十人十色の恋愛・性愛、 私たちの愛の物語 オンラインで恋に落ち、ひと目でプロポーズ。

Lifestyle 2022.12.29

同性愛、離婚約、不倫愛......多様性が謡われる時代だからこそ、愛への考え方やパートナーとの在り方も人それぞれ。さまざまな愛の物語を聞きました。今回はオンライン恋愛の末に結婚したあるカップルのお話。

中西紀徳 〈ホテル勤務・33歳〉 & 中西綾子〈福祉職・44歳〉

中西夫婦はオンラインで交際を始め、 1カ月後に初対面した日に結婚を決めた。「コロナ禍でも、オンラインだからこそ関係を深めれた」と、ふたりは話す。

出会いは、オンラインの婚活パーティだ。コロナ禍で自宅にいる時間が増えて真剣に婚活を始めた紀徳さんとは対照的に、当初綾子さんは結婚相手を探していたわけではなかったという。
「コロナ禍で友人にも会えないし、婚活というより誰かと話したくて参加しました」(綾子さん)  その時は、 10歳以上の年の差もあり、お互いに恋愛対象に見えなかったが、 1カ月後のオンラインパーティで偶然再会。全国転勤の可能性がある紀徳さんは、「結婚したらどこに住んでもいい」と気さくに話す彼女を意識するようになった。綾子さんも、前回よりもトークスキルを上げた彼の向上心に好感を抱いた。

2日後に1対1のオンラインお見合いで、紀徳さんが告白。綾子さんは「正直、この人だと運命を感じたとか、決め手があったとかではなかったんです。コロナですぐに会うわけではないし、まずは一歩踏み出してみようと思った」と、振り返る。「何でも本音で話せるパートナーを探し求めていた」という紀徳さんは、綾子さんにまず「お互いのことを率直に話し合いたい」と提案した。生い立ちや過去の恋愛や年の差、お金のこと......いろいろなことを話し合ったという。紀徳さんは、体調を崩した過去も正直に打ち明けた。
「付き合ってすぐに、そんな重い話をされたら引いてもおかしくない。でも彼女は、真剣に話を聞いてくれて受け止めてくれた。うれしかったですね」(紀徳さん)

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しかし、当時は日本全国で緊急事態宣言中。熊本と東京で遠距離恋愛中のふたりは一度も会うことができなかった。そこで、毎日8〜10時間ビデオ通話をしながら、一緒にテレビを見たり、ごはんを作って食べたりして過ごした。まるで、画面越しに同棲しているかのように。 綾子さんは、ためらうことなくすっぴんも見せた。
「時間を無駄にしたくなかった。ダメならダメで次に進もうと。オンラインだからこそさらけ出せたし、だらだら会っていたら逆にうまくいかなかったかも」(綾子さん) 
そして緊急事態宣言が明け、ついに熊本で初めて会うことになった。綾子さんは「私は怖くなかったけれど、友人には、怖くない?その男は実在するの?と心配されました。飛行機の便を聞かれて、熊本に着いたら連絡をするように念を押された」と笑う。 

しかし、そんな心配は杞憂に終わり、出会った瞬間、お互いずっと隣にいたかのような居心地の良さを感じたという。紀徳さんは、綾子さんを「近くのチャペルでイベントがあるから行こう」と誘った。実は、サプライズでプロポーズしようと決めていたのだ。
「オンラインで一緒に過ごす中で、彼女には負の部分をさらけ出せて、この人しかいないと思った」(紀徳さん) 
チャペルで跪いて指輪を差し出す紀徳さんの求婚を、 綾子さんはすぐに受け入れた。
「まさか、会ったその日にプロポーズなんて予想していませんでした。でも、私たちの結婚のタイミングはいまなんだって思えたから、迷いはなかった」と話す。
翌日には婚姻届を出した。 

昨年、ようやく熊本で同居を始めた。「一緒に暮らしてからも、オンラインデートの時とギャップは感じない。 ケンカもしません」と、口を揃える。いちばんの変化は、見つめ合う時に、スマホの画面越しではなく目の前に相手がいることだ。
「初見で結婚したと言うと驚かれることもあるけれど、 特別な恋愛や結婚をしたとは思っていません。告白、デ ート、同棲という普通のカップルと同じことを、オンラインでぎゅっと凝縮して経験しただけだから」(綾子さん)

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*「フィガロジャポン」2022年3月号より抜粋

text: Akane Sujino , photography:Petra Richli

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