グルマンライターのカレー＆町中華食べ歩き。 多様化が進む、東京のネオ町中華に夢中です！

街の中華食堂が大好きなグルメライター・小寺慶子が、気になる新店にトライ！ 食べ歩きで見つけた、個性豊かな絶品とは？

CHINA & HONG KONG

先日発表された「アジアのベストレストラン50」で香港のThe Chairmanが初の1位を獲得した。初めて行ったのは7年前だが、名物の酔っ払い蟹に感動して紹興酒を飲みすぎたことを思い出す。いまは現地に行けないとしても、東京には、旅情と食への好奇心を満たしてくれる救いの神のような中華料理店が多くある。ローカルムード漂うメニューと、生地やタレから自家製のこだわりで、本場以上の美食体験を提供してくれるネオ町中華だ。

香港の福臨門の半発酵させた干し魚を使った炒飯が私の初ハムユイ体験だが、チャイニーズレストラン漢にもベーシックでとびきりおいしい「生菜咸魚(ハムユイ)炒飯」（￥1,650）がある。魚の旨味と脂、自然な塩味でコーティングされたジャスミンライスのパラパラ加減が完璧で、「漢のプレート 広東式焼物5種盛り」（￥990）など散々食べて飲んだ後でも、これは別腹とばかりにすんなり胃袋におさまる。ちなみに、濃厚な味わいがクセになる担担リゾットも絶品なので、迷ったら両方ともぜひ注文してみてほしい。

左：生菜咸魚炒飯 右：漢のプレート広東式焼物5種盛り

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炭水化物繋がりでいえば、最近感動したのが神保町にオープンした粤港美食のボウジャイファン）。注文を受けてから作る「海老腸粉」（￥750）も美味だが、豚の腸詰めと干し豚の旨味、濃い口の醤油ダレが絡んだ「中華腸詰めと干し豚バラ土鍋ご飯」（￥1,630）はおこげもパリパリと香ばしく、後を引く味わい。香港では冬の名物だが、これは季節を問わずいつでも食べたい！

左：海老腸粉 右：中華腸詰めと干し豚バラ土鍋ご飯

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もうひとつ神保町で忘れてはいけないのが、1964年に八重洲で創業し、今年1月に移転した唐人飯店だ。初代は“中華の神様”として知られる陳建民氏の一番弟子。現在の料理長は、世田谷の上野毛で多くの食好きに愛された吉華の久田大吉氏のもとで働いたと聞けば、中華好きは胸の高鳴りを抑えずにはいられない。名物の「唐人飯店の麻婆豆腐」（￥1,650）は、自家製豆板醤と豆豉を粒のまま加えることで鮮烈な辛さの中にコクと旨味を感じさせる。白米もいいけれど、これからの季節はやっぱりよく冷えたビールでしょう。

唐人飯店の麻婆豆腐

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そして、中華好きなら一度は訪れたいのが小薇点心。同業者からも"点心の女王"と信頼を集める小薇さんが作る点心は、バリエーションがとにかく豊富。「点心懐石コース」（￥11,000）は、最初に豪な前菜が登場し、技巧が光る点心やデザートの華菓子の愛らしさにも目を奪われる。それにしても、東京の町中華シーンのなんとも華やかなこと。新しく楽しい食体験を求めて全部巡っチャイナ！

点心懐石コース

 

※『フィガロジャポン』2021年6月号より抜粋