性的に満足しているカップルに共通する6つの秘密。
Lifestyle 2023.02.09
カップルの欲望、快楽、幸福を持続させることは可能だと、多くの研究が証明している。心理学の研究者たちが、エロスの太陽が輝き続けているカップルに共通する6つの秘密を解明! フランス「マダム・フィガロ」のリポート。
性的に充実しているカップルの秘密。photography: Getty Images
#1. 融合ではない親密さ。
何でも話せる。ぴったり寄り添って何をするのも一緒。考え方も、余暇も、友人も共有している。まさに一心同体。ただ、セックスにはふたり必要だ。
「親密さを融合と捉えるこの発想こそ、カップルの関係を脱エロス化する元凶です」と、精神分析家で心理セラピストのアンヌ=マリー・ブノワは説明する。「相手がもうひとりの“自分”、すなわち一種の分身となる。あるいは兄弟姉妹となる。そうすると欲望は徐々に弱まってゆき、いつしか消えてしまいます」
こうした親密さは秘密の花園の存在を許さない。それぞれが個体性を保ち、自分自身に立ち返り、相手の欠如を感じ、関係を育てるのに不可欠なのは、むしろ秘められた部分なのだ。
解決策:
個体性を養うこと。心理セラピストのパトリック・エストラードは恋人たちを二艘の船に乗ったふたりの水夫にたとえる。「朝に港を出た彼らは夜に再会し、その日に手に入れた宝物と冒険を分かち合い、交換し合う」。こんな条件下なら、相手に対する好奇心と興味を新たにすることができる。
性科学者もセラピストもこの点で意見が一致している。恋愛関係を育てる親密さは3つの要素からなる。私、パートナー、私たちふたり。その土台となるのは、信頼関係、安心感、感動や悩みの共有。そして、対等さを基盤として、自分個人の利害ではなくふたりの関係を守るという精神をもって、意見の不一致を認め、それに対処する能力だ。
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#2. 官能的な雰囲気。
電話で「ビズ、ビズ」と言い合う。フレンチ・キスを交わしたり、ソファで相手の身体に手を這わせるような年齢はもう過ぎたと考えている。こんな状態で、一体どうやって「あなたが」ではなく、「ふたりで」という気持ちになれる?
「官能は自然発生的なものという思い込みは根強い。一部の人にだけ与えられた才能であるという思い込みと同様に」と、セックスセラピストのアラン・エリルはしばしば指摘している。こうした信念は、エロティシズムとは人間の文化的構築物であり、各人の歴史や経験する出会いによって個性化されることを忘れさせてしまう、とエリルは続ける。
解決策:
ボディタッチを欠かさないこと。官能は、五感から始まる。なかでも触覚は生まれた瞬間から完全に機能する唯一の感覚だ。神経科学の発達によって、触覚は愛情ホルモンと呼ばれるオキシトシンの生成を促すことがわかっている。パートナーに手で触れると気持ちが落ち着くのはこのためだ。それだけではない。アメリカで行われたある研究(ウィリアムズ、クランケ、1993年)が、触覚はとりわけ視覚的接触と結びついた場合に性的欲望を強化することを明らかにした。北米では「魅力のドクター」の名で知られる、アメリカの心理学者ジェレミー・ニコルソンは、最も刺激的な触れ方は、(たとえば膝のような)ある特定のポイントから出発し、撫でる動作(太腿を撫でるなど)だと解説している。
顔に軽く触れる、腰に手を添える、背中をそっと愛撫する、こうした日常のスキンシップはいわば、カップルのエロスの道に点々と置かれた白い小石のようなもの。キスも欲望が持続するカップルの生活のなかで重要な位置を占める。自動的なビズは論外。かといって必ずしもフレンチキスがいいというわけでもない。カップルに必要なのは「あなたは私のお気に入り」という気持ちが伝わる官能的なキスだ。
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#3. 約束を習慣化する。
あなたは燃え上がる火のように欲望が突然湧き起こるのを待っている。しかしエロティシズムはコミュニケーションと同様に日頃から手入れするもので、配慮とケアを怠れば徐々に衰えていってしまう。「性欲は自然に湧き上がるものという考え方は、長いスパンで見るとまったく非現実的である」と、シアトル大学心理学教授のニコル・K・マックニコルズ(1)も認めている。
