Z世代の従業員が現場マネージャーを疲弊させてしまう理由とは。
Lifestyle 2024.12.27
アメリカでは、Z世代の新入社員が使い物にならないとわずか数ヶ月で解雇されるケースが増えている。フランスでも職場における世代間ギャップは大きい。
SNSでは、20代の若者が社会人意識に欠けることを示す動画であふれている。勤務時間中にネイルをする人、日焼けサロンからリモート会議に参加する人等々。パリのPR会社の管理職である36歳のジュディス(1)は自分の体験を語る。「あるインターンから『やあ、元気?』っていきなり声をかけられました。返す言葉もありませんでした。別なひとりは、かなり下品な言い回しで、トイレの位置が気に入らないと文句を言ってきました。マナーを知らない若者が増えている印象です」
こんなふうに思っているのはジュディスだけではない。今回、取材に応じてくれたマネージャーやリーダーの多くが、自分たちとは習慣がだいぶ異なる新卒社員を前にして戸惑い、途方に暮れていた。CESIエンジニアリングスクールの依頼で実施されたイプソスの調査によると、トップマネジメントの86%が、Z世代(1990年代後半から2010年代前半に生まれた世代)はこれまでの世代とは違うと感じている。具体的には、20代の社員は仕事へのコミットメントが低く、上下関係を守らないとみる会社トップが半数以上いる。さらに20代社員は会社への忠誠心が低いと見ている人が72%いた。
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残業はしない
「世界は自分中心に回っていると思っているらしい」とデザイン会社でマネージャーを務める35歳のマキシム(1)はため息をつく。「彼らは自分が高度な知識を有していて、それに見合うものを要求して当然と思っているんだ」とも言う。彼らとは、マキシムがリーダーを務めるチームのメンバーのことだ。主に22歳から27歳のプロジェクトマネジャーで、入社して初めて、もしくは2つめの配属先となる。「やる気も創意工夫も感じられず、仕事だからこなすという態度。当然、目覚ましい成果など得られない」
残業はせず、主体的に仕事に取り組むこともなく、ややもすると上司に責任を押し付けようとする。給料が安いからやる気も起こらないのだろうと一定の理解を示しつつ、マキシムは向上心も気働きもないと嘆いた。「やるのが当然のことまで口に出して言わなくてはやらない。叱る時もそうだし、うっとうしいと思われるのも覚悟だ。嫌な上司と思われないよう、細心の注意を払っているよ」
状況の変化
いったい何が起きているのだろうか。これまでの常識が通じない、期待通りに動いてくれない、失望したということだろうか。さまざまな現象が複雑に絡み合い、議論が起きる。コロナ禍以降、多くの世論調査や社会学的研究がおこなわれ、たくさんの意見や主張が登場した。ただ英米で語られるコンセプトはフランスの職場の実態にはそぐわないことが多い。「Quiet quitting(静かな退職」)」や「Lazy-Girl job(怠け者の仕事)」といったキーワードがいくら注目を集めようとも......。
その一方でこんなふうに考える人もいる、仕事は長年にわたって増え続け、プロセスが複雑化、エクセル表計算による管理が常態化してきた。そこから解放され、本来あるべき姿に戻った、この傾向は歓迎すべきだと。当の本人たちはどう思っているのだろう?IFOPの調査によると、全就労人口平均と比べ、若者層は仕事を楽しいと感じ(全体34%に対し若者43%)、誇りを持っている(30%に対し38%)。その一方で仕事をルーチンワーク(調査対象者の48%)、あるいは負担(21%)と感じている人も多い。
アメリカで広がるギャップ
サラリーマンとして働くならできるだけ多くのメリットを享受したいと思うのもある意味当然だ。「ニューヨークにオフィスをオープンさせるにあたり、私はスピーチをした。とても素晴らしい、感動的でパワフルなスピーチだったと自画自賛していたのだが、若い新入社員からの最初の質問は、社内のバスケットボール・クラブに補助金が出るかということだった」と不満そうにある仏大手メディア企業の社長は語った。同企業はその後アメリカから撤退した。アメリカでは正に世代間ギャップが広がり、30歳以下の従業員が解雇されるケースが相次いでいる。2023年9月、学生向けプラットフォームのintelligent.comは、966社に対し、最近採用した新卒社員について質問した。その結果、75%が不満と回答し、10社中6社が新卒者を解雇していた。その理由は、仕事をひとりで管理できないことや社会人意識の欠如だった。10人中9人の管理職が、若い新卒者は社会に出る前に仕事のマナー研修を受けるべきだと考えている。
テラ・ノヴァ財団と管理職雇用促進協会(Apec)がフランスで実施した大規模調査によれば、フランスの管理職もアメリカの管理職と同じように考えている。しかしながら、仏労働省の調査・研究・統計推進局(DARES)によれば、それが原因で解雇や退職が増えたことはないようだ。ただし、2024年第1四半期には解雇がわずかに増加した。またコロナ禍でロックダウンが始まり、経済危機となった際に30代以下の解雇が爆発的に増加した。
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働き方が変わる
これは働き方そのものが変わるきざしなのかもしれない。私たちはどう仕事と向き合ってこなしていくべきなのか。気まぐれで世間知らずの若者世代と片付けられがちな若い社員が不満を抱えるのも、これまでとは違ったスタイルで仕事をしたい、社内のつきあいをしたい気持ちがあるからかもしれない。実のところ、Z世代のイメージを覆すような調査結果も多くある。テラ・ノヴァ財団と管理職雇用促進協会(Apec)による調査では、働くことが好きで、必要に応じてもっと多くの仕事をこなしても構わないと考え、愛社精神に富み、上司の命令にも従うZ世代の社員像が浮かびあがる。
その一方で、Z世代は自分が役に立っているとか仕事を任されたことよりも、目新しいミッションやタスクをこなすことに興味がある。世代間ギャップがあるのはこの点なのかもしれない。飽きっぽいZ世代は、ルーティンを楽々こなすより、絶え間ない刺激を求めているようだ。彼らにとって安定した仕事に次いで重要なのはワークライフバランス。こだわるあまりバランスが崩れることもあるのではないか? PR会社のマネージャーで39歳のヴァンサンはそうは思わない。「自分たちが彼らの年齢の時には狂ったように働き、時には徹夜もしながら、疑問に思ったこともなかった。彼らは家に持ち帰り、必要なら早く帰宅し、無理に会社にいようとしない。そしてそれはいいことだ!大事なのは仕事を終えることなのだから」。そして仕事から離れて自分の時間を持つこと。結局のところ、それでうまくいっている国だってあるのだから。
(1)仮名を使用しています。
From madameFIGARO.fr
text: Sofiane Zaizoune (madame.lefigaro.fr)