「明日のことは後で考える」でも許される? 不安を軽減する5つのヒント。
Lifestyle 2026.01.13

精神的に追い詰められている、落ち着かない環境にいる、環境問題が不安......。心配の種は尽きない。どうしたら心が落ち着くのだろう。芸術に親しむ、運動をする、自然と触れ合うなど不安を軽減する方法をご紹介。

不安への対処法を説く書籍は数え切れないほどある。新たな市場が形成されるほど不安に悩む人が増えているのだ。戦争や不況も人々が怯える要因となる。不安に陥ると世界との関わり方も体内時計も変化してしまう。時間が早く過ぎるように感じたり、画面に依存したり、ひきこもったり、人間関係が失われたり。さらに地球環境の変化も新たな不安をもたらす。それは「ソラスタルジア」もしくは「エコ不安(気候不安)」と呼ばれるものだ。
エコ不安に陥った人は景観や生物多様性、地方の文化や伝統が破壊されていくことに憂慮を覚え、抑うつ症状に至ることさえある。最近のポルトガルでの研究によると特に女性に顕著に見られ、同国の若者が気候変動対策の不作為を理由に欧州人権裁判所(CEDH)に訴訟を起こすほどの広まりを見せている。不安に悩む人が増えていることは広く認識されており、作家もホテル経営者も芸術家もそれぞれの分野で対応しようとしている。問題意識の高まりとともに様々な"対策メニュー"が登場しているのだ。
01. いまこの瞬間が現実、明日は明日
「不安はストレスからくると思われがちですが、むしろ恐れから生まれるのです」と語るのは作家のモード・アンカウアだ。自己啓発セミナーも主催している作家は最新著作(『Ces Questions que tout le monde se pose(誰もが抱く疑問)』Ed. Eyrolles刊)で実践的なアドバイスをしている。それはポッドキャストや講演で寄せられた質問への答えでもある。「最悪の事態を想定することは自分で自分に毒を盛っているようなものです。不安はまだ起こっていない問題を先取りすることで起きます。それは幻想であり、未来の投影なのです」と断定した。
不安に悩む人に作家が伝えたいのは、いまこの瞬間だけが現実として存在することだ。言うのは簡単だが現実問題として、どうすれば思考や行動の流れを止めて今の瞬間だけに集中できるのかと反論するむきもあるかもしれない。「私たちの頭の中ではおおよそ6万もの考えが日々よぎります。しかも何か特別なことが起きない限り、それは変わり映えのしないものばかりです。絶え間ない考えを中断するために1日数分でもいいので、呼吸に集中してください。そしてこれを習慣づけて毎日行うのです。それによって思い込みではない、もっと現実的な考えができるようになるでしょう」
02. アートに親しんでエコ不安解消
芸術家は社会の変化を敏感に感じ取る存在だ。それならば、気持ちが前向きになるような展覧会を観に行ってはどうだろう。たとえば写真や造形芸術、テキスタイルデザイン、彫刻など、さまざまなクリエイティブ分野で活躍するアーティストが消失をテーマに作品を創り、人々に記憶とはなにか、痕跡を残すことの重要性、行動を通じての集団的責任を問いかけた展覧会なんていかが。
フランスのコニャック地方にあるマーテル企業財団の『Memo. Souvenirs du Futur(メモ:未来の記憶)』展(2026年1月4日まで)では、15のプロジェクトがデザインを切り口に、様々な地理的環境下での伝統の継承、種の絶滅、栽培の撹乱などの問題を取り上げている。内容は非常に多様だ。消滅の危機にあるツバル諸島(太平洋)のデジタル再構築を手掛けたのはオーストラリアのクリエイティブ集団のColliderとThe Monkeysだ。アーティストのサリー・アンは、マオリ文化の鳥で絶滅種のホオダレムクドリフイアの失われた鳴き声を、聴くたびに劣化していくシリンダーに刻み込んで再現した。アーティストのエマ・ブルスキはライ麦栽培の伝統を継承し、フランスのオート・サヴォワにある家族経営の農場でライ麦を使う織物を作り、非常に洗練されたワードローブを制作した。美術家フェルナンド・ラポッセは、メキシコにおけるアボカドの単一栽培がもたらした影響を、家具やビデオ作品で記録した。
03. 心身のリラックス
ホテル業界では長い間、リラックス手段としてスパの提供に力を入れてきた。美容業界が健康やウェルネス分野へ拡大するなかで、ホテル業界も心身を調和させるプログラムを提供するようになってきている。ヴェルサイユに1年ほど前、オープンした高級ホテルのレ・リュミエール(Hôtel Les Lumières)はフランスの2Lコレクショングループ(カラヴェルグループ)を率いるロレーヌ・マルテルが手がけた施設だ。18世紀がテーマのこのホテルでは瞑想やマインドフルネスを取り入れたプログラムを提供している。
