疲労回復効果の高い、"深い睡眠"を得る方法とは?

Lifestyle 2023.06.14

夜、寝ている間に睡眠の状態は刻々と変化する。なかでも深い睡眠(ノンレム睡眠)は記憶を定着させ、身体の回復に役立つ点でもとりわけ重要だ。専門家ふたりに、どうやったら睡眠の質をあげられるのかを聞いた。

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ノンレム睡眠のメカニズムを知り、最大限の効果を得る。photography: Getty Images

朝すっきり目覚めるには質の高い睡眠が不可欠であることは誰もがわかっている。ただ、平均的な睡眠時間は7時間であることは知られているものの、それでは「良い」睡眠とはなんだろう。目覚めが悪くて集中力も欠ける原因となる「悪い」睡眠との違いはどこにあるのか。カギは特定の睡眠状態にある。深い睡眠、ノンレム睡眠と呼ばれるもので、専門家からは心身の健康のかなめとみなされている。

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毒素を洗い流す

入眠するとノンレム睡眠が始まり、夢を見やすいレム睡眠が出現するまで続く。フランス軍バイオメディカル研究所(IRBA)で神経科学分野の研究をおこなうアルノー・ラバによれば健康な成人の場合、睡眠時間の約25%がノンレム睡眠で占められる。

ノンレム睡眠が注目されるのは、生理的観点からも、免疫力アップやニューロンの働きの点でも重要だからだ。平たく言えばこれは身体が回復する睡眠なのだ。ノンレム睡眠中は脈拍が遅くなり、血圧や脳波活動も低下する。脳はこの睡眠を利用して情報を整理し、記憶を定着させ、同時に毒素を洗い流す。「老化に対処し、神経変性疾患やうつ病から身を守るためにも重要な作業です」とベルギーの神経内科医、スティーブン・ローリーズは言う。

成人の場合、睡眠時間の約25%がノンレム睡眠で占められる。

フランス軍バイオメディカル研究所(IRBA)の研究者アルノー・ラバ

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睡眠環境に気を配る

ノンレム睡眠時間の長さは自分の意志で変えられない。『SOS Sommeil(原題訳:睡眠SOS)』(1)の著者でIRBAの研究者、アルノー・ラバによれば、ノンレム睡眠時間の長さは睡眠時間全体の長さとは無関係に身体のほうで勝手に調整している。では、われわれになにができるのかと言えば、睡眠環境や条件を整えることだ。環境や条件が悪いと眠りが浅くなり、寝ている間に何度も目が覚めてしまうことになりかねない。「うるさかったり、まぶしかったり、暑かったり。そうすると寝つきが悪くなり、熟睡できなくなります」とアルノー・ラバは言う。『Le sommeil, c'est bon pour le cerveau (原題訳:睡眠は脳に良い)』(2)の著者で神経内科医のスティーブン・ローリーズによれば、寝るときには部屋を完全に暗くすることと、室温を低めの18℃にすることがお勧めだそうだ。

睡眠と覚醒のサイクルを調整する体内時計は加齢によっても変化する。40歳以降、とりわけ65歳以降は眠りが浅くなる傾向にある。神経内科医のスティーブン・ローリーズによれば、「年を重ねるにつれて、さまざまな身体要因により、深い睡眠が得られにくくなります。たとえば不快な更年期症状、膀胱の不調、関節痛、いびき、あるいはレストレスレッグス症候群などです」と言う。気になる症状があるのなら、かかりつけの医師に相談して対処したほうがいい。

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寝る前の準備

ぐっすり眠りたいならベッドに入る前の準備段階から気を配ろう。ストレスや心配事で頭がいっぱいだと入眠時のみならず睡眠中にも影響を及ぼす。「不安で気持ちがたかぶっていると夜中に目覚める可能性が高くなり、深い眠りが減ってしまいます」とアルノー・ラバは言う。就寝前にリラックス効果のある瞑想や自己催眠などで気持ちを落ちつかせたり、シャワーで体温を下げたりすることで、寝つきをよくしてみよう。

日中、通勤や通学を徒歩や自転車でおこなうなど活動的に過ごせば、プロラクチンやインターロイキンという、深い睡眠時に回復を助けるふたつのホルモンの調節がうまくいきます。

フランス軍バイオメディカル研究所(IRBA)の研究者アルノー・ラバ

日中は逆に身体活動を盛んにおこなうことで深い睡眠が最適化する。「通勤や通学を徒歩や自転車でおこなうなど活動的に過ごせば、プロラクチンやインターロイキンという、深い睡眠時に回復を助けるふたつのホルモンの調節がうまくいきます」とアルノー・ラバは言う。

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何が足りないのかを把握して実行する

ふたりの専門家に共通する一般的な意見として、まずは自分の睡眠に何が足りないのかを把握するべきだとのこと。「夏休みに睡眠日誌をつけてはどうでしょう。休暇に入って2週目からが理想的です。仕事やつきあいの制約から解放されることで、量的にも質的にも、自分の生理的欲求を把握しやすくなります」とアルノー・ラバはアドバイスする。現状を把握したら自分の生活リズムに合った起床時間と就寝時間を決めよう。スティーブン・ローリーズ博士いわく、「睡眠は規則正しい生活を好むものなのです」

もうひとつ、自分の睡眠パターンを把握するためにお勧めしたいものがある。イギリスの研究者、ジム・ホーンがスウェーデンのオロフ・エストベリと共同開発した「サーカディアン類型」アンケート、いわゆる「朝型・夜型診断ツール」だ。日常生活についての20問ほどのアンケートに回答することで、自分が「完全に」、「そこそこ」、「ちょっぴり」朝型なのか夜型なのか判定することができる。もちろん、アンケートに答えるのは寝る直前ではなく、十分休養して頭がすっきりしているときがベストだ。

(1) 『Sos Sommeil(原題訳:睡眠SOS)』、アルノー・ラバ&ムニール・シャナウイ著、First社刊、128p.、12.95ユーロ。
(2) 『Le Sommeil, c'est bon pour le cerveau(原題訳:睡眠は脳に良い)』,スティーブン・ローリーズ著 、Odile Jacob刊、368p.、22.90ユーロ。

text: Tiphaine Honnet (madame.lefigaro.fr)

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