妊娠中のランニングは避けるべき? 婦人科医が解説。
Lifestyle 2023.01.21
妊娠中の女性は9カ月間ランニングシューズを仕舞っておくべき? フランスのふたりの婦人科医が答えてくれた。
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妊娠の経過が良好であれば、妊婦でもランニングをすることは可能。photography : Getty Images
300m障害で2度ヨーロッパチャンピオンに輝いたドイツ人陸上選手ゲサ・クラウスが、昨年12月31日にドイツの都市トリールで行われた5kmのロードレースに出場して17’31”というタイムを出し、輝かしい戦歴に新たな記録を加えた。力強い走りぶりが各方面から賞賛されたものの、地元メディアに掲載された妊娠5カ月のお腹の写真に、SNS上では多くの人が反応。なかには「赤ちゃんにとって危険!」という声もあった。妊娠中に走るのは本当に危険なのだろうか? 妊娠中の9カ月間はランニングではなく、水泳やヨガをするべきなのだろうか?
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5カ月まではランニング、以降はプールがおすすめ。
「妊娠の経過が良好な場合、5カ月までは走ってもかまいません」と国立スポーツ体育研究所婦人科医のキャロル・メートルは断言する。専門家によると、運動をすることは、逆に、妊娠中の体調維持だけでなく、出産をスムーズにする効果もあるという。「スポーツは体重増加を抑え、筋力低下を防ぐだけでなく、産後うつのリスクの軽減にも役立ちます」とメートルは指摘する。
5カ月目以降はランニングよりも、プールに行く方がいい。「ランニングは衝撃の強いスポーツです。お腹が大きくなるにつれ会陰が支える重量が徐々に大きくなると、尿漏れのリスクが増し、膝や腰にも負担がかかります。背骨のカーブも変化しますから、坐骨神経痛や腰痛になるリスクもあります」とメートルは注意を促す。医師がすすめるのは、エリプティカルマシンやノルディックウォーキング、ゴルフ、アクアバイクのような運動だ。
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特定のリスクがあるわけではない。
一方、産科・婦人科医のアラン・タンボリーニは担当医師の意見を聞くようすすめる。「実際には、定期的に走っている妊婦であれば、最初の3カ月間、さらに妊娠が順調に経過している場合は、それ以後でもランニングを継続することに特定のリスクがあるわけではありません」と医師は言う。
走るたびに赤ちゃんの頭が揺さぶられてしまうと想像する人もいるようだが、心配はいらない。「胎児は羊水で満たされた胎嚢で保護されているので、私たちのように運動の衝撃を直に受けるわけではありません」とメートルは言う。
流産のリスクについても同様だ。「受精卵の成長が妨げられる要因は、環境などの偶然によるものです。自然流産には遺伝的素因あるいは遺伝子が関係しています。どんなスポーツであれ、妊娠を中断させる原因にはなりません」と医師は話す。ただし、何らかのリスクがあったり、過去に流産を経験したことがある場合は、スポーツをするのは控え、休養を優先するべきだ。
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強度と時間を減らす。
とはいえ妊娠中に走るときは無理は禁物だ。「走行距離や時間の増加につながる新しいトレーニングメニューに挑戦するのは避けるべきです」とタンボリーニ医師は忠告する。赤ちゃんを保護するためには、走る速さのコントロールも重要だ。「胎児の健康を守り、赤ちゃんが酸欠にならないよう、中程度のスピード、つまり息を切らさずに話せるくらいの速さで走るべきです」とメートルは強調する。
普段1時間走る習慣のある人なら、2月までは40分間、その後5ヶ月までは最大30分まで走ってかまわない。また平坦なコースを選んで、関節を保護するために適切なシューズを選ぶのも忘れずに。
text: Sevin Rey (madame.lefigaro.fr)