがある場合は「やめさせてはいけません」。環境を変えたり(同じ習い事でほかのチームに参加する)、親が練習に付き合ったり、個人レッスンを受けさせるなどして、技能を少しでも上達させる努力をしてください。

「やり抜く力」は、勉強はもちろん、社会に出た時にも様々な経験を乗り越えるために子どもを支えてくれる大切な力です。自ら始めたことに責任を持ち、困難にへこたれず、やり抜く。そんな姿勢は持つ人はどんな場所でも活躍していきます。

一方、やり抜く力が育っていない子どもは、豊かな才能があっても大きく開花しません。やり抜かなければ、成功体験が積めない。成功体験が積めないと、自分に自信が持てない。自信がないからいっそうチャレンジをしなくなる......といった悪循環が起きてしまうのです。

習い事はただやらせればよいのではありません。習い事を積極的に活用して子どもの人間形成につなげることが大切です。一生懸命に課外活動に取り組み、人と競争し、協力をし、成功も失敗も経験をする。習い事をやり抜くことは、子どもが社会で力強く自己実現していくためのトレーニングなのです。

船津徹

TLC for Kids代表。明治大学経営学部卒業後、金融会社勤務を経て幼児教育の権威、七田眞氏に師事。2001年ハワイにてグローバル人材育成を行なう学習塾TLC for Kidsを開設。2015年カリフォルニア校、2017年上海校開設。これまでに4500名以上のバイリンガル育成に携わる。著書に『世界標準の子育て』(ダイヤモンド社)『世界で活躍する子の英語力の育て方』(大和書房)がある。

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text: Toru Funatsu

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