「これはオーナーからの提案でした。家族を次々に亡くす悲劇(グループ創設者である父親の事故死など)にみまわれたオーナーはレジリエンス(回復力)という概念を基にしたサービスを提供したいと考えるようになりました。私たちは、「Bien-être(ウェルビーイング)」よりも「Mieux-être(ベタービーイング)」を目指しています。体型やボディのケアを標榜する施設は多いですが、このホテルでは心を休め、いまを見つめることを提案しています」と、グループのプログラム責任者はコンセプトを語った。
8kgの加重ブランケットに20分ほどくるまれば緊張が解けていく。部屋のナイトテーブルには瞑想エクササイズやリラックス音が録音された「夢への誘いボックス」が置いてある。ナイトテーブルの引き出しを開ければ365のマインドフルネスエクササイズが載った本がさりげなく入っている。要は提案はしても強制はしないというのがこのホテルの姿勢だ。自己催眠装置を部屋に届けてもらうよう、リクエストすることもできる。海外からのゲストの時差ボケ解消に役立つことだろう。レストランやティールームのテーブルには木の箱が置かれており、「この瞬間をもっと楽しむために携帯電話を入れるためのものです」とスタッフから説明を受ける。画面を見つめて会話する時間が失われていることに気づくためのひとつのやり方だ。プログラム責任者は「週末にスポーツを楽しむときでさえ人と競ったりしますね。当ホテルにはもちろん、スポーツジムもありますが、お部屋のクローゼットにヨガマットが入っています。これもまたひとつの提案です」と語った。
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04. ウォーキングクラブ
誰かから招待が来たと思ったら他のひとからも別の招待があり、そうこうするうちに3つめの招待が来た。ランニングやウォーキングのグループがネット上で急増している。従来型のランニングクラブに比べ、SNSのグループを通じての招待なので気軽だ。日曜日の朝や平日の夜などにパリを一回りしようという呼びかけを個人が発するのは、みんなで集まって一緒に頑張ろうという発想からだ。
「肝心なのは動き出すこと、体を動かすことです」と、キャシー・クロジエはインスタグラム@cathyclosierの投稿で説明している。パリのレストラン「Season」のオーナーでもあるキャシーはウォーキングイベント「The Walk」への参加をネットで募集している。イベントの趣旨はパリで5kmのコースをみんなで歩き、体を動かす楽しみを知ること。健康的で美味しい料理を提供しているキャシーは自らの経験を共有したいと思っている。ウォーキングをきっかけに運動を再開したキャシーは最近、ウェイトトレーニングに夢中だ。
05. 大自然の中でくつろぐ
観光客を避けたいのなら、サーファーたちの後をついていったほうがいいのかもしれない。彼らはとても素敵なスポットを知っていたりするのだから。そうして見つけたのがこの海辺の隠れ家だった。「カーサ・ユマ」はメキシコの太平洋沿岸の砂浜に建つ25室のホテル。インテリアデザイナーのサラ・スカリが友人のカミーユ・ランベルテとティム・ド・ベロイとともに共同で造った。自然の中にありながら、おしゃれなホテルライフが楽しめる場所だ。人混みとは無縁のこの場所でくつろげば不安な気持ちも解けていく。ホテルのコンセプトにはいくつかの要素が含まれている。まずは、騒音のない環境だ。「片側は山、もう片側は海に面した場所では一切の騒音公害がない環境を保ちたいと考えました」とサラ・スカリは語る。次に自然の中に身を置き、自然と触れあえること。建材には木材、レンガ、そして地元の植物性コンクリート「チュクム」が使われている。靴も脱ぐように促される。「私はすぐに裸足になりたがるので、ミミ・シク(映画『僕は、パリに恋をする』に出てくる野生児)って呼ばれるほどなんです。この場所にも私の裸足付きが反映されています」。要は裸足でビーチを楽しみ、素足では熱いなら地元で作られている縄サンダルを履く。最後のこだわりどころは他のゲストと静かに過ごせる共有スペース。客室とビーチやバーとうまく回遊できるように設計されている。
From madameFIGARO.fr
text: Céline Cabourg (madame.lefigaro.fr)







