十人十色の恋愛・性愛、 私たちの愛の物語。 別居婚という選択、 子育て後も育む夫婦愛。

Lifestyle 2023.01.02

同性愛、離婚約、不倫愛……多様性が謡われる時代だからこそ、愛への考え方やパートナーとの在り方も人それぞれ。選択的別居婚を選んだふたりの暮らしとは?

別居婚という選択、
子育て後も育む夫婦愛。

タカシ〈 会社取締役 / 編集者・47 歳 〉& エミコ〈 会社取締役 / 学生・52 歳〉

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本の民法 752 条には「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」と定められている。単身赴任などの特段の理由を除けば、夫婦の同居は義務だ。この法律に縛られているせいなのか、培ってきた文化のせいなのか、多くの日本人にとって結婚=同居は常識になっている。しかし、なかには長年、「選択的別居婚」を続ける夫婦もいる。

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タカシさんとエミコさんは、深い絆と愛情で結ばれている別居婚の夫婦だ。出会いは20年前。タカシさんが、エミコさんの主催するイベントに参加したことがきっかけだった。それからしばらく会うことはなかったが、1年ほど経った頃、ふたりとも同郷だと発覚し、急速に距離が縮まっていった。恋人になるまで時間はかからず、半年で同棲。そして、エミコさんの妊娠が発覚した。 

駆け出しのフリーランスライターだったタカシさんは、 ワーキングウーマンのエミコさんに代わり、原稿を書きながらミルクをあげたりお風呂に入れたり、育児に積極的に携わった。
「協力的で、夫として何も不満はなかった」とエミコさんは言う。ふたりとも稼ぎが不安定だったため会社を立ち上げ、東京で仕事の幅を広げていく。しかし、 小学校高学年になった娘が心身に不調をきたし始め、環境を変えるために、母子だけで地方移住を決意した。
「タカシと離れて暮らすことに不安はなかった。娘のこともひとりで抱え込まずに、いつでも相談できる関係を築けているという自信があったんです」(エミコさん) 

娘が成長し、寮に入ったことをきっかけに、エミコさんは東京にいるタカシさんとの同居を一時的に再開させた。

「付き合って半年で娘を授かったので、正直、ふたりだけの生活に戸惑いはあった。でもタカシは同居するからといって家事を丸投げすることなく、ストレスのない夫婦の暮らしを実現できました」(エミコさん)
「久しぶりに旅行に出かけた時、すごく新鮮で楽しかったんです。同居を再開してからも性的な接触はないけれど(笑)、何も不満はありません」(タカシさん)  

現在、自分の目標に向かって、京都の大学に通っているエミコさん。夫婦はまたもや別居婚となったが、今後はお互いのやりたいことに応じて、同居するかしないかを考えていくつもりだという。
「私たちにとって、結婚は義務によって縛られるものではありません。お互いの歩む道を見守り、困ったことがあったら助ける、という自由意志に基づいて成り立っています」(エミコさん)
「出張先で高熱を出した時、エミコは病院まで迎えに来てくれて、体調が戻るまでずっと看病してくれました。 当たり前かもしれないけど、そういうことの積み重ねによって、お互いが唯一無二の存在になる」(タカシさん)
価値観と心が一緒であれば、ふたりにとって物理的な距離は何の障壁にもならない。たとえ毎日顔を見ることはなくても、「ただいま」と「おかえり」の挨拶を交わさなくても、お互いが特別な存在であるという気持ちが揺らぐことはない。

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「私は、好きなこと見つけたら、とことんチャレンジしたいタイプ。タカシのように自立したパートナーじゃなければ結婚生活はとうの昔に破綻していたはず。同居していようがいまいが、心地いい距離感で支え合っていける存在なんです」(エミコさん)
「エミコは知的で好奇心旺盛。友人から、なんで別居しているの?と聞かれるけど、彼女の自由な生き方を誇りに思っているし、尊重したい。それに僕はあまり人に相談しないタイプだけど、どうしても迷った時はエミコにだけ相談するんです。何があっても動じないし、感情が安定していて冷静な判断ができる人だから。僕は結婚して精神的にすごく成長できたと思う」(タカシさん)
 一緒に暮らしていても心が離れている夫婦は少なくない。かたや自由意志で別居婚を選んだふたりは、紛れもなく確かな絆で結ばれている。

*「フィガロジャポン」2022年3月号より抜粋

text: Yoko Sueyoshi  illustration:Ewelina Skowronska

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