フランスで、宛先に届かなかった小包の驚くべき処分法とは?

Lifestyle 2023.12.31

届くはずの荷物が届かない......ことは日本で滅多にないが、フランスではちょっと状況が違うようだ。フランス版「マダムフィガロ」によるリポート。

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photography : Getty Image

フランスでは毎年、たくさんの小包が宛先不明に。

小包の発送というものが人類史上でいつ始まったのかはわからないが、大昔からあったことは想像に難くない。一方、いつポップカルチャーの殿堂入りしたかはわかっている。ロバート・ゼメキス監督が2000年に撮ったヒット作、『キャスト・アウェイ』は国際宅配便会社フェデックスに勤める男の話だ。トム・ハンクス演じる主人公は無人島に漂着し、自分と一緒に遭難した小包をいつか宛名人に届けたいという気持ちを支えに生き抜く。そして今日、世界中で膨大な数の小包が毎秒行き交う時代となった。クリスマスシーズンなどのピーク時ともなると配達人は大忙し。購入者にとっては買いに行く時間の節約になり、ありがたいシステムだが、そこにはリスクも存在する。倉庫の中で小包が迷子になるリスクだ。

日々どのぐらいの小包が紛失しているのだろうか。フランスの宅配市場のリーダーであるフランス郵政公社に問い合わせたが、正確な数字は教えてもらえなかった。彼らの言い分では、小包が届かないのは委託配達業者のせいということらしい。配達業者も当然、情報を出したがらない。小包が無事届かない場合、公共サービス側では「配達不能」小包に分類する。届かない理由は受取人が引っ越したか、住所が間違っていたかだ。

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新たなビジネス

配達されずに倉庫に残る小包が一定数存在することに、デジタル時代の起業家が目をつけた。「どんなビジネスも別なビジネスを生み出す」の定説通り、生まれたのが「中古」小包ビジネスだ。専門業者がフランス各地の倉庫で配達不能小包をキロ単位で販売する。キャッチフレーズは「消費者と企業の双方に利益をもたらす革新的な戦略」。そして彼らの思惑通り、商売は順調だ。

当たればラッキー

そうした業者のひとつ、北フランスのペルシュ地方にある「ペルシュショップ・ドットコム」社のオレリアン・ジャエグは仕組みを説明してくれた。「物流会社からトン単位で配達不能小包を購入し、それを5キロ、10キロ、15キロと小分けにします。お客様はオンライン購入、または倉庫に直接来て購入することもできます」とのこと。さらに売るためのちょっとした工夫として、「どの小包みにするかお客様に直接選んでいただくことにしています。触ってもらっても構いませんが小包を開けることはできません」と言う。こうして、客はワクワクしながら中身のわからない小包を選んで購入する。価格はと言えば、できるだけ安くすることを心がけているそうだ。「キロあたり10.80ユーロです」

パリ地方の同業者、ロスト・アンド・ファウンド社も同様の仕組みだが、ここの特徴はひとり500キロまで(!)購入可能な点。その場合の価格は4000ユーロとなる。市場は急速に成長しており、掘り出し物を見つけようとする客は増えるばかりだ。

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宝くじのようなもの

人気のワケは、2つの期待感が味わえるからだろう。安く大量の商品を手に入れられる期待、そして開けるまでわからない中身への期待だ。ただし開けてがっかりということも当然ある。こうした小包を買うのはスロットマシンや宝くじのようなもので、射幸心があおられる。ペルシュショップ・ドットコム社のオレリアン・ジャエグによれば、「小包の80%は洋服」だそうだが、ビューティー小物、子どものおもちゃ、あるいは客に特に人気の高いサングラスが入っていることもある。ただし中身が違法な偽造品だと破棄せざるを得ないし、自分には全く不要な商品に当たる可能性もある。「大儲けできると思って買ってはいけない」と警告するのは、常連客のロマンだ。「毎週、家のすぐそばにある倉庫で買っていて、大量に買ったわけではないけれど、じきにこれは無駄なものばかりだと思った」と言う。宣伝に乗せられてせっせと通ったものの結局は「くだらない小物や女性服、いらないプラスチック製品ばかり溜まった」そうだ。

しかしそんな物でも使い道がある。買った小包の中身をさらに転売して購入代金を回収、あわよくば小遣い稼ぎをするのだ。実はロマンもそのひとりだ。「これはTikTokで知った方法で、以来、ほぼ毎月買いに行っている。毎回20キロほど購入する」と言う。そして「ちょっとぐらい稼げれば」という期待があることを認める。「一部はプレゼント用に」とっておくそうだが、「いつも妻と一緒に」購入する小包で大儲けはできないものの、「スマートウォッチなどのハイテク商品も多い」おかげで「給料のちょっとした足し」ぐらいにはなるそうだ。手間暇を考えると、ちょっとぐらいの儲けでは割に合わない気もするが、もうひとつ重要な観点がある。環境保護だ。

配達不能小包の「第二の人生」

「数年前までは、配達不能の小包は焼却処分されていましたが、今では転売可能になり、自分たちがこうした商売をできるようになりました」とペルシュショップ・ドットコムのオーナーは言う。環境関連法規の2018年法改正により、「有害でなく、リサイクル可能な廃棄物の埋め立ては段階的に禁止される」ことになった。つまり、もうこれ以上リサイクルできないゴミしか今後は捨てられない。

これを契機に、配達不能小包の再販業者は、捨てられるはずだった製品に「第二の人生」を与えられるようになった。だが彼らも、「モノがあるから消費する。消費するからモノがある」という、ニワトリと卵の関係のような、従来からの商取引システムの枠組みのなかにいる。どうでもいい物、中身がわからない物を買うという行為自体が問題の中心にあるようにも思う。とにかくこうして果てしない循環が始まる。小包を購入し、それを再販し、もしかしたらそれがまた再販され......。

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text : Gaspard Couderc (madame.lefigaro.fr)

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