そこは自分のための小さな美術館 花や緑とともに写真が息づき、空間が自然のアートになる。
Lifestyle 2022.10.07
より身近に、親しみやすく。ボタニカルな視点と、額装された写真を窓のように見立てて、独自の野趣を家の中に呼び込む飾りつけ。渡辺礼人のアートとの暮らし方はオーガニックだ。
渡辺礼人 ファーヴァ デザイナー
花屋を営む夫婦らしい、生い茂るようにたくさん並べられた鉢植えの木々。その緑に出迎えられて2階に上がると、明るいリビングの奥にあるひと際広い壁に、写真家の今坂庸⼆朗による大きな川の写真が飾られている。
ポエティック・スケープのオーナー柿島貴志からの紹介で出合った今坂庸二朗の写真。左奥の角に置かれた壺は、友人の野口寛斉の作品。
「風景を切り取った写真は、窓のようだなと気が付いたんです。まさに借景ですね。ここはキッチンダイニング、リビングとあって細長いスペースなので、より奥行きを感じられたらいいと思って選びました」
横浪修の『Assembly』シリーズからの1枚。
パリの美術写真家テリ・ワイフェンバックについて「なぜか三角屋根の家に惹かれます」と笑う。
ポエティック・スケープで出合った、モスクワ出身で日本でも活動しているクリエイター、エレナ・トゥタッチコワが窓を写した写真。
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横浪修からエレナ・トゥタッチコワまで。そこかしこに飾られた写真は、自然、とりわけ緑が取り込まれたものが多い。家中に生花やグリーンが広がっていて、その写真たちとリンクするようだ。
ダイニングテーブル近くの壁に飾られているのは、佐久間里美の三角屋根の家。
トゥタッチコワの作品を玄関にも。レンズ越しの風景と植木たちが調和する。
「気持ちのいい写真が多いですね。深い緑が好きで、海より山派。職業病なのか、カメラマンがどんなふうに緑を見ているのか想像して楽しんでいます」。植物たちのためにも窓から光を取り込み、空気をよく循環させるようにしているという。そのせいか“気持ちのいい”写真たちも、一層生き生きして見える。
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ポエティック・スケープ
2011年のオープン当初、日本ではまだ定着していなかった“アートフォト”を紹介。近年は絵画、映像作品などの展示も積極的に企画している。額装から自宅での飾り方、保管まで、一貫した提案をしてくれるのでアート初心者にもおすすめ。店奥のブックコーナー(左)も人気。
Poetic Scape
東京都目黒区中目黒4-4-10
tel:03-6479-6927
www.poetic-scape.com
*「フィガロジャポン」2022年9月号より抜粋
photography: Wataru Kakuta text: Rio Tomohiro