コーヒーにミルクを入れると、健康にいい?悪い?

Gourmet 2023.04.29

コーヒーにミルクを入れるなんてあり得ない!と言う人もいれば、甘い気分で一日をスタートするにはカフェオレは欠かせないと言う人もいる。コーヒーにミルクを加えるのは健康面にとってはいいのだろうか? 悪いのだろうか?

01-milk-in-coffee230414.jpgコーヒーをミルクで薄めるのは健康面にとっていいことなのか? photography: Getty Images

コーヒー抜きでは一日を始められないと思う人は多くいるだろう。あの黒く苦い飲み物をそのまま、もしくはミルクをちょっと、またはたっぷり加える人がいる。飲み方は人それぞれだ。

コーヒーを愛する人にとってコーヒーは無くてはならないものだが、健康へはどのような影響があるのだろう? エスプレッソの上にミルクを薄い膜のように垂らす “ノワゼット”、もしくはラテ……これらはコーヒーを薄め過ぎてカフェインのブースター効果を消してしまっているのだろうか? 消化にとってはどうなのだろう?

コーヒーを単体、つまりブラックで飲んだ場合の効果は数多く立証されている。フランス国立衛生医学研究所(INSERM)の名誉研究長であり、コーヒーの健康への影響の専門家であるアストリッド・ネリッグが示すように、コーヒーには有名なカフェインという興奮作用があり、認知機能の低下から守ってくれる分子が含まれている。ほかにも抗酸化作用のある貴重なポリフェノールも含まれている。「ポリフェノールは心臓にとって降圧作用があり、細胞を老化から守り、DNAの損傷を制限し、組織の炎症を軽減する働きがあります」とアストリッド・ネリッグは説明する。

ではそこに牛乳を加えるとどうなるのか。ネリッグによると、現時点ではカフェインの作用に悪影響を及ぼす可能性は確認されていないとのことだ。カフェインのブースター効果はコーヒーの量に左右されるものであって、牛乳の有無とは関係ない。そして推奨されているコーヒの消費量を守ることが大事だ。カフェインを多くとりすぎると神経過敏になったり、睡眠や心臓血管トラブルを誘発したりする可能性があるからだ。欧州食品安全機関によると、健康な大人は一日400mg(妊婦は200mg)以内にとどめるべき。これはドリップコーヒー4~5杯の量だ。

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抗炎症作用は増加?

コーヒーの抗酸化作用と牛乳の相互作用に関しては、科学的に議論されている最中だ。2023年1月30日の学術雑誌Journal of Agricultural and Food Chemistry誌に登載されたコペンハーゲン大学の研究は、ブラックコーヒーよりもカフェオレの方が抗炎症作用があると主張する。生体外培養で実践された研究ではコーヒーのポリフェノールの抗酸化作用は、牛乳に含まれているアミノ酸と会合した時の方が倍の効果があったと確認された。

アストリッド・ネリッグによると、この研究成果は動物や人間の身体を使ったものではないので、確証が必要だとのことだ。しかし過去の有望な研究との関連はありそうだという。たとえば、ネスレ社のスイス研究所が2010年2月に発表したリポートに関して、「研究者はさまざまなレシピで淹れたコーヒーを飲んだ後の血しょう構成成分に注目し、コーヒーに全乳(低脂肪ではない)を入れてもコーヒーのポリフェノールの生体利用効率に変化はなかったことがわかったそうです」と説明する。

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満腹感は得られるが消化に良いとは限らない。

ノワゼットやラテを飲んだ後、空腹感が消えることがあるかもしれない。それは牛乳が満腹感の効果があるタンパク質を含んでいるから当然だと『L'Alimentation anti-inflammatoire - Naturellement healthy』(1)の著者であり、栄養学専門の医師カトリーヌ・ラクロニエールは主張する。

しかし、人によって満腹感は消化不良、鼓脹、吐き気、下りなども伴うかもしれない。同医師によると、これらの不快感は乳糖不耐症のサインだ。「牛乳に含まれているこの糖分は、通常、ラクターゼと呼ばれる酵素のおかげで小腸の中で吸収されます。しかしラクターゼの量は年齢とともに徐々に減っていき、牛乳を飲まなくなると消えてしまいます。すると、乳糖の消化が困難になってくるのです」とカトリーヌ・ラクロニエールは説明する。

結腸の動きを刺激するコーヒーは、よくこの消化不良の原因とされているが、消化への有益な効果を忘れてはいけない。医師はこう説明する。「コーヒーに不要性食物繊維が含まれているおかげで、腸内細菌の環境を整えてくれます。胆汁や膵液の分泌を改善させ、それが主要栄養素(糖質、タンパク質、脂質)の消化を助けてくれています」

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砂糖の代替品、でも飲み過ぎには注意。

北欧の人のように、大人になっても牛乳を飲み続け、消化の問題などが起きない人にとっては良い切り札ともなり得る、と同医師は言う。彼女によれば、乳糖の甘さは砂糖やその他の人工甘味料に取って代わる健康的なものとなってくれる可能性がある。

しかし、ミルクをたくさん飲むなら節度ある飲み方が必要だと専門家は指摘する。フランス国立農業・食糧・環境研究所(INRAE)の研究所長であり牛乳の脂質の専門家であるマリー・カロリーヌ・ミシャルスキー教授は、過去の記事でこう説明している。「科学研究の世界では、食品の種類をより豊富にした方が健康に良いという方向に進んでいます。これまでの研究の結果、大人であれば平均的に一日に2品目(一人分を2種)の乳製品を摂るのが良いと考えられます(子どもやシニアは3から4種)。たとえばミルクを1杯とヨーグルトを一人前、酵素やカルシウムが豊富なチーズを一人前、という具合に摂ることが好ましいです」

text: Tiphaine Honnet (madame.lefigaro.fr) translation: Hana Okazaki, Hide Okazaki

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