ED(勃起不全)に悩む男性たち。カップルはどう対処すべき?

Lifestyle 2024.02.25

したい気持ちはどちらにもある。だけど身体が思うようにならない。人生のどこかでED(勃起不全)に悩んだことのある男性は10人中6人もいる。女性はどういう態度を取るべきか、カップルとして問題解決にどう取り組むべきか、専門家がアドバイス。

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10人中6人の男性が勃起不全に悩んだことがあるそうだ。女性はどう向き合えばいいのだろうか。photography : Katsiaryna Miadzvedzeva / Getty Images/iStockphoto

それはある日突然やってくる。フランスの健康情報プラットフォーム、「シャルル・コ」の依頼でIfopがおこなった調査(1)が2019年5月に発表された。それによると、半数以上の男性(61%)が人生で少なくとも一度はED(勃起不全)、すなわち性行為をするのに十分な勃起を達成できない、もしくは維持できない経験がある。ここ15年間でこの現象は増加傾向にあり、しかも年齢に関係なく誰にでも起こりうる、と同調査は指摘している。

循環器系専門医のエレーヌ・シュスマンによれば男性特有のこの問題にはいくつかの原因がある。1つ目は静脈の奇形、2型糖尿病、ホルモン異常、体重過多などの身体的な原因、2つ目は薬物、タバコ、アルコール、ジャンクフードなどの環境的な原因、そして3つ目は心理的な原因だ。診断には長い時間がかかり、適切な医療専門家が見つからなければ、数年ひきずることさえある。そして、どんな原因によるものであれ、不幸にもなってしまった場合、カップルの人生は蝕まれる。

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告白を難しくする先入観

勃たない状況に初めて直面した場合、すぐにそのことを受け入れられる男性は少ない。先述のIfopの調査によると、男性の3人に1人が勃起不全をパートナーに打ち明けられずに嘘の言い訳をしたことがあると認めている。もっともらしい口実としては肉体的疲労、そしてストレス、偏頭痛、過食、アルコールなどが並ぶ。人類学者によれば、性欲は生殖欲と同様、人間生来の欲であり、アイデンティティを形成する決定要因でもあるという。「だからこそ、勃起できなくなって男らしさが損なわれるのを目の当たりにした男性は、自分のアイデンティティそのものが問われているように感じ、恥ずかしく思う」と循環器系専門医のエレーヌ・シュスマンは説明する。

普段は全幅の信頼を寄せているはずのパートナーになぜ打ち明けられず、黙ってしまうのだろうか。泌尿器科アンドロロジー(男性特有の問題に関する泌尿器科の一分野)医で、性科学者でもあるヴァンサン・ユペルタン(3)曰く、「こうした極めてプライベートな問題はなかなか口にしづらいもの。最近でこそ、このような話題も比較的自由に発言できる風潮になりつつあるが、いまだに多くの男女は、20代であろうと40代であろうと、この手の問題を堂々と発言するために必要な性教育を受けてこなかったし、今も受けていない」

そしてインターネットのせいで溝は深まるばかりだ。「インターネットというチャネルによって情報が得られやすくなった一方で、人々は比較するようになり、セクシュアリティに関してある種の先入観が常態化している。たとえばオンラインポルノ動画を見た消費者は勃起や性交渉の持続時間、頻度がどうあるべきかをそこで学習してしまう」と性科学者のヴァンサン・ユペルタンは指摘する。そのため、自分に問題が発生した場合、この社会から事実上排除されてしまうように感じる。「妻に話すことは、真っ向から拒絶される危険を冒すことだと感じてしまう」と、医師のエレーヌ・シュスマンも言う。