性欲の目覚めを受け身な姿勢で待っていると、フラストレーションが溜まり、パートナーだけでなく自分自身に対しても恨みがましい気持ちになる。そして、もう欲望を抱かないのだから、私たちはもう愛し合っていないのだ、と愛情に疑問を抱くことにもなってしまう。
エロティックな約束の時間をスケジュールに書き込むこと。婦人科・男性病学・サイコマティック専門医のシルヴァン・ミムーンは、診療に訪れる性生活に悩みを抱えたカップルに、相手に時間を割くことを重視せず、ほかのあらゆること(子ども、スポーツ、余暇など)を優先してふたりで過ごす時間が後回しになっていることを指摘している。
医師はその上で、まずは官能的な約束を設定することから始めましょう、とアドバイスする。スケジュールにエロティックな約束の予定を入れることでパートナーへの欲望が高まり、親密さが増すことは複数の研究によって実証されている。
ただしこのデートでは、官能を共有する気持ちをもって、遊び心のある和やかなムードを作ることが大切。不安感や「いいところを見せよう」という焦りは持ち込まないように。最初のデートで、互いに自分のファンタズムを明かし合ったり、一緒に映画を見たり、エロティックなテキストを読むのもいい。共同研究者マスターズ&ジョンソンが開発した、感覚に意識を集中させるのに役立つテクニック「sensate focus」を実践してみるのもいいだろう。やり方は、互いに相手に軽く触れ、そっと愛撫する(性器には触れない)というもの。触れられる感覚に集中すると、やがて精神のレベルを離れ、自分の身体を実感できるようになる。
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#4. ファンタズムを共有する。
あなたは相手にショックを与えるかも、あるいはその通りのことを実際に行おうとしてしまうかもと恐れて、自分の性的なファンタズムに厳重に鍵を掛けている。その結果、退屈、ルーティン、フラストレーションがだんだんとベッドの中に侵入してくる。
性的なファンタズムにはいくつもの思い込みが結びついている。なかでも広く流布しているのが「私にはファンタズムはない」あるいは「自分のファンタズムを人に話すと現実になる」というもの。「ひとつめは自己検閲に当たります。無意識の防御機能です(私は自分の欲望が怖い、私は自分の欲望に罪悪感を抱いている、したがって私は厳重に鍵を掛ける)」と精神分析家のアンヌ=マリー・ブノワは解説する。「ふたつめの考えは、恐怖あるいは欲望を表しています。ファンタズムは個人的かつ/または集団的な禁止に属するものです。私たちはファンタズムによって想像の世界で禁忌を犯すことができる。そうして欲望が強化され、快楽が増大するわけです」
さらにブノワは、ファンタズムを抱いたり、それを人に話したからといって、現実になるわけではないと明言する。
相手を信頼し、打ち解けた雰囲気のなかで、お互いの性的なファンタズムについて話す。大げさに考えず、何気ない打ち明け話のなかでこうした話題に触れてみよう。ちょっぴりユーモアを交えたり、相手をよく知るためというアプローチで臨むといい。
重要なのは、互いの限界を尊重すること。くれぐれも、プレッシャーを与えたり、相手を説得しようとしたり、ショックを与えて相手の「緊張を解そう」などと思わないこと。「ロールプレイングを想定した質問で、この想像の世界をさらに広げることもできます。どんな人物になってみたい?どんなお願いをしてみたい?といったように。言葉を解放し、共通の遊びの空間をふたりで作ることを目指しましょう」とブノワは提案する。
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#5. 新しいものを取り入れる。
必勝チームは変更できない、と考えているかもしれない。しかし、どんなドリームチームだあって、自分たちの快適ゾーンから出なければ、過去の栄光に安住して、能力を発揮できなくなることもある。「この思い込みは認知的バイアスと呼ばれるものです(たとえば、すべてかゼロか、黒か白か、といったタイプの思考の癖)。新しいものを取り入れることは、置き換えるという意味ではなく、すでにあるものから何かを作るという意味なのです。それこそ創造性の定義に他なりません」とブノワは言う。したがって、セックスのたびに新しい試みに挑戦することではなく、自動操縦モードで行動しないことが大切なのだ。
