アーティストで2児の母、草野絵美流「0歳からの教育」とネオ子育て。

Lifestyle 2022.03.12

From Newsweek Japan

東京藝術大学非常勤講師を務め、長男のNFTアートでも話題の草野絵美。人気シリーズ『0歳からの教育』の最新版は「しっかりしたエビデンスに基づいた記事」により、大切なことが伝わりやすい本だと言う。

0saimook-invu-20220210-top-thumb-720xauto-363684.jpeg ニューズウィーク日本版SPECIAL ISSUE『0歳からの教育2022』より

アーティストとして活動する傍ら、東京藝術大学非常勤講師も務める草野絵美。2012年11月に長男、21年3月に次男を出産した2児の母でもある。現在、子育て本『知的好奇心のアンテナを伸ばす ネオ子育て』を執筆中だ(CCCメディアハウス刊、3月末発売予定)。

ニューズウィーク日本版ではこのたび、SPECIAL ISSUE『0歳からの教育2022』を刊行。その都度、新しい研究成果などを採り入れながら、25年以上も前から出版され続けてきた人気シリーズの最新刊だ。

実は草野、長男の出産後に『0歳からの教育2013年版』を手に取っている。それから9年がたち、新たに『0歳からの教育2022』(以下、2022年版)を読んでみて、どう思ったのだろう。

以前とは大きな違いを感じた――という草野さんに話を聞いた。特に目を引いたのは、次の部分だったという。

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「『ジェンダーの型にとらわれないため』の項目(30ページ)は非常に興味深かったです。私自身、男の子だからこう、女の子だからこうというパターン化をできるだけなくしていきたいと思っています。3、4歳になると、自然と性差に興味を持つようになり、『僕は男の子だから青。ピンクは女の子の色』などのパターン認識を始めるので、『好きなほうでいいんだよ』などと意識的に声掛けをしています」

たとえば、子ども同士のやり取りの中で、「僕はピンクが好き!」と言った時に「ピンクは女の子の色だからおかしいよ」と言われたり、言ってしまったりして、その子が二度とピンク色を着れなくなることもある。

心の傷をつくることにも繋がるので、ジェンダーの型にとらわれないことは大切だと伝えていくことが非常に重要だと草野さんは考えている。
 


また、2022年版は愛情表現やスキンシップ、個性を大切にするなどといった内容が増えている印象もあったという。

草野さんも自身の子育てにおいて、早期教育やIQを高めるといった子育てよりも、愛情やスキンシップや個性を大切にした子育てのほうが、子どもにとっても親にとっても幸福感の度合いが高まるのではないかと思っている。

「子育ての根幹ともいえる触れ合いや愛情表現などによって、幸せホルモンと呼ばれるオキシトシンが脳内で分泌されて心が安らぎ、その子のレジリエンス(心の回復力)が鍛えられ、いろいろなことに挑戦できる子になっていく。しっかりしたエビデンスに基づいた記事により、読み手にこれらのことが伝わりやすくなっているのもいいなと思いました」

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親が無理をせず、子どもと一緒に楽しめることをする。
 

草野(ツイッターはこちら)と言えば、昨年夏、小学3年生の長男がアーティスト・Zombie Zoo Keeperとして描いた21点の作品が、NFT(※)で海外のコレクターに買われ、160万円の値がついたことでも話題となった。さらに東映アニメーションによって「Zombie Zoo」アートを原案としたアニメ化も決まっている。

「親子で共通して楽しめることを楽しむ」――そんな彼女の子育て方針が、思いもよらない形で世間を賑わすことになった。

(※NFT〔非代替性トークン〕とは、画像・動画・音声など、ブロックチェーンの技術を用いて作られる偽造不可能なデータのこと。唯一の所有権を表すことができる)

 

草野とZombie Zoo Keeperこと長男、次男。

「私自身、コロナ禍でプレゼンテーションの機会を失った作品があり、2021年4月に初めてそれをNFTとして出品したという経緯がありました。家族で食事中にNFTについて話す機会もあり、それを覚えていた息子が『夏休みの宿題としてNFT作品を作りたい』と言い出したのがきっかけでした。私が先にそれを体験していて、なおかつ興味のあることだったので、どういう作品がいいかを話し合いながら、無理せずサポートすることができました」

親が一緒に楽しめることをする、その体験を積み重ねる――。草野はこのことを意識的に行っている。

「子どもの遊びに『付き合う』のではなく、親も一緒に楽しめることをしています。親が興味のあることと合致すれば、無理せず一緒に楽しめると思います。お金をかけず、親が一緒に楽しめることをする。そういう体験の積み重ねが、無理なく子どもの自尊心や創造性を育むように思うのです」