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不器用な行き違い

ちゃんと話さなければベッドの中で誤解が生じるのもいわば当たり前の成り行きで、夫婦仲に有害な結果をもたらす。専門家によれば、相手からのよくある非難は「あなたはもう私に飽きたのよ」、「もう私を愛していないんでしょ」、「つきあっている人がいるんでしょ」等。性科学者のヴァンサン・ユペルタンはその結果どうなるかを次のように解説する。「自尊心を傷つけられたと女性が感じるのはまったく正当なことだ。しかしながらこうした会話がなされると問題は大きくなり、次の機会に男性はより大きなプレッシャーにさらされることとなる。愛する相手に自分が欲望を感じていることを納得させなければならない、うまくやらなければならないと考えれば考えるほど不安も大きくなり、失敗する可能性も高くなる」

相手を慰めようとして火に油を注ぐ結果になることもある。悩むパートナーに対して介護者や看護師のような態度をとるのは不器用なやり方だ。性科学者のヴァンサン・ユペルタン曰く、「勃起不全の人が一番聞きたくないのは、"たいしたことないわよ"という慰め。だって彼にとってこれは非常に深刻なことで、自分の世界が崩壊するほど恥ずかしいことなのだから」

循環器系専門医のエレーヌ・シュスマンは日々の診察でこのことを目の当たりにしており、「患者のほとんどは、ひとりで絶望的な気分を抱え、やってくる。それはひとつに、なぜそうなってしまったのかが分からないから。そしてもうひとつは、この問題が男性の精神状態にどれだけ影響を及ぼしているのか、女性が無意識のうちに過小評価して悩みをわかってくれないから」と言う。性科学者のヴァンサン・ユペルタンも、「まずは相手の話をよく聞くこと。つきあって日が浅いカップルであれ、長年連れ添った夫婦であれ、よくある間違いは、相手が話している内容よりも、自分の考えや、夫婦の性生活が"どうあるべきか"という知識に基づいて、相手の反応を分析し、予測してしまうこと」と戒める。

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寄り添いつつ、臨機応変に

医療専門家によれば、まずはタブーなしに、性生活の良い面と悪い面についてふたりで、できる限り話しあうことが急務だという。フラストレーションが溜まって別居、あるいは自分や相手への暴力といった極端な事態を招くことを防ぐことが肝要だからだ。「勃起不全の原因がなにであれ、パートナーとの関係性の質によって大きく左右される」と性科学者のヴァンサン・ユペルタン。

だからふたりで診察に来ることが治療への第一歩だと循環器系専門医のエレーヌ・シュスマンは言う。「パートナーの同伴は愛情の証であり、安心感であり、さらに言えば、仲の良い夫婦の良好なコミュニケーションの証で、そのようなケースのほうがずっと治療しやすい」

満足のいく性生活へ復帰できるかは個々人の置かれた状況と治療の経過次第だ。

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医学的な解決法は?

ED(勃起不全)には医学的な解決策も存在する。循環器系専門医のエレーヌ・シュスマンと心臓血管外科医のロナルド・ヴィラグは、著書『Le sexe des Hommes, l'érection sans tabou(原題訳:人間の性、タブーなしの勃起)』(Le Cherche-Midi刊)の中でそのことを指摘している。実際には、原因別に泌尿器科、アンドロロジー、血管科、精神科のどこに患者を紹介するべきか一般医が判断する。心因性ではない場合、様々な治療法が考えられる。勃起不全治療薬、海綿体自己注射、男性ホルモン補充療法、血行再建術、陰茎プロステーシス手術などだ。

勃起不全が心因性の場合、いくつかの治療的アプローチがある。例えば、性科学者のヴァンサン・ユペルタンは、性行為に伴う不安の軽減を目的とした再教育を推奨している。「最初は挿入することは考えず、性的に楽しみ、したい気持ちを分かち合うことから始める。あまりややこしいことは考えず、性器以外の身体の部分(手、顔、目等)を探ることからはじめる。これによって自分のなかの制約を手放し、楽しむことを再び覚えることで互いの理解が深まり、相手の魅力に気づくきっかけとなるだろう」

r(1)Ifopの研究:「 男性と勃起不全:大きなタブー?」
(3) ヴァンサン・ユペルタンは『L'enscyclo-pénis(原題訳:ペニスエンサイクロペディ)』の著者、Leduc出版。

text : Tiphaine Honnet (madame.lefigaro.fr)

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