解決策:
「性的欲望は、信頼、安心感、新しさ、興奮、冒険、これらのバランスが取れた空間で芽生える」とマックニコルズは主張する。「性的に満足していると語るカップルには、月に1度何か新しいことを試みる人もいます」。過激なことをする必要はない。欲望と快楽を再活性化し強化するには、ちょっとした工夫(インテリア、時間帯、言語コミュニケーションの方法を変える)を加えれば十分なことは、これまでの研究でも実証されている。
アイデアはさまざまだ。ロールプレイングを選ぶカップルもいれば、ホテルに行く、なかにはタントラの技法を取り入れるカップルもいる。ゲシュタルトセラピストで『性、愛、ゲシュタルト』(インター出版刊)の著者でもあるブリジット・マルテルは、「王様か女王様か」というゲームを考案した。これはカップルのどちらかが一晩、相手の欲望に奉仕するというもの。もうおわかりだと思うが、大切なのは「一緒に遊ぶ」ことだ。
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#6. 批判しない、比較しない。
自分たちのセックスの回数を数え、周囲のカップル(あるいいは統計の数字)と比較し、自分たちのテクニックのレベルを査定し、いまの性生活と若い頃のそれと比較する……。こうした行為はどれも、失われた黄金時代の幻想を持続させ、あなた自身の自発性を束縛し、自信を喪失させてしまう。
セックスは、振り付けのように学んだり習得するものではなく、特別なコミュニケーションであり、創造であると、専門家たちは繰り返し言及している。したがって自分と人を比較することはナンセンスの極みだ。
性的に満足しているカップルは「自分たち自身の性に好奇心を持ち、どんなものが自分たちを刺激し、興奮を強化するのか探求したいと思っている」とセクシャリティ専門のアメリカ人神経科学者ナン・J・ワイズは分析する。欲望に火をつけ、悦びをもたらしてくれるものは、ふたりで取り組む創造の成果であり、自分たちの感覚と好奇心に手綱を預けてはじめて芽生えるのだ。
性的に満足しているカップルは、コンプレックスやプレッシャーなしに、ともに幸せになり、喜びを与え合うことを目指している。このテーマに関する数多くの研究をまとめたウェブサイト「サイコロジー・トゥデイ」でマックニコルズ医師が述べているように、「セックスとは不完全で、でたらめで、ときには滑稽なもの」なのだ。
出典:
Nan J. Wise, Ph.D、Nicole K. McNichols, Ph. Dによる記事(掲載元『Psycology Today』)は以下の研究が元になっている。
Wise, N. (2020). Why Good Sex Matters : Understanding the Neuroscience of Pleasure for a Smarter, Happier, and More Purpose-filled Life. Houghton Mifflin.
Wise, N. J., Frangos, E., & Komisaruk, B. R. (2017). The journal of sexual medicine.
- E. Sandra Byers (2005) Relationship satisfaction and sexual satisfaction ; The Journal of Sex Research, 42:2, 113-118
- The battle against bedroom boredom: Development and validation of a brief measure of sexual novelty in relationships. The Canadian Journal of Human Sexuality, (2018).
Schwartz, P., & Young, L. (2009). Sexual satisfaction in committed relationships. Sexuality Research & Social Policy, 6(1), 1-17.
text: Lucie Caux (madame.lefigaro.fr)