「無理をしない」ことも、草野さんの子育ての重要な指針だ。

児童虐待防止の啓発活動「こどものいのちはこどものもの」にも携わっている草野にとって、虐待は他人ごとではない。居眠り運転のようなもので、慣れない育児で疲労困憊になった時、ふと魔が差してしまう。これは誰にでも起こり得ること。だからこそ、子育てで大事なのは親の心身の健康だと考えている。

「私自身、親になる前は虐待なんてありえないと思っていました。ですが親になり、それは見当違いだったと気付いたのです。虐待について知っていくうちに、虐待の実情は親が精神的に追い詰められていることに原因があると分かりました。逆に言えば、親の精神的な余裕こそが、子どもの健康を守るのです。子どもが生まれても自分を後回しにせず、人生を謳歌していってほしい。そう願っています」

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親がやりたいことを一生懸命やっている背中を子どもに見せる。
 

彼女自身、そういう親の背中を見て育ってきた。草野の母親はイラストレーター/エッセイストとして活躍中の草野かおる。専業主婦だったが、50代からブログを書き始めて作家デビューした。

娘がブログを書いている姿に刺激され、PTAの壁紙新聞などに書いていた防災の情報をブログに書き始めたところ、東日本大震災時に拡散されたことで、書籍化が決まったのだという。

「この間も、還暦の同窓会で1泊2日の旅行に行く予定があったらしいのですが、そのお金があれば防災士の資格が取得できるとのことで、同窓会はキャンセルして、資格取得にお金を使っていました。もう60代ですが、『次はTikTokやってみようかな』と言っていたり。そういう姿に、私も息子も刺激を受けています。いくつになっても挑戦し続ける姿は、やはりかっこいいなと思います」

また、子どもの創造性を高めるために、絵本の読み聞かせも意識的に行ってきたという。

0~2歳では、気に入った絵本を繰り返し読み聞かせる。ストーリーが理解できるようになる3、4歳からは、近所にある図書館に家族で出向き、たくさんの絵本を借りた。1人6冊までなので、草野、夫、息子と3人分の利用者カードがあれば、18冊の絵本を2週間借りることができた。

「絵本の中には、私も息子も行ったことがない国の物語、まったく違う時代設定の物語など、いろいろな種類のものがあり、語彙力を養う意味でも役立ちましたし、私自身もすごく楽しめました」
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『おやすみなさい おつきさま』......いい絵本は読み継がれていく。
 

2022年版でも、絵本ナビの磯崎園子編集長が「情緒を育むためのおすすめ絵本」を紹介している(86ページ)が、この中にも草野さんが実際に手に取ってきた絵本が数多くあった。

「なかでも『おやすみなさい おつきさま』(マーガレット・ワイズ・ブラウン著、クレメント・ハード絵/評論社刊)は長男が大好きだった絵本。何度も読み聞かせをしていました。今いまちょうど次男には『がたん ごとん がたん ごとん』(安西水丸著、福音館書店刊)を読んであげているところです。『よるくま』(酒井駒子著、偕成社刊)や『ずーっとずっとだいすきだよ』(ハンス・ウィルヘルム著・絵、評論社刊)もよく読んでいました。日々、新しい絵本がたくさん出てきていますが、やはりいい絵本はずっと読み継がれていく気がします」

また、子どもが興味を持ったものを先回りして入手し、目につくところに置いておく方法も有効だという。

最近、戦国武将に興味を持ち始めた長男のために、歴史漫画のセットを一式購入し、何も言わずに家の片隅に置いておいたところ、毎日のように眺めているとか。戦国武将を解説しているYouTube番組も一緒に観て、歴史を学び直す楽しいひと時となっている。

「ただ、得意不得意があるので、私が不得意な分野は夫に担当してもらっています。彼は工学系の研究者なので、プログラミング、3Dプリンターなどが得意。そういう部分は彼にお願いしています。それだけでなく、日々の子育てでも、頼れるところは頼るようにしています。家族はもちろん、行政のサポートなど、活用できるものはなるべく使い、とにかく自分の心身の状態を健康に保つこと。そうして親に余裕ができれば、それだけで子どもは安心して、その子らしく成長できるのではないのかな、と思っています。子どもの知的好奇心を伸ばし、親も一緒に成長していく。このマインドこそが、私が提唱している『ネオ子育て』なのです」

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ニューズウィーク日本版SPECIAL ISSUE「0歳からの教育2022」が好評発売中。3歳までにすべきこと、できること。発達のメカニズム、心と体、能力の伸ばし方を科学で読み解きます

 

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interview & text: Mitsuko Okada

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