1日3杯以上コーヒーを飲む人の腸内で何が起こる? 海外の研究チームがリポート。

Lifestyle 2025.03.17

Newsweek online

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コーヒーを常飲する人は飲まない人に比べ腸内の特定の細菌が8倍に FLOWTRUME/SHUTTERSTOCK

<腸内微生物叢は、消化吸収、排泄習慣や精神衛生、免疫などに大きな影響を及ぼす。このたび、コーヒーの摂取とローソニバクター・アサカロリティカスの増殖との間に強い関連があることが分かった>

コーヒーを飲む習慣が腸内で生息する微生物の種類を左右し、それが健康状態にも影響を及ぼすかもしれないとする研究がこのほど発表された。

この研究は、顧客一人一人に合った食生活を提案する新興企業、ゾーイ社の研究チームが行ったもので、ネイチャー・マイクロバイオロジー誌で発表された。

論文の共著者で、ロンドン大学キングズ・カレッジのティム・スペクター教授は、本誌にこう語った。

「(この研究は)食べ物と腸内微生物叢(そう)の間に具体的な関連があるとの見方をさらに裏付けるものだ。つまり私たちは、食べ物の選択を通して健康状態を改善するという大きな可能性を手にしている」。スペクターはゾーイの共同創業者でもある。

腸内の細菌や酵母、真菌をまとめて腸内微生物叢と呼び、その構成は人により異なる。腸内微生物叢は消化吸収、排泄習慣や精神衛生、免疫などに大きな影響を及ぼしている。

研究チームは食べ物と腸内微生物叢の関係を調べるに当たり、コーヒーに目を付けた。理由は広く飲まれていることと、心臓疾患による死亡リスクや2型糖尿病や一部の癌の発症リスクの軽減といった健康効果があるとみられること。そして他の飲食物と違って、常飲している人と全く飲まない人に分かれる傾向があることだ。

研究チームはアメリカとイギリスに住む2万2800人の詳細な食事内容を含むデータや、211の集団の計5万4200人の公開データを調べた。さらに400人の血漿データや350人以上の便のサンプルを分析。コーヒーが腸に与える影響を確かめるために、2件の実験も行った。

その結果、コーヒーの摂取とローソニバクター・アサカロリティカスという細菌の増殖との間に強い関連があることが分かった。1日に3杯以上のコーヒーを飲む人の場合、1カ月に飲むコーヒーの量が3杯未満の人と比べると、この細菌のレベルは最大で8倍に。また、コーヒーを飲む量が多い人ほど、この細菌は腸内にたくさんいた。

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植物性食品を幅広く取る

試験管の中でこの細菌にコーヒーを与えたところ、細菌が成長することも確認された。

「腸内の細菌がいかに好みにうるさいかが分かるというものだ。このローソニバクターの細菌叢は、普段は休眠状態にある。コーヒーを飲んで活性化するのを待っているのだ」とスペクターは述べた。

「つまり、腸内のあらゆる細菌にきちんと餌をやって健康効果を得ようと思えば、植物性の飲食物を幅広く摂取しなければならないことが新たに分かった」

研究チームはこのローソニバクター・アサカロリティカスがコーヒーの健康効果に深く関わっているとみている。こうした細菌は、コーヒーに含まれる成分を健康にいい成分に変えることができるからだ。

ただしスペクターによれば「現時点では、この細菌がどのように人間の健康に影響を与えているかは分からない」と言う。

「いつの日か、さまざまな食品と微生物叢の関係を読み解き、健康のために何を食べればいいか分かる日が来るだろう」とスペクターは言う。

「微生物が好む『餌』を与えて食生活と腸の健康を改善するのに向けた大切な一歩だ」

ティム・スペクター教授が「コーヒーの健康効果」を解説する動画
Coffee's hidden health benefits | James Hoffmann and Prof. Tim Spector

【参考文献】
Manghi, P, Bhosle, A., Wang, K., Marconi, R., Selma-Royo, M., Ricci, L., Asnicar, F., Golzato, D., Ma, W., Hang, D., Thompson, K. N., Franzosa, E. A., Nabinejad, A., Tamburini, S., Rimm, E. B., Garrett, W. S., Sun, Q., Chan, A. T., Valles-Colomer, M., Arumugam, M., Bermingham, K. M., Giordano, F., Davies, R., Hadjigeorgiou, G., Wolf, J., Strowig, T., Berry, S. E., Huttenhower, C., Spector, T. D., Segata, N., Song, M. (2024). Coffee consumption is associated with intestinal Lawsonibacter asaccharolyticus abundance and prevalence across multiple cohorts, Nature Microbiology. https://doi.org/10.1038/s41564-024-01858-9

text: Hattie Wilmoth

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